第40話 村での目覚め
「ふあ~あ」
『おはようございます、マスター』
「おはよう、ノア」
目が覚めると木製の天井が目に入る。
そうか、昨日はミロガル村の家に泊めてもらったんだな。マーテルから村全体で旅人から身ぐるみを剥ぐ村もあると聞いて少し怖かったけれど、昨日はいろいろとあって疲れていたからすぐに寝てしまったようだ。
こちらの世界へ来た時と比べるとぐっすりと眠れるようになってきたな。屋台をやっていて不審者が現れた際のようにノアが教えてくれるとはいえ、我ながらだいぶ図太くなったものだ。
「す~す~」
少し離れたところではマーテルが寝ていた。今日は俺の方が早く起きたらしい。
昨日はキッチンカーであまり眠れないと言っていたし、風魔法を使って気球を動かしたり、ブラックコンドルを倒したりしてくれたから俺以上に疲れていたのだろう。……寝息を立てて寝ている姿はなんとも可愛らしい様子だが、もちろんなにかをすることもない。
「そういえば昨日の怪我は大丈夫か?」
『はい、どうやら無事に修復されたようですね』
「おお、それはよかった!」
昨日気球に変形していた時、ブラックコンドルに空けられた穴は直ったようだ。やはり走行距離がリセットされ、キッチンカーの調味料などが補充される深夜に修復もされるらしいな。一応村から離れたら気球に変形してもらって確認するか。
さて、マーテルが起きたら村で朝食をいただいて、村を出発するとしよう。
「それではよろしくお願いします」
「はい、お荷物はしっかりと届けます」
「お姉ちゃん、また来てね!」
「うむ、機会があればのう」
村の人の見送りを受けてミロガル村を出発する。
また新たに他の村や街へ運ぶ荷物を預かったが、こちらは商業ギルドを通していないので、手紙や村で採れた野菜などだけの少量の荷物だ。その辺りは商業ギルドを通した方がお互いに信用もできるので、手数料はかかるがギルドという組織は必要なのだろう。
子供たちはマーテルに手を振っている。昨日は俺が村長さんと話している間に子供と遊んで仲良くなっていたらしい。
「いい村だったね」
「うむ。昨日ああは言ったが、多くの村は客人が珍しいから歓迎してくれることの方が多いのじゃ。とはいえ、油断は禁物じゃぞ」
『そうですね、なにかあったら命に関わります。警戒をしておくことに越したことはないでしょう』
「ああ、もちろんだ」
そういった村は滅多にないと思うが、もしもあった場合は命に関わるからな。決して注意だけは怠らないようにしなければ。
『マスター、ポイントが貯まったようです』
「おっ、了解。マーテル、止まるよ」
「了解なのじゃ」
ミロガル村を出発し、今日はもうひとつ配達予定の村を経由して東を進んできた。
今日は朝から移動してきたこともあり、低い位置を気球で進み、原付の走行距離も限界ギリギリまで走ったこともあってなんとか200ポイントが貯まったようだ。
さすがに気球で飛ぶ時は昨日のこともあって、だいぶ慎重に飛んでいったけれど、魔物に遭遇することはなかった。ちなみにノアの変形した気球の穴はちゃんと綺麗に塞がっていたぞ。
『ギリギリ間に合って良かったですね、マスター』
「ああ、間に合ってよかったよ。これで距離が足らなかったら、マウンテンバイクに乗って走らないといけないところだった」
日が暮れるまでにはまだ時間があるけれど、走行距離の問題はある。今のところマウンテンバイクを除けば一日に走れる距離は70キロメートルが限界だ。非常事態に備えてキッチンカーと気球は数キロ残しておきたいからな。
「それじゃあ予定通りキャンピングカーを取ろう」
『はい、マスター』
「とっても楽しみなのじゃ!」
いつものようにウインドウを操作してキャンピングカーを選択し、はいを押す。
ノアの身体が光り輝き、原付からどんどん大きくなっていく。
『変形が完了しました。こちらが【キャンピングカー】です』
「おおっ、思ったよりも大きいな」
「ほお~これがキャンピングカーとやらか!」
キッチンカーよりも大きな車体、角張ったフォルムに大きな窓、真っ白いボディは元の世界で稀に見かけたキャンピングカーだ。一度は乗ってみたいという思いはあったけれど、まさか異世界で乗れることになるとはな。
「よし、シャワーがついているぞ! それにトイレまであるのはありがたい!」
「しゃわー?」
早速キャンピングカーの中へと入る。キッチンカーとは異なり、キャンピングカーは運転席から後部に移動できるらしい。
後部には数人が寝られる大きなベッド、真ん中にはテーブルとイス、そして何よりこのキャンピングカーにはシャワーとトイレがついていた。シャワーはあってほしいと願っていたけれど、それに加えてトイレがあるのは最高だ。
これまではマーテルが魔法によって出してくれたお湯で身体を拭き、トイレの大きい方は街で売っていたトイレットペーパー代わりの草を使っていたけれど、硬くてお尻が痛くなるんだよ……。
魔法でお湯があるだけでも十分にありがたいのだが、シャワーが浴びられるとはすばらしい。ベッドも柔らかそうだし、村や街の宿に泊まるよりも快適かもしれない。




