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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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金と銀

 銀の奔流が黄金色の結界に直撃し、ガリガリと削り……結界を破壊した。


「ッ!?」


 驚愕に目を見開く弥胡だが、銀の奔流を回避すること自体は間に合った。しかし、詠唱は中断されてしまう。


「『形態変化(フォームチェンジ)銀蛇鞭(ギガウィップ)』」


「くッ」


 ステラの腕が変化し、伸縮自在の銀の鞭となって弥胡を襲う。弥胡は薙刀で鞭を弾くが、強い衝撃に手を痺れさせる。


「『銀粒砲(アルゲントゥム)』」


 再び放たれる銀の奔流だが、弥胡はそれを回避しながらステラに迫る。


「『添霊結界』」


 弥胡を覆う球状の青白いバリア。それを纏ったまま弥胡はステラに近付き、薙刀を振り回した。


「無駄です」


「ッ!」


 迫る薙刀の刃を、銀の鞭が受け止めながら絡み付く。そのままステラは薙刀を引き寄せようとするが、弥胡が添霊結界の内側まで薙刀を引き戻したことで鞭は離れた。


「『形態変化(フォームチェンジ)螺旋錐(ギガドリル)』」


「何ですか……その、形は」


 それを見たステラの腕が鞭から大きなドリルに変化する。眉を顰める弥胡に、そのドリルが回転と共に振り下ろされる。


「ドリルです」


「だから、それが何かと……ッ!」


 薙刀を振り上げて受けようとする弥胡。しかし、ドリルは凄まじい威力で薙刀をねじ伏せ、そのまま弥胡の結界まで到達し、一瞬で青白い球状の結界を破壊した。


「『金霊疾駆』」


 結界を破壊し、そのまま弥胡に迫るドリル。しかし、弥胡の体が一瞬だけ黄金色の霊体となり、ドリルをすり抜けて一瞬でステラの背後まで移動した。


「さぁ、これで――――」


「『――――銀粒砲(アルゲントゥム)』」


 即座に振り向きながら放たれた銀の奔流。至近距離に居た弥胡は避けることも出来ず、薙刀では受けることも出来ない。

 何の抵抗も出来ず、弥胡は銀の奔流に呑み込まれた。


「さて、どうなりますかね?」


 魔力に満ちた金属粒子、それを束にして叩き付ける奔流。全てを破壊するそれは物理的防御だけでなく、魔術による防御すらも削り取る。


「……ッ!」


 瞬間、黄金の波動が駆け抜けた。妖力の波動だ。


「ぐ、ぅ……ふ、ぅぅ……」


 そこに立っていたのは、全身から黄金色の光を放つ、()()の少女だ。


「あれこそ、真のツインテールだね」


「黙って見てろ」


 何故か嬉しそうに言った瓢を黙らせ、俺は舞台に集中する。


「やはり、そう簡単には終わりませんか」


 溜息を吐くステラ。その背から翼のように四本のアームが生え、それから枝分かれするように無数の武器が展開される。


「『形態変化(フォームチェンジ)武装支腕展開(アーマメントアームズ)』」


 無数の武装、その殆どが遠距離攻撃用の物。


「一斉掃射」


 十を超える武装から同時に攻撃が放たれる。一瞬にして弾丸や光線の嵐が吹き荒れ、弥胡を襲う。


「『金霊疾駆』」


「『銀粒砲(アルゲントゥム)』」


 黄金色の霊体となって弾丸の嵐をすり抜けた弥胡。その体が肉体に戻る瞬間に重ねて放たれた銀の奔流。しかし、弥胡は対抗するように手の平から黄金の波動を放ち、銀の奔流を相殺した。


「私は……お前に、感謝しています」


「感謝、ですか?」


 弥胡の薙刀とステラのドリルがぶつかり、弾き合う。


「感謝です。お前のお陰で……私は、更に成長出来ました」


「成長というのは、その尻尾の話でしょうか」


 再度、薙刀とドリルがぶつかり弾き合った瞬間、ステラは手の平から銀の奔流を放つが、弥胡は距離を取りながら回避する。


「そうです。お前のお陰で、私は二尾に至れました」


「なるほど、おめでとうございます」


 ステラの背中から伸びる無数の武装から一斉に攻撃が放たれる。弥胡は黄金色の霊体と化して一瞬で移動し、再度ステラに距離を詰めた。


「『磁吸点(マグネサクション)』」


「ッ!?」


 しかし、それを読み切っていたステラは魔術の罠を仕掛けていた。隠された魔法陣の上に乗った弥胡は、その場から足を動かせなくなる。


「判断が遅いですね」


 弥胡に殺到する弾丸や光線の嵐。弥胡は黄金の妖力によって自身を囲う障壁を展開する、が……


「パイルバンカー」


 ドリルが凄まじい勢いで射出され、その障壁に突き刺さる。ドリルはあっという間に障壁を破壊し、その内側の弥胡に迫る。


「『金霊疾駆』」


「私は、貴方の扱う妖術や陰陽道について余り知りませんが……」


 黄金の霊体となって攻撃を回避しながらステラに迫る弥胡。


「同じように、貴方も魔術には詳しくないようですね」


 弥胡の足元、仕掛けられていた魔法陣が起動した。弥胡の足が一瞬で凍り付き、動かなくなる。


「『(みょう)(みょう)や、惑えや惑え』」


 ステラは背中の武装で攻撃しつつ、詠唱を始める。この魔術は所謂、即死呪文だ。即死が失敗した場合でも、相手の精神を乱し、心臓に大きく負担をかけられる。


「『離命衝尽(クラッシュライフ)』」


 黄金の妖力で体を覆いながら無理やり走り抜ける弥胡が突然その速度を失い、胸を抑えながら膝を突く。


「『銀粒砲(アルゲントゥム)』」


「ッ!」


 迫る銀の奔流に弥胡は顔を上げ、防ぐように手の平を突き出した。


「舐める、なッ!」


 手の平が黄金の波動が放たれ、銀の奔流を受け止める。が……


「視野が狭いですね」


「がッ!?」


 その背中を銀色の金属鞭が強打した。手前に倒れる弥胡だが、何とか気合で直ぐに立ち上がり……目の前に迫るドリルにギリギリで薙刀を合わせた。


「『武装変換(チェンジアーマメント)』」


 ステラの背中の支腕から伸びる武装が一斉に入れ替わる。遠距離用だった武装が、全て近距離用の物に置き換わった。

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