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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第19章 後輩ダンジョンを目指す
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第552話 合格通知届く

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 柊さん主催のトレーニング後の効果的なケアマッサージ講座もほぼ予定通り無事に終わり、学食でジュースを飲みながら待機していた俺達と合流。美佳達4人の表情が訓練直後よりかなり柔らかくなっているので、マッサージは効果的に作用しているようだ。

 美佳も沙織ちゃんも大分歩き方が軽やかになってるな。

 

「お待たせ九重君、広瀬君」

「あっ柊さん、終わったの? 4人も一度に指導お疲れ様だったね」

「皆素直に指示を聞いてくれたから、そんなに大変じゃなかったわよ。それに私は指示出しが主だったから、マッサージ自体は互いにやって貰ったしね」


 そういい柊さんは後ろを振り返り、美佳達に視線を向ける。

 

「教えて貰った通りにマッサージしたら、凄く調子よくなったよ。今まで自分流でやっていたマッサージが、どれだけ適当だったのかって思っちゃうほどに……」

「マッサージの仕方一つでこんなに違うんですね、驚きました」

「疲れた感覚は残ってますけど、足とかの痛みは全然感じなくなりました!」

「正直驚きっぱなしです」


 柊さんの教えたマッサージは、美佳達に大好評のようだ。

 

「随分と好評ね。それじゃぁ今日はあまり時間が無かったから簡易的なマッサージだったけど、今度もっとしっかりしたマッサージの仕方を教えた方が良いかしら?」

「「「「是非お願いします!」」」」


 柊さんの提案に、美佳達4人は頭を下げながら是非にと懇願する。


「それじゃぁ、明日にでも本格的なマッサージの仕方を教えましょう。毎日ちゃんと訓練後の疲労が抜ければその分、次の日からの訓練の質が上がるというものよ。今日みたいに疲労状態での訓練も必要でしょうけど、基本的には万全の状態で訓練に臨める方が効率は良いわ。皆も折角苦労して訓練するのなら、効果は高い方が良いわよね?」

「「「「はい!」」」」


 柊さんは俺達の方を向き、顔の前に右手を出しながら軽く頭を下げる。


「そういう訳だから九重君広瀬君、明日の訓練は美佳ちゃん達に本格的なマッサージの仕方を教えようと思うんだけど良いかしら?」

「いやいや、寧ろこっちからお願いしたいよ。やっぱり前日の訓練の疲労が残っている状態だと、効率もだけど怪我をするリスクが上がるからね。柊さんの教えるマッサージでリスクが解消できるのなら、是非とも皆には正しいマッサージの仕方は覚えて貰いたい」

「俺からもお願いするよ。確かに今なら回復薬を使えば大概の軽い怪我は直ぐに治せるようになったけど、やっぱり病院のお世話になる様な怪我をしたら記憶に少なからず残るからね。一度そういったケガをすると、完治してもまた怪我をするかもって無意識に体が委縮するからさ。そうなったら原因の苦い記憶を払拭するまでに長い時間が掛かるし、その期間の訓練効率は良くないからね」


 まぁ確かに裕二の言う様に、一度大きな怪我をしてしまうと完治しても無意識的に怪我をしたところを庇おうとするからな。そのせいで動きがぎこちないものになったり、変な癖がついてしまったりする。

 それを解消しようと思えば修正に余計に時間を食い、訓練効率が悪化するのは目に見えているからな。それならば、訓練を一日減らしてもケガをしにくくなるケアの仕方を学んで貰った方が全体としてはプラスになる。


「ただ、組手はやめにしても基礎トレだけはやっておいた方が良い。やっぱり基礎能力の向上は日々の積み重ねだしね。特に舘林さんと日野さんは基礎能力の向上は喫緊の課題だしさ」

「そうね、マッサージ講座はランニングと筋トレをした後にした方が良いかもしれないわ」

「ありがとう。すこし手間だろうけど、そうしてくれた方が舘林さんと日野さんの為になるかな」


 すでにそれなりの探索者である美佳と沙織ちゃんはレベルアップ補正もあり問題ないが、舘林さんと日野さんの基礎能力はまだまだ低いからな。継続的な体力及び筋力の強化は必須である。

 だから明日の訓練が中止にならないからと残念そうな顔をしないでよ、コレは自分達の為になる事なんだからさ?


「それじゃぁ、明日はそうしましょう。皆それで良いわよね?」

「「「「はい」」」」

「じゃ決まりね」


 こうして明日の基礎訓練後に、柊さんのケア講座が開催する事が決定する。

 因みに俺と裕二は今日以上に待ち時間が長くなるだろうからと、基礎トレが終わった後に解散という流れになった。 


「それじゃぁ皆、そろそろ良い時間だし帰ろうか?」

「賛成。あっ、そうだお兄ちゃん。帰り道にドラッグストアによっても良い? 沙織ちゃんが湿布を買ってから帰りたいっていってたからさ」

「ああ良いぞ、学校の近くだとあそこだな」


 美佳の進言で俺は学校を出て直ぐの大通り沿いにあるドラッグストアを思い出し、少し普段の帰路からは逸れるが問題ないと了承した。

 柊さんのマッサージで大分マシになったとはいえ、湿布等のケア商品は必要だからな。


「じゃぁ俺と美佳は沙織ちゃんと一緒に、近くのドラッグストアに寄ってから帰るから。皆は先に帰ってよ」

「おう、そういう事なら頼むな」

「悪いわね九重君、よろしくお願いね」

「「分かりました」」


 そんな訳で俺達3人は皆と校門の前で別れ、ドラッグストアによって帰る事になった。

 さて、湿布って幾らぐらいだったかな?






 そして簿記試験を受験してからおよそ3週間後、舘林さんと日野さんの訓練をしながら待っていた合否の結果が家に郵送されてきた。遅ければ結果が届くのは12月を超えるかもと思っていたのだが、ギリギリ11月内に届いた感じだな。

 普段通り放課後の訓練を終えて帰ってきたら届いていたので、美佳と一緒にリビングで合否判定の入った封筒を開封する。


「さてさて、それなりに出来ていた感触はあったけど結果はっと……」

「合格してますように! 合格してますように!」


 俺は特に緊張することなくハサミを使い封筒を開き、美佳は封筒をテーブルの上に置いたまま手を合わせ必死に合格を祈願している。

 おいおい美佳。今更必死にお祈りしても結果は変わらないんだからさ、観念して潔く封筒の中身を見ろよ。


「おっ、コレは……合格だな」


 封筒の中に入っていた三つ折りにされたA4用紙を取り出し広げると、その書面には俺が合格した事を通知する旨が記載されていた。どうやら無事に資格を取得する事が出来たらしい。

 俺は軽く息を吐きながら安堵しつつ、未だに封筒に向かって御祈りを続ける美佳に視線を向ける。


「おい美佳、どうやら俺は合格したらしいぞ。そっちも早く中身を確認しろよ」

「ええっ、お兄ちゃん合格したの!?」

「何だよその驚き様は、俺は落ちていたとでも思っていたのか?」

「えっ、あっ、いや……何となく?」


 誤魔化す様な表情を浮かべる美佳の返事に、俺は呆れの混ざった小さな溜息を漏らす。


「はぁ、もう良いから早く中身を確認しろよ」

「あっ、うん」


 俺に促された美佳は、渋々といった様子でハサミを使い封筒を開く。

 そして美佳は封筒の中から紙を取り出し、軽く目を瞑り息を整えてから……開いた。


「ええっと? 九重美佳様、この度……合格とさせていただきます!? えっ、ホント!? やった、合格した!」

「おお美佳も合格したのか、やったな!」

「うん!」


 美佳は合格通知を握りしめたまま、両手を挙げながら小さく飛び上がり全身で喜びを表した。試験から合格まで間が空いていたので、試験では大丈夫だったと思いつつも不安が募っていただろうからな、まぁ無理もない。

 しかし、嬉しいのは分かるが少々はしゃぎすぎたらしく……。 


「ちょっと、うるさいわよ美佳! いったい何を騒いでるの!?」


 台所で夕飯の準備をしていた母さんが、少々煩わし気に騒ぎ過ぎた美佳にお叱りの言葉を発した。

 まぁ帰ってきて直ぐ制服から着替えもせずに、リビングで跳び跳ねながら騒いでいたらお叱りの一つも貰うというモノだ。


「えっ、あっ、ごめん。でもでも見てよお母さん、コレ! この間受験した簿記試験合格だって、私もお兄ちゃんも!」

「えっ? ああ、そういえば貴方達簿記の試験を受けていたわね。2人揃って合格したの?」

「うん!」

「あらあら、それなら騒ぐのも無理ないかもしれないわね」


 コレが証拠だとばかりに美佳が合格通知を母さんに向かって突き出すと、母さんは感心したような表情を浮かべながら、しょうがないわねとばかりに小さく溜息を漏らす。

 せっかく努力が実り喜んでいるのだ、水を差すのも無粋だと考えたのだろう。


「まぁそれはそれとして、試験に合格したのが嬉しいってのは分かったけどあまり騒ぎ過ぎないのよ」

「はーい、ごめんなさい」


 母さんはもう少し何かいいたげな表情を浮かべていたが、台所の奥へ顔を引っ込めた。


「あっそうそう、帰って来たのなら二人とも早く制服から着替えておきなさい」

「はーい!」

「了解」


 俺と美佳はそれぞれ合格通知を手に持ち、着替える為に自分の部屋へと移動する。

 そして自分の部屋に戻る際、俺は自分の部屋に入ろうとしている美佳を呼び止め一つ注意をする。


「そうだ美佳、合格通知が届いた事はまだ沙織ちゃん達にいうなよ」

「えっ、それってどうして?」

「どうしてって、もし誰かが落ちてたら気まずいだろ? もしもの時を考えたら、結果を受け止める時間は必要だと思うぞ?」

「……あっ!」


 合格通知に喜び浮かれていた美佳は、俺の指摘に失念していたと顔を少し青褪めさせる。自分が合格したからといって、一緒に受験した友達が全員合格しているとは限らないからな。

 喜び急いで合格を伝えたら、伝えた相手は落ちていたともなれば地獄の様な重苦しい空気になる。


「それにまだ合否の通知が届いてない可能性もあるんだ、明日学校で直接聞いた方が良いんじゃないか? もし他の所も今日通知が届いていれば、もしもの時でも今日聞くよりはましだと思うぞ? 少なくとも今日は、自分から合否の話題を振るのは止めておけ」

「ああ、うん。そうする。確かに受験生全員が合格できる試験って訳じゃないんだし、もしもの事を考えてから話を振らないと駄目だよね」

「そうだな。まぁ一斉発送だろうから、明日になれば皆の合否もハッキリするさ。今日は自分達だけで合格を喜んでいた方が良いと思う」

「うん」


 合格の興奮で少し浮かれていた様子だった美佳も落ち着きを取り戻し、小さく深呼吸を繰り返し浮ついていた心を落ち着かせている様だった。

 まぁ努力が実を結んだ事を喜ぶのは間違ってないんだけど、同じ目標を複数人で目指していた場合は面倒だけど色々注意しないといけないからな。


「じゃ着替えたら下に降りてるから、また後でな」

「うん。また後でね」


 俺と美佳はそれぞれ着替えをする為に、自分の部屋に入った。

 それはそうと……よっしゃ! 合格したぞ!






 父さんと母さんに簿記検定合格を褒めて貰えた翌日、俺と美佳は何時も通りに学校へ登校する。

 その際珍しく、幸か不幸か今日は誰とも合流することなく学校まで到着した。


「うーん、こういう日に限って誰にも遭遇しないだなんてな」

「そうだね、まぁこういう日もあるよ」


 昨日から早く皆の結果を確認したかったんだが、上手く行かないモノである。


「それじゃぁ美佳、また放課後にな」

「うん、じゃぁお兄ちゃんも頑張ってね」


 俺達は昇降口で別れ、それぞれの教室へと向かう。

 そして教室に入ると裕二と柊さんが既に登校しており、2人で集まり何か話をしていた。


「おはよう、2人とも」

「おはよう大樹」

「おはよう九重君。ねぇ九重君、九重君の所にも簿記検定の合否通知は届いてた?」


 軽く手を上げながら挨拶をすると、柊さんが待ち切れないとばかりに本題が投げかけられてきた。

 まぁ気になるよな。


「うん、合格してたよ。2人は?」

「俺も合格してたぞ。まぁそこそこ手応えがあって自信はあったしな」

「私も合格だったわ……良かった」


 俺達3人は揃って胸を撫でおろし、一斉に安堵の息を漏らした。

 とりあえずコレで美佳達後輩組に対して、先輩としてのメンツが立つ。

 

「それじゃぁ後は、美佳ちゃん達がどうだったかだな。皆合格してると良いんだけど……」

「大丈夫よ、きっと。皆しっかり勉強してたし」

「うん。美佳も合格してたんだし、他の3人も大丈夫だって」


 まぁ全員の合否がハッキリとしないので少し不安が残るが、まあ大丈夫だろうと楽観視できるだけの心の余裕は出来たな。それに今は他にも心配事があるからな、思っていたより早く簿記検定の合否が知れたのは良かった。

 何せ他の心配事というのがな……。


「来週から期末テストか……」

「試験の最中に合否通知が来なくて良かったぜ、ホント」

「そうね。もし不合格だったら、ショックで期末テストも失敗していたかもしれないわ」


 俺達は遠い眼差しをしつつ、揃って来週から始まる期末テストを思い憂鬱な溜息を漏らす。

 本当に良かったよ今週に合否判定が届いて、本当に。
















数名で集団受験し1人だけが不合格というのは、気まずいったらありゃしませんからね。


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挿絵(By みてみん)

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簿記合格よかったです そして、お母さんの反応がダンジョン関連よりはるかに良い 親としてはリスクのない活躍なら、心配せず喜べますね
>数名で集団受験し1人だけが不合格 数十年前になるのに今もはっきり覚えてます、高校受験で仲のいい友人達で合格発表を見に行って、一人だけ不合格だった時の気まずい気持ちと、引きつった顔で強がってた友人の…
数ヶ月前、玉掛けを受講しました。 学科は常識の範囲でしたので問題ありませんでした。 問題は実技試験。 知恵熱が出るくらい頑張ったつもりです(帰宅時には本当に熱が出ました)けど、補助者をしている間に作業…
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