表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

送風機

「エルンスト?何してるの」

早朝、眠い目をこすりながらベルが一階のアトリエへ降りてゆくと、エルンストが実験器具をがちゃがちゃいわせて何かぶつぶつ言っていた。

「黄砂はアルカリ性だ!」

「なんでわかるの?」

「実験したんだ」

「?」

黄砂をどうやって手に入れたんだろう?ベルは首をかしげた。

そういえば、玄武岩の粉もいつのまにか持っていたし。あの時はあらかじめ用意してから旅に出たのかな?用意がいいな、くらいにしか思わなかったが、これはどういうことだろう。

「どうやって黄砂を今ここに持ってきたの?」

「実は俺……」

エルンストはマントを羽織り、どこからか紅い宝玉のついた杖を出して右手に持った。

「大陸魔法協会の魔法使いなんだ」

「うそつき!」

「うそじゃない。みてろ!」

エルンストが呪文を唱えると、何もない中空に石が数個現れて、またべつの呪文でそれらが粉々にすりつぶされた。

「こいつが玄武岩の粉!そして、」

次の呪文で砂が手のひらいっぱい現れた。間違いなく黄砂だった。

「だましたのね」

「なにが?」

エルンストはきょとんとした。

「乙女心を踏みにじって!」

「なんのこと?!」

なんかよくわからんが、ベルがショックを受けたらしいので、落ち着くまでエルンストは待っていた。

「あのー、ベル、さん?」

「何?」

「最初の日に使った温風機の構造教えてもらえないかな。そして、できれば、温風じゃなくて、普通の風が出るように改造可能かな?」

「熱線を使わなければ、送風機が作れるわ」

「じゃあ、その設計図もらえないかな?」

ベルはさっさと設計図を書き上げた。

「どうするの?」

「これの大型と強風のやつを幾つか生産して魔法で補佐して黄砂を北部まで運ぶんだ」

「そう。……じゃあ、もう、ここには用はないのね」

「いや、その、追って魔法協会からお礼の品々が届くし、用がないわけじゃないし、まいったな」

「さよならエルンスト」

「その、手紙を書くよ」

パタン。

アトリエの扉の閉まる音が寂しく響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ