第35話 キッチンカーでの就寝
「ふう~とってもおいしかったのじゃ! さすがの妾も異世界の料理を食べる経験なんてなかったから満足なのじゃ!」
「……多めに作ったつもりだったんだけれど、よく食べられたな」
マーテルはどちらの料理にも満足してくれたようで、恍惚の表情を浮かべている。
2人分だけれど、ソース焼きそばの分は明日パンに挟んで焼きそばパンにしようと思って多めに作ったのだが、すべてマーテルのお腹の中に納まってしまった。俺よりも小さな身体なのに、間違いなく俺よりも多くの量を食べていたぞ。
これからしばらくは一緒に行動するから、マーテルが食べる量も把握しておこう。ちなみに食材費はマーテルが出してくれることになった。俺としては半々でいいと思ったのだが、マーテルが出す分、俺は移動や料理や片付けを担当して食材の質を上げてほしいと言われた。
マーテルはAランク冒険者だし、お金に余裕があるのだろう。俺はお金にそこまで余裕がないので、ありがたくその提案を受け入れることにした。その分移動や他のところで頑張るとしよう。
「ちなみにマーテルはどっちの料理が好きだった?」
「ふ~む、どちらもおいしかったのじゃが、こちらの方がより複雑で濃厚な味がして妾の好みだったのじゃ」
「なるほど、ソース焼きそばの方か」
個人的には焼うどんの方が好きだったのだが、しばらく醤油と出汁の香りを楽しめていなかったという補正があったかもしれない。
こちらの世界の人たちにはわかりやすく味の濃いソースの味の方が好みなのかもな。今度キッチンカーで料理を販売する時は焼きそばを販売してもいいかもしれない。付け合わせのポテトもない分、あちらの方が簡単にできるだろう。
焼きそばこそ屋台でも販売されているし、お手軽にできるからな。唯一の欠点は洗い物が大変というくらいか。こびりついたソースはとても落ちにくいのである。
「……それじゃあ、こんな感じで寝るけれど大丈夫かな?」
「うむ。少し窮屈じゃが、我慢するのじゃ」
晩ご飯を食べ終わって片付けをしてから寝袋に入る。
キッチンカーはそれほど大きなものではないので、俺とマーテルが離れて寝転がることができない。そのため、頭と足をお互い反対にして、半分重なる感じで寝ることになった。俺だけ前の運転席で寝ることも考えたけれど、次の日の運転もあるからちゃんと横になって寝ることにした。
まあノアもいることだし、間違いなんかは起こらないだろう。そもそも魔法を使えるマーテルの方が強いから間違いが起こりようもないけれどな。早くキャンピングカーがほしいところだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ふあ~あ」
目が覚めるとキッチンカーの中だった。
そういえば昨日はキッチンカーの中で野営をしたんだったな。新しく購入した護身用の魔道具を枕元に置いておいたし、魔法を使えるマーテルが一緒にいるからいつも以上にぐっすりと眠れたらしい。やはり精神的な安心というのは安眠には必須だな。
「……おはようなのじゃ」
『おはようございます、マスター』
「おはよう、マーテル、ノア。あんまり寝られなかったのか?」
寝袋から這い出て身体を起こすと、すでにマーテルも起きていたらしい。ただ、目を擦っており、軽い欠伸をしていてまだ眠そうだ。
「うむ。やはり床が固くて寝心地がそれほどよくなくてのう……」
「そうか。俺はもう慣れたけれど、さすがに宿のベッドの方が寝心地は断然いいからな。とはいえ、キッチンカーで料理するには野営をしないといけないから難しいところだ」
マーテルが泊まっていた宿のベッドはふかふかで寝心地がとても良かった。それに比べたらキッチンカーの床は身体が少し痛くなる。
村や街の宿に泊まってもよかったのだが、村や街の中でキッチンカーを出すことはできないのでどちらを選ぶかだな。
「う~む……寝心地をとるかソウタの料理をとるのか難しいところじゃのう……」
「もう少しすれば野営をするのに便利な乗り物にノアが変形できるようになりそうだから、それまでは宿に泊まってもいいかもね」
『キャンピングカーの200ポイントまであと120ポイントほどです』
ニフランの街で近場を走ってコツコツ貯めていたポイントが気球をとることによって一気になくなってしまったからな。グランバの森への往復や昨日結構走ったこともあって残り120ポイントか。
気球に変形できるようになってこれまで以上に距離を進めるようになったけれど、あと2~3日はかかりそうだ。
「うむ、そうするとしよう。残念じゃがそれまで我慢するのじゃ」
まあ朝食や昼にどこかで止まって料理することはできるからな。とりあえず今は走行ポイントを重視して進んでいくとしよう。




