第28話 可能性
『……なるほど、その乗り物の機能にもよりますが、マスターの言っていることができる可能性は高いと思います』
「そうか。できない可能性もあるけれど、やらなければ可能性はゼロだものな」
ノアに俺の考えを話したが可能性はあるようだ。確実に彼の仲間を救えるわけではないが試してみる価値はある。
「……ソウタ、先ほどからずっとひとりで話しているが、本当に大丈夫かのう?」
「ああ、大丈夫だ。マーテル、頼みがある。この方法なら森の中を進まずに森をこえられるはずだ。だけどそれにはマーテルの力が必要になる!」
ノアの変形リストにあったあの乗り物ならば可能性はある。
ただし、それだけでは駄目だ。俺とノアの考えではそれに加えてマーテルの魔法の力が必要になる。
「依頼料は後払いで正規の料金で大丈夫だ。その代わりに依頼が失敗する可能性が高いことも理解してほしい」
「ああ、わかった。頼む、どうか仲間を助けてくれ!」
「ああ、できる限りのことはすると誓う」
俺の頼みに対して、マーテルは厳しいと判断した時点で止めるという条件付きで了承してくれたことによって、冒険者ギルドの外へと出ていった先ほどの冒険者を追いかけて話をした。
最初は冒険者でなさそうに見える俺の話を訝し気に見ていた彼だが、俺の隣にいたマーテルを見て即座に頷いてくれた。エルフの冒険者というだけで信用できるのかマーテルが有名なのかはわからないが、そのことはあとで聞けばいい。
彼から詳しい話を聞くと、グランバの森を抜けた先に仲間がいるらしい。彼はすぐにこの森を引き返し、急いで一人ニフランの街へ戻ってきたこともあってボロボロになってしまったようだ。おそらくもう一人の仲間が道沿いまで移動している可能性が高く、狼煙をあげて居場所を知らせてくれているらしい。
涙を流しながら懇願する彼の手の力は大怪我をしているとは思えないくらい力強かった。彼から解毒薬を受け取り、マーテルと一緒にニフランの街の外へ出る。
「それで考えというのは何なのじゃ? どう考えても日没までに森をこえるのは不可能にしか思えんが」
「ごめん、実はマーテルにはひとつ嘘を吐いていたんだ。ノア、マーテルに姿を見せて声を聞かせてあげてくれ」
『承知しました、マスター』
「なっ、何じゃこれは!?」
俺がそうノアに言うと、マーテルが大きな声を出して驚く。俺には今までと変わらず空中にサイコロ状のノアが浮かんでいるように見えるが、それがマーテルにも見えるようになったのだろう。
「俺の相棒のノアだ。詳しいことは移動しながら話す。ノア、まずはキッチンカーに変形を頼む」
『はい、了解です』
「なっ!?」
ノアが光り輝き、その姿が巨大化してキッチンカーへと変形した。
「これは屋台と言ったが、実は馬車のように移動する乗り物でもある。まずはノアに乗ってくれ」
「こ、これに乗るとはいったいどうすればよいのじゃ……?」
そうか、こちらの世界の人にいきなり言っても車の乗り方なんてわからないよな。
マーテルを助手席に乗せ、しっかりとシートベルトを締めてあげてから俺は運転席へと座る。
「それじゃあ出発するよ。少しずつスピードを上げていくからね」
「よく分からぬが、馬も引っ張っていないのにどうやって……」
実際に見せた方が早いので、ゆっくりとキッチンカーのアクセルを踏んだ。
「なっ、なんじゃこれは!?」
やはりというべきか、キッチンカーが動き出すと驚いた表情を浮かべるマーテル。確かにこんな大きな鉄の塊が自ら動くなんて想像できないよな。
森へ向かいながら説明するとしよう。
「……なるほどのう。こことは異なる世界で死に、この世界に転生した。その際に特別な能力を授かったか」
「信じられないと思うけれど、本当のことなんだ。このキッチンカーという乗り物は俺の世界の乗り物で、あのハンバーガーやフライドポテトなんかは俺の世界の料理なんだよ」
安全運転を心掛けつつ、いつもよりも気持ち飛ばしながらグランバの森へと向かう。
道中で協力してくれたマーテルには俺のこれまでのことを包み隠さず話したのだが、自分でも話していても信じてもらうのは難しい気がする。
「にわかには信じられぬが、確かにノアとやらには魔力が一切なかったのじゃ。それに歴史上魔法とは異なる特別な力を持った者がいたという記録が残っておる。もしかするとその者も別の世界から来た者であった可能性もあるわけか……」
「そんな人がいたのか」
『もしかするとマスターの他にもこの世界に転生してきた人がいるのかもしれませんね』
「いろんな乗り物に形を変え、喋る能力。そんなものを見るのは初めてじゃ……」
もしかするとだが、俺以外にも転生者がいたのかもしれない。そのおかげで俺の話にも多少信憑性が出てくれた。




