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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第20章 後輩とダンジョンへ

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第559話 まずは見本からだな

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 ダンジョンに入っても暫くの間は、大勢の探索者達の作る移動行列に従って移動となる。むろんモンスターが近くに出現した場合に備えて、パーティーとパーティーとの間には数メートルの間隔はあいているが、入場者が多いのでずっと先まで人影が見えている。

 つまり、入場ゲート前とさほど変わらない光景が続いているという事だ。

 

「何か、ここがダンジョンの中って感じがしませんね」

「うん、ずっと先まで人の列が続いてるよね」

「まぁ、そうだね。ここは次の階層に降りる階段までの最短ルートだから、早く先に進みたい探索者達が集中するんだよ。とはいっても、ここがダンジョンの中って事に変わりはないからね? あまり油断していると、通路の陰から突然湧いたモンスターの攻撃を受けて……って事もあるんだからさ」


 あまりにゲート前の光景と代わり映えしない状況に、舘林さんと日野さんは少し拍子抜けしたといった様子で集中力を欠き始めていた。緊張し過ぎるのも良くないが、ダンジョン内で油断するのはダメなので注意しておく。

 今でもたまに聞くのだ、この状況に油断しきったせいで新人探索者が怪我を負うという話は。


「「あっ……はい」」

「まぁこうも行列が続いていると気が緩むのは分かるけど、こういった行列があるのはこの階層に限った話じゃないからね?」

「「……えっ?」」


 階層移動行列が出来るのはここだけではないと教えると、舘林さんも日野さんも少し呆気にとられたような表情を浮かべた。

 そして俺は美佳と沙織ちゃんに顔を向け、話の先を促す。


「うん、そうなんだよ。お兄ちゃんがいう様に、階層移動をする為の行列ってここだけのものじゃないんだよね」

「大体10階層ぐらいまではこの行列は続いてるかな? やっぱり皆、目的の階層までは最短ルートで移動したいしね」

「「本当に?」」

 

 目的地までは可能な限りモンスターとの戦闘は避け、最小限の消耗で到達したいからな。


「本当だよ。それに時間は掛かるけど、ちゃんとメリットもあるんだよ?」

「移動行列にのっていれば、目的の階層まで無駄に戦わなくて済むからね」


 多少時間はかかるが、行列にのって移動すればモンスターが出現した際に複数のパーティーで戦う事が出来るので、結果的に短時間での階層移動が可能になる。

 単独パーティーで苦戦する相手でも、複数パーティーで戦えば楽勝とはいかなくとも苦戦はしないからな。


「だからこの階層移動行列にのって移動する場合、幾つかルールというか暗黙の了解があるんだよ。モンスターが出た際に誰が対処するのかとか、共同討伐した際に出現したドロップの分配とか」

「そうそう、でも一番のルールは揉めずに手早くかな? 下手に手間取ると行列が渋滞するからね、皆でモンスターを袋叩きにして早期解決早期再開ってね」

「「袋叩きなんだ……」」


 袋叩きと聞き舘林さんと日野さんは引いている様子だったが、行列の中にはトップレベルの企業系探索者パーティーや中堅レベルの探索者パーティーが複数いるから可能なんだよね。

 因みに初心者パーティーが遭遇した際も、大体周りの探索者パーティーが手伝ってくれるので問題ない。


「渋滞を起こさない様にね。偶に新人パーティーがプライドに縋って、新人パーティーだけや単独で討伐しようとして渋滞を起こすなんて事もあるけど、その時のブーイングはまぁ凄いよ」

「時間を掛けてるとあっちこっちから文句が飛んでくるんだよ、お前らには次の階層はまだ早い!ってね。まぁ実際、次の階層で十分通用する実力があるのなら、そう手古摺る様な事はないからね」

「それは口は悪そうだけど、親切に忠告してくれていると取ったら良いのかな?」

「良いと思うよ。複数パーティーで袋叩きにしているのに手間取るって事は、純粋に実力不足が露呈しているって事だからね。実力不足のまま格上のモンスターと戦ったら、それこそ大怪我や最悪も有るから」


 まぁ素直に忠告を受け取り実力を鍛えるパーティーもあれば、無視して先に進み大怪我を負うパーティーもあるからな。

 

「ある意味、ある程度安全に次の階層に自分達の力が通用するかを測る事が出来る機会だけど、それ目的でやるのはやめた方が良いからね。周りの迷惑になるし、故意にその手の迷惑行為をやってると他の探索者達に総スカンをされるよ。そうなったら本当に、いざという時に助けて貰えなくなったりするからね?」

「最終的に助けてはくれるかもしれないけど、大怪我を負ったり回復薬を融通して貰えなかったりするかもしれないからね?」

「「……うん、絶対にやらないよ」」


 俺達は移動行列が出来ない階層での活動がメインなのでそういう事態には遭遇した事は無いけど、美佳達がメインで活動している階層だとそういう事も起きているのか。確かに迷惑行為をやって総スカンを食らって、いざという時の助力を求められないというのは死活問題に直結するからな。

 そして舘林さんと日野さんは美佳と沙織ちゃんの忠告を聞き、真剣な表情を浮かべながら返事をした。


「2人とも、もう少し進んでから移動行列を離れるからね。どこからモンスターが出て来ても良いように、周辺の警戒を忘れずに」

「「あっ、はい!」」

「まぁ中々遭遇出来ないと思うから、緊張しすぎて疲れない様に」

「「はい!」」


 そして俺達はそれから5分程階層移動行列にのって進んだ後、行列から離れ本格的にダンジョン探索を始めた。

 ここからが本当の舘林さんと日野さんのダンジョン探索だ。






 階層移動行列を離れた後、俺達はまず最初に隊列を組む。前方に美佳と沙織ちゃん、中段に舘林さんと日野さん、後方に俺達3人といった隊列だ。

 今日のダンジョン探索での目的は、舘林さんと日野さんにダンジョンの雰囲気に慣れて貰う事と、実際にモンスターを倒して貰い探索者を続けられるかどうかの適性を見る事だからな。


「まずは2人には、ダンジョン独特の雰囲気に慣れて貰う所から始めて貰うよ。さっきまでは階層移動行列のお陰で意識しなくて済んだかもしれなけど、どう? さっきまでとは大分雰囲気が違うでしょ?」

「「……」」


 俺の質問に舘林さんと日野さんは周囲を窺う様な仕草をした後、少し驚いたような戸惑ったような表情を浮かべていた。

 原因は分からないが、何か違うという事は感じている様だ。


「えっと、上手くいえないんですが……何か変、ですよね? 薄暗いっていうのは承知しているんですが、あれ?」

「うん。なんか、変だよね?」

「うんうん、違和感は感じているみたいだね。それじゃぁヒント、向こうの方に聞き耳を立ててみてよ。さっき自分達がいた階層移動行列がある方にさ」

「「……あれ?」」


 俺は自分達が歩いてきた方向を指をさすと、舘林さんと日野さんは素直に聞き耳を立て、困惑した表情を浮かべながら頭を傾げた。


「あんなに人が一杯で賑やかだったのに、何も聞こえてこない?」

「本当だ。少し五月蠅いなと思っていたのに、全然聞こえてこないよ」

「それが2人の感じていた違和感の正体だよ。ダンジョンの中って無茶苦茶吸音性が高いみたいでね、少し離れると話し声ぐらいだと殆ど音が聞こえなくなるんだよね。その証拠に、少し全員で目を閉じて静かにしてみようか?」


 俺が口の前に人差し指を立てながらそう指示を出しと、全員揃って目を閉じて動きを止め押し黙る。

 すると周囲から音という音が消え去り、微かに自分達の発する呼吸音だけが小さく響いている痛い程の静寂に満たされた環境が出来上がった。


「「……」」

「はい、お仕舞い」

「……っ、はぁはぁ」


 30秒程ほどすると舘林さんと日野さんの方から少し荒い呼吸音が聞こえ始めたので、目を開け止めの合図を出す。

 すると舘林さんと日野さんは荒い呼吸を繰り返しながら少し不安げな表情を浮かべつつ、周囲の俺達がいる事を確認し安堵の表情を浮かべていた。


「今体験して貰ったようにダンジョン内は基本、何も音を立てなかった場合は殆ど無音といっても良い環境だ。良い意味で捉えるなら、接近してくるモンスターの足音や他の探索者パーティーの存在なんかに気付きやすい。でもその反面、こんな静寂が広がる空間で何も音を立てずにいたら、さっき体験して貰ったように心理的負担が大き過ぎる」

「はい、私もそう思います。流石にあんなに静かなのはちょっと……」

「私もちょっと無理です。あの静かさが続くと思うと……」

「まぁそういう反応になるよね、慣れた俺達でも流石に長時間あの環境は厳しいからね」


 何も音が聞こえない空間って、無性に不安が込み上げてくるからな。

 

「だからダンジョン探索中は、パーティーメンバーと雑談をしたりしながら進むんだよ。もちろん、お喋りに集中し過ぎて周辺の警戒を緩めるとかってのは無しだからね? 他にも音楽をBGMとして流して気を紛らわせるとかって方法もあるけど時と場所を弁えて、やるなら周りに迷惑にならない音の大きさや、さっきの行列に並んでいる時にはしないようにするんだよ」

「分かりました、確かに何か対策をして気を紛らわせる様にしないといけませんね」

「お喋りだと夢中になりそうだから、BGMかな?」


 モンスターが接近した際に直ぐに止められるという点では会話の方が良いかもね、BGMはモンスターが音を頼りに近付いてくるという、メリットの様なデメリットもあるからね。

 まぁそこら辺はダンジョン探索を続ける中で、自分達に合った方法を採用すれば良いと思うよ。


「まぁ今日の所は、ダンジョンの中がこういう環境だってのを分かって貰えれば良いよ」

「「はい!」」

「それじゃ探索を続けようか? 暫くモンスターとは遭遇しないだろうから、2人にダンジョンでの歩き方を教えながら進むよ」

「「はい!」」


 こうして俺達は舘林さんと日野さんに、ダンジョン内で採るべき行動と注意点を教えながらダンジョンの奥へとモンスターを探し足を進める。 

 





 時おり他の探索者パーティーと遭遇したりしながらダンジョンの奥へと歩き始めて30分程が経った頃、いよいよその時がやってきた。

 薄暗い通路の先、いるな。


「ん、どうしたの美佳ちゃん、沙織ちゃん? 急に立ち止まって……」

「しっ、静かにして。 いるよ」


 急に立ち止まった美佳と沙織ちゃんの行動に、戸惑った表情を浮かべる舘林さんと日野さん。しかし美佳と沙織ちゃんは前方も通路から鋭い視線を外す事なく、手を水平に伸ばし後続に動きを止めるように指示をだした。

 

「いる? っ!? もしかしてモンスターがいるの!?」

「そう、だからあんまり大きな声は立てないでね。数は……1体だね。まだ向こうの索敵範囲には入ってないけど油断はしないで、もう少し先に進んだら確実にこっちに気付いて襲い掛かってくるから」

「う、うん」


 美佳がモンスターが直ぐ近くにいると伝えると、舘林さんと日野さんは驚きと少しの脅えが入り混じった表情を浮かべた。

 ついに来るべき時が来た、という事だな。


「で、どうするのお兄ちゃん? このまま2人に戦って貰う? それとも一度私達が戦って、モンスターと戦う姿を見せた方が良いかな?」

「万全を期すのなら、一度戦っている所を見せた方が良いかもな。裕二はどう思う?」

「そうだな、安全を取るなら1度見せておいた方が良いと思うぞ。もう一度探すのは手間だが、見本は見ておいた方が自分が戦う場合をイメージしやすいからな。柊さんは?」

「私は無しでも良いと思うわよ? 2人のこれ迄の訓練を思えば、落ち着いていれば確実に倒せるもの。初見で対処しないといけないモンスターが居ることを思えば、ここで経験しておくのも悪くないと思うわよ?」


 裕二は見本賛成派で柊さんは反対派か、数でいえば賛成派が多いが柊さんの意見にも一理ある。確かに探索者を続けるのなら、事前の知識では知っているが初見で対応しなければいけない場面は多々あるからな。万全のバックアップ体制が整っている今、初見での対応力を見るのは良いのかもしれない。

 ただ、モンスターを倒せるかどうなのかを見ようって段階でやるのもね?


「……柊さんの意見も分かるけど、多分それは次の段階でやる事だよ。ここはまず見本を見せた方が良いと思う。といった感じなんだけど、2人はどうかな。まず見本を見て貰ってから本番をと思っているんだけど?」

「えっと、はい。出来ればいきなり本番より、まずは見本を見たいです」

「私も……」

「そっか。じゃぁまずは見本を見せるから、自分が戦うのならどう動くかをイメージしてね。それが確りイメージが出来ていれば、緊張していても結構動けるからさ」


 まずは2人に見本を見せる事が決まり、舘林さんと日野さんは小さく安堵の息を漏らした後、表情を引き締め決意の籠った真っ直ぐな眼差しを向けてきた。緊張はしているけど、大丈夫そうだな。 

 そして俺は前方で警戒を続けている美佳に、この後の動きについて指示を出す。


「美佳いけるか?」

「うん、大丈夫だよ」

「それじゃぁ頼む、あくまでも初心者に対モンスター戦の見本を見せる為だぞ。出来るだけ安全マージンを取った上で、分かり易い動きで仕留めてくれ」

「了解。分かり易く安全に、ね」


 そういうと美佳は少し足をゆっくりと進め、モンスターの警戒ラインに触れる。

 すると通路の向こうからモンスターの唸り声が響き、ゆっくりとした足取りで俺たちの方へと近づいてきた。さぁて、上手く見本を見せてやってくれよ美佳。
















見事、初心者への見本になる戦闘を務められるのか!?


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
初の実戦はまた調味料シリーズなんだろうか?
階段含めての天上の高さ次第ではハイスペック連中が天井付近を忍者のように壁蹴り走法?でお先~ってする光景が見れるようになりそうよねぇ
行きの行列があれば、帰りの行列もありますね。
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