第19話 今日の反省点
「大変申し訳ございません、材料の方がなくなってしまいましたので、本日はこれまでとなります」
「うわあ~マジか……。食べたかったのになあ」
「申し訳ございません。明日は朝からお店を開いておりますので、もしよろしければまたお願いします」
目の前で売り切れてしまった冒険者のような装備をした若い男性ががっかりしている。
俺がもう少しいろいろと効率よく動いて全体を見極めることができていたら、列のもっと手前で止めることができたので申し訳ない。
「ふう~疲れたあ……」
『お疲れさまです、マスター』
営業を終え、看板をしまってキッチンカーの戸締りをする。
「こんなに動いたのは本当に久しぶりだ。ノアもサポートありがとう、だいぶ助かったよ」
『いえ、とんでもございません。私もなにかお手伝いできればよかったのですが……』
うちの相棒は謙虚だな。
焼いているパティを見てもらったり、俺ひとりでは把握できないことを伝えてもらった。それだけでもだいぶ助かるものだ。
「おっと、反省会は後回しだ。まずは明日の食材を購入しにいかないと! ノア、なにかあったらすぐに教えてくれ」
『了解です』
ノアと一緒に今日の営業についていろいろと反省会をしたいところだけれど、まずは明日以降のための食材調達が先だ。こっちの世界の市場の空いている時間は短い。
本当なら昨日2日分を購入したつもりなのだが、まさか初日からこんなに売れるとは思っていなかった。嬉しい誤算である。
ちなみにノアの声については俺の能力だけあって、俺がどこにいても聞こえるし、どこにいても回収ができるようになっている。普段はノアと離れることはあまりないと思うが、こういう時は便利だし、いろいろとできそうなこともありそうだ。
「とりあえず初日はうまくいったな」
『予想通りマスターの世界のソースの味はこちらの世界の人にも受け入れられたみたいですね』
「ああ、やっぱりみんな濃い味に飢えているみたいだ。味は問題なさそうだったけれど、問題は俺ひとりだと手が足りていないことと、ソースが足りていないことだな……」
食材の買い出しを終え、無事にキッチンカーへと戻って来た。明日は今日よりも多めの客が来ると思うので、2往復をして結構な食材を購入してきた。
そしてそのまま簡単な夜食を食べつつ、ノアと一緒に今後のことについて話をする。
『マスターが調理に慣れてきて多少は調理速度も上がりましたが、人手につきましては人を雇うくらいしか解決案はない気がします』
「確かに根本的な解決は人を雇うことだけれど、そうなるとノアの秘密を話さないといけないから、人は雇いたくないところだ」
調味料なんかが自動で補充されるることを説明しないといけないし、調理器具も説明できないものが多い。すべて魔道具として言い張れないことはないけれど、このキッチンカーの屋台だけでも十分に怪しいから難しいところだ。
「どちらにせよ素材が足りなくなるだろうから、ひとりで可能な限り販売して、売り切れたら閉店するのがよさそうだな」
『承知しました』
「問題はソースの方だな。今日は最初の方はサービスし過ぎたというのもあるけれど、補充されるのは毎日一本分だから確実にこっちが足りなくなるだろう」
今日の素材切れもソースのほうがなくなってしまった。うまく分量を調整してソース、マヨネーズ、ケチャップをすべて使い切って作ったソースだが、毎日ボトルやチューブ一本分だと商売をするには少し足りなそうだ。
「明日はこれに加えて照り焼きソースを用意するか。あれならみりんと醤油と砂糖を煮詰めて片栗粉をいれればできるはずだ」
実際に作ったことはないけれど、たぶん今キッチンカーにある材料でできる。あとは料理酒なんかがあればよかったけれど、それはないみたいだな。
「それでも足りなくなりそうだけれど、早めに売り切れたら翌日の準備をして、キッチンカーで走って走行ポイントを貯めればいいか。まあのんびりとお金とポイントを貯めていこう」
『承知しました』
急ぐ旅でもないし、焦らず確実にいくとしよう。
……さて、このあとは仕込み作業か。営業中も大変だったけれど、この仕込み作業も結構大変だったりするんだよ。飲食店を経営している人たちは本当に大変なんだな。




