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相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日は何に乗ってどこへ行く?~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第29話 予想通り


「ここがグランバの森か……。本当に大きな森だな」


 ニフランの街からキッチンカーで15分ほど走ると目的地であるグランバの森の前まで到着することができた。


 生い茂った緑色の木が見渡す限りに広がっている。一応森の中にも道はあるようだが、一度迷ったらすぐに脱出することは難しいかもしれない。


「ノア、変形リストを出してくれ」


『はい、マスター』


 そして問題はここからだ。俺とノアの考えではうまくいくと思うが、こればかりは実際にやってみないとわからない。


 ここからならチケットを使用すればなんとかなる可能性も高いけれど、あれは本当になにかあった時に使いたい。さっきマーテルも言っていたが、自分の身は一番大切にしなければならないし、このチケットは本当にピンチになった時にしか使わないつもりだ。


 ノアの変形リストから走行ポイントが120ポイントのある乗り物を選択し、はいをタッチするとノアの身体が光り輝き、形を変えていく。


『変形が完了しました。こちらが【気球】です』


「気球って実際に見るとこんな感じなんだな」


 バスケットと呼ばれる人の乗る部分があり、その上に球皮(きゅうひ)と呼ばれるバルーンの部分がある。すでにバスケットの上部にあるバーナーからは炎が出て、その部分は膨らんでいた。


『【気球】の能力は自動離着陸のようです。自動で離着陸ができます』


「……なるほど。確か気球を飛ばす時は複数人で気球を横にして、球皮部分にバーナーで風を送って膨らませてからで、すごく大変そうだったもんな」


 昔テレビで見た気球は始めに飛ばすところが人でも必要ですごく大変そうだった。それを自動でやってくれるのはありがたい。……というか、俺一人では気球を飛ばすことすらできなかったかもしれない。


 今回はたまたま気球がそういう能力で助かったけれど、やはり見切り発進で乗り物を選ぶのは怖いな。一応戦車もそうだったけれど、最低限ノアがいれば俺でもなんとか運転できるような能力なのかもしれないけれど。


「おおっ、本当にノアの形が変わったのじゃ! これはどういう乗り物なのじゃ?」


「この気球という乗り物は空を飛ぶことができるんだ。これなら面倒な森の中を通らなくても森をこえることができるぞ」


「すごいのじゃ!」


 そう、気球であれば空を飛んで森をこえることができる。気球の速度がどれくらい出るのかわからないけれど、日が暮れるまでには森の向こう側へ行くことができる可能性は高い。


「ただ、ここからはマーテルの力が必要になる。頼む、力を貸してほしい」


「ふっふっふ、いいじゃろう! ここまで面白いのは何十年ぶりかのう! やはり妾の勘は正しかったのじゃ!」


 マーテルの勘はよくわからいけれど、どうやら力を貸してくれるようだ。


 ……何十年ぶりという言葉が若干引っかかったけれど、今はそれどころではないからな。




「いい感じだ。マーテル、そのままの出力で頼む」


「了解なのじゃ!」


 マーテルとふたりで気球に乗り込み、ノアに頼んで気球を上昇してもらう。そしてそこからマーテルの風魔法によって森の奥へと気球を押し出してもらった。俺とノアの予想通り、気球は思った方向へと進んでくれた。


 テレビで見たのだが、実は気球には方向転換をする装置がない。バーナーの火力を強くして上昇するか、排気弁から熱気を抜いて下降するしかできない。それならばどうやって目的の方向へ向かうのかというと、気球を上下させて目的の方向へ進む風を掴むらしい。


 一口に空と言っても高さによって風向きや風速が異なり、気球を上下させて目的の方向へ進んでいる風の層を維持して飛ぶようだ。ただし、目的の方向へ進む風の層がなかったり、あまりにも風速が弱く、速度が出せないことも多いらしい。まさに風任せである。


 しかし、こちらの世界には魔法があり、マーテルが一流の魔法の使い手であることは聞いていた。気球の上部に風を当て続ければ思った通りの速度と方向へ進んでくれるのではないかと考えたわけだが、その予想は見事に当たったようだな。


「すごいのう、本当に妾たちは空を飛んでいるのじゃ!」


「ああ、俺も驚いているよ。こんな状況じゃなければ素直に美しい景色を楽しめたんだけれどなあ……」


 もちろん気球に乗るなんて初めての経験だ。


 気球は驚くほど静がに空高くへと上昇していく。ただ風を切り開いて進んでいく音だけが周囲に鳴り響いている。そしてそこには見渡す限り異世界の光景が広がっていた。下には緑一色のグランバの森が広がっており、遠くの方には高い山脈が連なり、地平線が広がっている。反対側にはニフランの街がとても小さく見えた。


 高い建物や人工物がないからどこまでも遠くが見えるのだろう。空からの自然溢れる景色はとても美しいものであった。


 ただし、真下の方を見るとちょっと、というかめちゃくちゃ怖い……。高所恐怖症とかではないのだけれど、それでもここまで怖いのはちょっと想定外である。マーテルはよくあんなにふうに無邪気に楽しめているな……。


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