第33話 気球での移動
「それじゃあ頼むよ」
「了解なのじゃ」
ノアが変形すると、気球は昨日と同じようにすでに飛ぶことができる状態だった。2人で気球に乗り込み上昇する。
マーテルが風魔法を使って先ほど見た地図の方向へ気球を進めていく。いずれは俺もマーテルの風魔法を使わずに風を掴んで思った方向へ進めるようになりたいものだけれど、今は先を進むことを優先しよう。
「昨日も思ったが、まさか空を飛べる日が来るとは感激なのじゃ!」
「飛行魔法や風魔法で空を飛んだりはできないの?」
「空を飛ぶ魔法は聞いたことがないのう。風魔法を全力で使えば身体を浮かばせることくらいはできるが、この気球とやらのように自由自在に空を飛ぶのは無理じゃ」
「なるほど」
マーテルくらいの小さな身体なら風魔法で飛べるのかとも思ったけれど、それも難しいらしい。確かに人ひとりを浮かばせるのは結構な爆風が必要そうだし、それを自由自在に操るのは無理なのかもしれない。
「それにしても本当に綺麗な景色だ」
「昨日の夕陽もとても美しかったのじゃ!」
『とても情緒がある景色ですね』
気球に乗って見る異世界の景色はとても広大で美しい。
元の世界でも一度気球に乗ってみたいとは思っていたけれど、まさか異世界で乗れるとは思っていなかった。昨日は景色を楽しむ余裕はあまりなかったが、今日はのんびりと気球からの景色を楽しめそうである。……まあ、真下を見るのはまだ怖いので、しっかりとバスケットに掴まりながら遠くを見て楽しむとしよう。
『マスター、こちらも残り走行距離が1キロメートルとなりました』
「了解だ。それじゃあ降りるとしよう」
無事に目的地出会ったベルグム村まで到着し、荷物を届けることができた。再び村から離れたところから気球に乗り、次の村を目指す。
気球もキッチンカーと同様に緊急時のために1キロ残しておく。空に逃げなければならない状況とかもあるかもしれないからな。
「ここからは原付だな。ノア、頼む」
『承知しました』
「おおっ、またしても形が変わったのじゃ!」
キッチンカーと気球で合計18キロ進んできたが、どちらも走行距離が限界なので、ここからは原付で進んでいく。
ニフランの街で屋台が終わったあとに走行ポイントをコツコツ貯めてきたのだが、気球を手に入れたことで一気に120ポイント消費してしまったからな。マーテルも同行することになったし、早くキャンピングカーが欲しいところだ。
お金はある程度貯まったので、ここからは走行ポイントを重視して村々を巡りつつ、東にあるという米を探していくとしよう。
「それじゃあマーテルは後ろに頼む。ゆっくりと進んでいくからなにかあったらすぐに教えてくれ」
「う、うむ……」
原付に変形したノアにまたがり、その後ろにはマーテルが乗る。冒険者ギルドで購入してきたヘルメット代わりの兜をかぶる。前世のようにクッション機能がないけれど、何もないよりはマシだろう。マーテルは魔法が使えるので、原付から落ちそうになったら魔法で頭と体をガードするようだ。
一応原付の二ケツはオッケーだったよな? 本当は二人乗り用のシートなんかもあればよかったのだが、さすがに異世界でそんなものは売っていないので、ちゃんと俺の身体を掴んでもらうとしよう。
「おおっ、何もないのに車輪が回っておるのじゃ!」
「これは燃料を燃やした力でピストンを上下させて回しているんだっけな」
ゆっくりと原付を走らせるとまたしてもマーテルが驚く。キッチンカーよりも小さく、タイヤがむき出しになっているぶん、走る仕組みが気になるのかもしれない。
……それにしても、異世界で女の子と二人乗りをするとは思わなかった。俺のお腹にマーテルの小さな手が触れているとちょっとだけドキドキしてしまう。これが巨乳のお姉さんだったら、俺の理性が危ないところだったな。
「よし、今日はここまでかな」
『ここなら見晴らしもいいので、魔物が近付いて来てもすぐに気付けそうですね』
今日はベルグム村の他にもうひとつ村を巡って商業ギルドで受けた依頼を完了させた。そのまま少し進んで、道から少し外れた場所へと原付を止めた。
ノアの言う通り、これだけ開けた場所ならば、魔物が現れてもすぐにノアが気付いて教えてくれるだろう。
「この原付という乗り物もすごかったのじゃ。風がとても気持ち良かったのう」
「原付で走るのも気持ちがいいよな。まあ風が直接当たるから、寒い時は手がかじかんで大変そうだけど」
二輪車で走るのは車で走るのとは違った楽しさがある。友人はバイクでツーリングをするのが好きだったけれど、その気持ちも少し分かるような気がした。風を感じながら美しい景色が流れていくのはとても楽しい。
今日は午後から街を出たけれど、依頼をこなしながら村へ寄り道していたから50~60ポイントを貯めることができたな。明日は別の街へ寄って、新しい依頼を引き受けつつ、さらに東へと進むとしよう。
「さて、それじゃあ晩ご飯を作るか。注文は俺の世界の料理でいいんだよな」
「うむ、頼むのじゃ!」




