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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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506/512

機械/船団

 怪訝そうな目でこちらを見る黒岬と、真顔で視線を返し続ける俺。その間を触手が通り抜け、二つに分かれて俺達に襲い掛かるが、黒岬が刀を振るって斬り落とした。


「キサ、まら……ッ! 俺の前で冗長に会話なドと、フザけるなよ……ッ!」


 アルガがその全身を高く伸ばし、更に多くの触手を伸ばす。その触手達は先端が巨大な蟹の鋏となり、百本近くあるそれら全てが一撃必殺の威力を持つ武器へと変わった。


「ゼッタイに、殺してヤルッ!!」


 更に、その鋏からは瘴気が溢れ出し、並大抵の武器であれば弾くことすらままならない凶悪具合だ。


「取り敢えず、話はこの海鮮怪物を倒してからにしましょう」


 しかし、黒岬はその様子を見ても怯んだ様子は無く、漆黒の刀を構えた。


「……昔にも言ったが、お前に話をしてやるつもりは無いぞ」


「まぁ、それならそれで諦めますよ。本当を言えば追いかけてでも色々聞きたいところですけど、今の俺は……あんまり、好き勝手出来る立場でも無くなっちゃったんで」


 地面を貫いて生えて来た無数の触手が、黒岬を四方から囲み、呑み込んだ。


「さっきまでの奴らよりは、強そうかな」


 溢れ出した闇の魔力によって触手達は弾け飛び、中から無傷の黒岬が現れた。


「……前より、強くなってそうだな」


「当たり前ですよ。これでも俺、結構死線を潜ってるんで」


 自信ありげに笑みを浮かべた黒岬は、そう言ってアルガの方へと飛び込んでいった。


「……良し、任せるか」


 別に、こいつだけで勝てそうだからな。俺は周りに潜んでる奴が居ないかの確認でもしてくるとしよう。






 ♦




 奇跡の力によって蘇った仲間達の様子を、文月は確かめていた。


「俺も、体が半分以上吹き飛んでた筈なんですけど……まるで無かったことになったみたいに、傷が全部消えてたんですよ」


「……本当なんですね」


 実際にその様子を見ていた文月でも、確認を取ってしまう程に現実離れした力の行使だった。そもそも、蘇生魔術の使い手などこの世界には殆ど居ない上に、詠唱も無しにそれを為す等信じられない話だからだ。肉体が死んでから時間が全く経っていないという状況だったとは言え、どう考えても有り得ない。


「本当に、異様な力としか言えませんね」


 後から到着した安治が目を細めて頷き、巨大な化け物……アルガと戦う黒岬の方に視線を向けた。


「私では瘴気を纏った獅子ですら勝てないというのに、あれだけ濃い瘴気を操る怪物と渡り合えるとは……」


「しかも、かなり若いように見えました。ともすれば、私よりも下かも知れません」


 文月の予想している通り、19歳の彼女よりも黒岬は年下だ。何なら、護衛対象である犀川と同じく現役の高校生である。


「文月よりも下となると、学生である可能性も高いですが……流石にそれは有り得ないでしょうね」


「年齢なんてどうでも良いですけど、彼の身体能力と魔力の秘密は気になりますね~」


 未だ結界の中に残っている犀川が言う。暫くこの場所に留まっている犀川だが、一先ずの安全が確保されてからはエンシェントの手を椅子代わりにして座っている。


「……何か、嫌な予感がします」


 犀川が、首筋に手を触れて言った。危機察知の魔道具により、小さな針が犀川の首筋を刺したのだ。勿論、それによって後遺症が残るようなことは無い。


「嫌な予感というのは……」


「魔道具が反応しています。つまり、何かが……」


 犀川がそう口にした瞬間、空に巨大なゲートが開いた。


「ッ、アレは……」


 息を呑む文月。その視線の先には、ゲートから現れる大量の機械の飛行船があった。


「飛行船、ですかねぇ」


 眉を顰めて呟く犀川。次の瞬間、横一文字の真っ赤な斬撃が機械の船団の全てをバラバラに斬り裂いていた。落ちていく船達は、何処か虚空に呑み込まれたようにして消える。


「……これ、は」


「斬られた……? さっきの少年が、いや……」


 安治は口に出した予想を、直ぐに否定する。黒岬は現在進行形でアルガと戦闘しており、流石に機械の船の方にアレだけの斬撃を食らわせる余裕は無いだろうからだ。


「ならば、老日様が?」


 その言葉を証明するように、ゲートと向かい合うような位置のビル上に老日が立っているのが見えた。



「……まだ、これで終わりじゃない」



 既に、隠れて近づいて来ていた暗殺部隊も処理し、遠くから狙っていた狙撃部隊も処理。地下から移動してきていた爆弾を持っていた部隊も処理済みだ。そして、このゲートの発生も老日は予期していた。


「次は、どう出る」


 ビルの上で剣を垂らしている老日は、ゲートの奥を睨み付けた。

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