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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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調査結果報告2nd

 話し始めたステラ。ドローンから投影された映像は、俺が倒したアルガの人間形態だった。まるで3Dモデルのように動くアルガの姿はシュールだ。


「先ず、怪人についてですが……彼らは、元は人間です。元はというか、素体はと言った方が正しいですが」


「まぁ、そうだな」


 それは俺達も知ってることだ。アルガの場合は、何か海藻だかが主体みたいな感じだった筈だ。


「そして、人間の素体を改造し、魔術を組み込んで強化した物……これをベースとします。このベースに、異能の因子や魔物の素材を混ぜ込み、更なる改造を施した結果がこの怪人という訳ですね」


「大方予想通りだな」


「えぇ。そして、その怪人の中にも幾つかの区別があるようです。コピーされた劣化した異能をただ貼り付けるように組み込まれている量産型と、手作業で異能を写し取ったハンドメイドの二種類が主であり、前者は刊本(プリント)、後者は写本(マニュスクリプト)と呼ばれているようです」


「アルガは後者ってことだな」


 ステラはこくりと頷き、話を続ける。


写本(マニュスクリプト)の中でも特殊例であるこのアルガという怪人は、異能持ちの人間に異能持ちの魔性シダを掛け合わせて生まれた怪人であり、多様な能力を持っていました。実際、マスターでも闘気だけでの討伐は時間がかかっていたようです」


「そうだな。新しい能力とか形態が次から次に出てきたせいで、想定以上に時間がかかった」


「今、マスターが言われましたが……怪人には基本的に形態変化の概念があります。その根源は、異能因子の活性化及び暴走です」


 篠崎の記憶を読んだ俺はそれも知っているが、カラスとメイアへの共有の為に黙っておく。


「魔科学研究会は異能に関する研究をかなり進めているようで、異能因子の操作にもかなりの知識を持っています。結果、本来の異能者には難しい異能の強化や改造、抽出や複製といったことも可能にしています」


「カァ、そりゃ厄介だな」


「天能連も終わってみればあっさりだったけれど、中々厄介な敵が多かったものね」


 メイア達は直接的には殆ど戦っていないが、俺の記憶をある程度共有してあるので殆どのことは知っている。


「そして、その研究によって作り出された機能が、異能の活性化及び暴走です。魔科学研究会によって生み出された怪人は、自らの異能を意図的に活性化させることが可能で、それを行うと多くの場合は肉体に変化が起こります。例えば、炎を操る能力であれば体に炎が宿ったり、一部分が炎に変化したりです」


 元はただ炎を操る能力でも、それを肉体に作用させたりすることが可能になるってことだな。


「更に、その活性化よりも効果が高い代わりにリスクが大きいのが暴走です。この暴走には指定の薬品が必要になり、肉体に投与する必要があります。その薬品の投与を経て暴走した怪人は、肉体の99%以上が異能因子によって変容します。この変容は量産型の怪人達には理性の消失を齎し、殆どの場合で元に戻ることは出来ません」


「つまり、量産型じゃない方の奴らは理性を失わずに異能の暴走を扱えるってことか?」


「そういうことです。そもそも、量産型に与えられるコピーして適当に貼り付けられただけの異能は、真の意味で肉体に適合しているとは言えません。その不完全定着な状態で異能の出力を過度に上昇させれば、当然制御できる筈もありません」


 但し、とステラは続ける。


「その量産型と呼ばれる怪人にも、異能を制御出来る型が存在します。多くの怪人は実験作であり、元の肉体も異能と完全に適合しない物が殆どです。ただ、異能に合った肉体をコピーして作られたクローンの怪人達は異能の制御率も高いです。ただ、この組織の目的自体が様々な研究を行うことなので、その完成形達の量自体は多くないです」


「獣人隊やら狙撃部隊やらのことだな。獣人隊は獣の特徴を持った怪人で、狙撃部隊は肉体の一部が銃器に変容している怪人だった」


 どちらも、雑に出されていた周りの怪人達よりも完成度が高かった。ただ、全てが同じ性能なせいで意外性は無いな。一つ能力の対策が出来れば簡単に封殺出来る。


「そして、写本と呼ばれる怪人達に関してはそれよりも高い異能の制御率と性能を誇ります。そもそも、量産型に与えられる異能は元よりも性能が劣化したコピーであり、改造によって無理やり出力を上げているだけでそのポテンシャルとしてはオリジナルよりも劣ります。対して、写本に与えられる異能は手作業で写し取られた物であり、性能もオリジナルと遜色ありません」


「しかし、異能のコピーか。花房が聞いたらショックを受けそうだな」


 尤も、アイツの場合は一人で複数の異能を保持出来るからな。こいつらのコピーとはまた方向性が違うが。

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