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捕獲されました。[連載版]  作者: ねがえり太郎
捕獲されまして。 <大谷視点>
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7.終わりました。



今日も三好さんはゴリゴリ怒られている。

ガックリ肩を落として席に戻って行くのを見ると気の毒に思い、思わずPCの隙間から亀田課長を睨んでしまう。確実にその視線には私の恨みも加えているけど。


でも三好さんはメゲナイ。

流石正社員……!暫くするとまた果敢に亀田課長に向かって行くんだ。時折言い返したりしているのを見ると「頑張れ~!」ってつい応援に熱が籠ってしまうのは仕方のない事だろう。

そう言えばキラキラ派遣社員二人が言ってたな。三好さんって企画課でエースだったって。何とあの大ヒット商品『美白組びはくグミ』を生み出した人らしい。スゴイ。『美白組』は食べるだけでお肌がプルンプルンになってアンチエイジング&美白が叶ってしまうと言う、食べる化粧品!として大ヒットしたのだ。味はイチゴ、モモ、リンゴの三種類あって、私はリンゴが好きだったなー。まさか其処まで上り詰めた人が企画課から異動になって、しかもあんなコワモテ眼鏡にガンガン怒られる立場になるなんて―――正社員って大変なんだなぁ~って、思う。


亀田課長と三好さんの遣り取りをボンヤリ眺めながら、そんな事を考えていると、三好さんが机に戻ろうとしている所で亀田課長がフイッとこちらに視線を回した。


ギクっ。


ジッと視線を固定されて、嫌な汗が背中を伝う……。


すっと立ち上がりスタスタと歩み寄ってきた背の高いシルエットが、アッと言う間に私の真ん前まで辿り着いて、窓の光を背に受けて私に影を落とした。


「随分余裕があるな。さっき指示した直し、終わったのか?」


終わってません。


―――と言うか、その瞬間私の命が終わりました。(あくまでイメージです)







その日は何だかお弁当を作る気分じゃ無かったので、食堂で食べる事にした。

食堂と言ってもテーブルと椅子が並んでいて、食堂のシェフもおばちゃんもいない。ただお弁当屋さんが時間になると現れるのでそれを購入して、その食堂スペースでご飯を食べれるようになっているのだ。お茶とか水、珈琲や紅茶なんかの簡単な飲み物は無料で飲めるし、お弁当屋さんは都内のランチを提供する結構な有名店などと契約して、その辺りのコンビニじゃ食べられないような美味しいお弁当を提供してくれるので、かなり人気なのだ。列に並ぶのとか混んでいる場所が苦手なので普段はお弁当なんだけれど……今日はお昼休みになった瞬間に立ち上がり、そこへ駆けつけた。


やっり~ほとんどまだ並んでいない……!


私は財布を手にイソイソとお弁当の群れを見て、品定めを始めた。


あ!『タイメイ軒』のふわふわオムライスがある……!一度食べに行った事がある。あのランチがこの価格で楽しめるなんて~~!いっつも昼ダッシュをするのは無理だけど、たまにはいいなぁ。この会社、このお弁当屋さんが来るってだけで採用されて良かったって気になっちゃうかも。牛タン弁当も捨てがたいけど、やっぱりこの『オムライス&海老フライ弁当』にしよう!


お金を払いホクホクしてまだ空きのあるテーブルに座った。おひとり様なので、窓際の端っこ。真ん中は落ち着かないんだよね~。


お弁当を席において確保しておいて、私は飲み物を取りに行った。温かいお茶をサーバーから取り出して、席に戻る途中でバッタリ三好さんと行き合った。


「あら、大谷さん」


少しだけ年上の三好さんは、見た目から如何にもできる!って感じの美人さんだ。ちょっとキツメの印象を受けるけどサバサバしていて私は結構付き合いやすいって勝手に思っている。他のキラキラ派遣社員二人はそんなデキる彼女の事を苦手にしているみたいだけど……。でも三好さんはあまりそう言うの気にしていないように見える。仕事一筋って感じ。


「珍しいわね、いつもお弁当じゃなかった?」

「今日はちょっと作る気しなくて。偶にはこっちも食べたいと思ってたので」

「美味しいよね、ここのお弁当屋さん。私は自分で作るの無理だからいつもここだな。ね、隣座って良い?」

「あ、はい。あの窓際です。お弁当持って行きましょうか?飲み物取ってきたらいいですよ」

「サンキュー!助かるわ」


そう言って三好さんはニカリと太陽のように笑って、私にお弁当を託したのだった。



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