第23話 別の芋料理
「あのポテトとやらは熱した油に浸したのか。他の野菜は同じような料理を食べたことがあるのじゃが、イモをそうするとこんな味になるのじゃな」
どうやらこの世界でも揚げるという調理法はあるみたいだ。野菜をそのまま揚げて塩をかけただけでもおいしいし、もしかするとカツのように衣を付けて揚げる料理なんかもあるのかもしれない。
「丸ごと揚げるのと、こうやって切ってから揚げるのでもだいぶ味が違うんだ。それにこっちだと持ちやすいから、こういった屋台での食べ歩きもできるからね。そうだ、もうひとつ違う食べ方もあるけれど、ちょっと食べてみる?」
「うむ、いただくのじゃ!」
まだ鍋の油は少し温かいから、手間も時間もそれほどかからないだろう。ついでにこっちの料理の感想も聞いておこう。
「おおっ、パリパリとしていておいしいのじゃ!」
「これはポテトチップといっておやつだな。フライドポテトと同じようにイモを揚げているだけだけれど、こうやって薄く切って揚げると、パリパリとした食感になるんだよ」
新しく作った料理はポテトチップだ。イモを薄切りにして揚げてから塩を振っただけだが、薄く切ることによって食感がフライドポテト以上にパリパリとしている。その分イモのホクホク感はなくなってしまうけれど、こっちは冷めてもおいしくいただけるからな。
とはいえ、元の世界で売っているポテトチップよりもだいぶ分厚くなってしまった。一応キッチンカーにあったスライサーで切ったのだが、スーパーとかで売っているやつはそれよりもだいぶ薄く切られている。
それでも十分おいしいが、スライサーで切る分手間も増えるし、ハンバーガーと一緒に食べてもらうのならやはりフライドポテトか。だけど冷めてもそこそこおいしいから、余裕があったら前日に作っておいて持ち帰り用で販売してもいいかもしれない。いろいろと考えてみよう。
「これも初めて食べる味じゃな。本当にソウタが作る料理は面白いものばかりじゃ」
「そういえばマーテルは旅をしていると言っていたな。俺はこの街へ来たばかりだから、いろいろと教えてくれないか。お礼に余ったポテトチップは持って帰っていいぞ」
「おお、もちろんなのじゃ!」
ポテトチップをとてもおいしそうに食べている様子から見てもマーテルから悪意は感じられない。冒険者をしながら旅をしていると言っていたし、この機会に街のことや他の街のことなどを聞いておこう。
このペースで行けば、それほど時間はかからずにお金を貯めて護身用の道具を購入することができるはずだ。走行ポイントを貯めるためにも新しい街へ移動をしなければならないが、せっかくなら楽しそうな街へ行きたい。冒険者から話を聞ける機会があったのはラッキーだな。
『そうですね、私も彼女からはなんの悪意も感じられませんでした。好奇心旺盛というか未知のものに対する興味が人並み以上のようですね。それと、私もマスターと同じで彼女は相応の歳を重ねた者だと思いますよ』
「なるほど」
マーテルが帰り、買い出しを終えてキッチンカーへ帰ってきてからノアにマーテルのことを聞いてみた。どうやらノアも俺と同じ意見のようだ。
「まあ俺としてもいろいろといい情報を得ることができた。冒険者の話というのはいろいろと役に立つな」
あのあとも俺がひたすらにパティを作っているところをマーテルは興味深そうに見ていた。そして俺も手を動かしながらマーテルにいろんなことを聞いた。
どうやらマーテルは冒険者ギルドで依頼をこなしながらいろんな街なんかを巡っているらしい。こちらの世界を旅するうえでいろいろと役に立つことを教えてくれ、俺としてもとても有意義な時間を過ごせた。
宿の人や市場の人から聞く話も役に立つが、冒険者である彼女から聞いた話は旅をするうえでとても役に立ちそうである。こういうのは自身の体験だからこそ、よりためになる。
『魔物の生態などにも詳しいようで驚きました。特に森での野営は極力避けたほうがよさそうですね』
「ああ。夜行性の魔物や夜目が効く魔物なんかも多いようだな。予めそういう話が聞けてよかったよ」
平地での野営ならともかく、森での野営は一流の冒険者でも危険らしい。たとえノアがいてもそういったところでの野営は止めておこう。マーテルはそういった知識もあったし、ノアも同意してくれたが、見た目通りの年齢ではないことは間違いないだろう。
今のところはなにかを企んでいる様子も見られないし、またハンバーガーを食べに来てくれるそうだ。この街にいる間はいい友人になれるといいな。お礼にたくさんのポテトチップを渡したら、とても喜んでいた。むしろこちらの情報の方がもらいすぎな気はするから、今度は違う味を用意してあげるとしよう。




