第331話 帰ってからの楽しみが出来たかな?
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階段を下り48階層に到達した俺達は、軽く休憩を取ってから探索を開始した。先の前例を考慮し、木の上だけに限らず地面の下も警戒しつつ歩き回る。
それにしても地面の下にいる敵か……魔法やスキルに振動感知とかって知覚系のモノは無いかな?
「難しいな……地面の下にいる相手を探るのって」
「ああ、木の上や草陰に居るのなら多少離れていても感知出来るんだが、流石に地面の下になると手掛かりが少なくて難しいな」
「ええ。攻撃直前になれば前兆があるから分かるけど、それは本当に攻撃直前にならないと分からないって事だものね。それだと如何に強固な防衛網を構築しても、何時の間にか敵がベースキャンプ内に侵入していた、なんて事も十分あり得るわ」
俺達は地中に潜む敵の厄介さに辟易しつつ、探知系スキルの習得の必要性をヒシヒシと感じていた。今までは幻夜さんの訓練で培った自前の探知技能でやってこれたが、この先に潜んでいるかもしれない自分の知覚外に潜む敵を察知する為に魔法的手段やスキル的手段も考慮しないといけないなと。
だって俺、幽霊とか見えないしさ。
「今回は仕方ないとして、戻ったら今回の探索で発覚した問題点を早急に改善しないといけないな……」
「ああ、今回の探索では色々と改善点が発覚したからな」
「高速戦闘に拠点作成技能、そして探知能力……本当に色々あるわね」
発覚した課題の多さに頭を悩ませつつ、警戒を密にしながら俺達は階段探しを続ける。
すると48階層の探索を開始して10分後、14体からなるリス?イタチ?アナグマの混成群と遭遇し、戦闘状態に入った。奇襲、狙撃、攪乱、如何に相手の隙をつくかを考えた中々にいやらしい組み合わせである。ただまぁ、連携が甘かったので隙をついて各個撃破するのは容易そうだけどな。
「裕二、イタチ?を頼む。俺はアナグマ?をやるから」
「おう……一人で大丈夫か?」
「大丈夫、さっきの戦闘で要領は掴んでるから」
「そう、じゃぁリス?は任せて」
と言う訳で、俺達は手分けして手早くモンスター達を仕留めていく。裕二にも言ったが、要領は掴んでいるのでアナグマ?を倒すこと自体は問題ない。リス?やイタチ?の動きを警戒しつつ、注意深く地面を観察する。するとほんの僅かだが、アナグマ?が移動していたと思わしきルートを示すように、地面が盛り上がり線になっている。おそらく、攻撃を行う為に、地面の上の方にまで上がって移動したせいなのだろう。
とは言え、本当に僅かな隆起でしかないので、単独や少数での戦闘中に見つけるのは難しいだろうな。今回は完全に背中を任せ合える味方が居て、アナグマ?戦にだけ集中出来る状況だからこそ見つける事が出来た痕跡だ。普通の状況では、攻撃直前の兆候を見つけて対処出来れば良い所だろうな。
「これで、ラストっと!」
「ギュッ!?」
俺は4体目のアナグマ?を仕留め、裕二や柊さんの手伝いをしようと辺りを見回したが……その必要はなかったかと悟る。何故なら既に、二人とも各々の担当分を始末し終わってたから。
まぁ今回の探索で何度も相手した敵だから、もう戦い慣れたよな。
「お疲れさま、無事に討伐できたみたいだね」
「ああ。組み合わせは厄介そうだったけど、相手の連携がなってなかったからそこまでじゃなかったな」
「でも逆に言うと、連携が取れていたら厄介な集団に変わるわ。奇襲からの狙撃、迎撃を阻害するように高速攪乱……言葉にしてみたけど厄介よねコレ」
「「うん」」
連携が取れていないからこそ、各々に担当を割り振ってその敵に専念と言った行動も取れたが、連携が取れていればそれも難しかっただろうな。
地面から飛び出したアナグマ?の奇襲で怯んだところに、狙いすましたかのようなリス?による狙撃が行われ、攻撃を避け迎撃対応しようとすれば足元を高速攪乱されての繰り返し……厄介過ぎるだろ。
「と、とりあえず、ドロップアイテムを回収して先に進もう。今回は色々落ちてるみたいだしさ」
「そ、そうだな」
と言う訳で、俺達はドロップアイテムを回収していく。今回得たのは、コアクリスタルが3つにスキルスクロールが1つ、そしてマジックアイテムが1つだ。
「うーん、このスキルスクロールの中身は“穴掘り”か……」
「トンネルを作るとかじゃなく、穴を掘るだけか?」
「そうみたい。地質に関係なく、同じ感覚で掘れるようになるっぽいよ。まぁ、熟練度が上がればだけど」
「同じ感覚……つまり粘土層の地面でも、砂地みたいな感じで掘れるようになるって事か?」
「たぶん」
有用と言えば有用だけど、使用方法としては土木作業スキルだよな。まぁ熟練度を上げれば、山中や滝の裏に秘密基地を作れるかも?と若干ロマンを感じるスキルだけど。
って、あれ? 高レベル探索者なら、一人でもそこそこの秘密基地を作れないか?
「……」
「? おい、どうした大樹 ジッとスキルスクロールを見つめて……」
「えっ? ああ、いや……ちょっとこのスキル欲しいかなーって」
「……欲しいのか? 穴掘りスキルだぞ?」
「ああ、うん。ちょっとロマンを感じちゃってさ……」
「ロマン?」
俺のロマンと言う言葉に怪訝気な表情を浮かべる裕二に、俺は先程思い浮かんだ“穴掘り”スキルの使用方法を気恥ずかし気に話す。すると……。
「おおっ! 良いな、それ!」
「だろ!?」
馬鹿にされるかもと思っていた裕二の思わぬ賛同を得て、俺は興奮したように語気を荒げる。いやぁ、やっぱりロマンあるよな、秘密基地って!
そして二人で盛り上がり秘密基地歓談をしてみると、“穴掘り”スキルって、俺が持つ“空間収納”スキルとの相性は抜群だったことが発覚する。
「穴を掘って出た残土も、大樹の“空間収納”があれば一切問題なく処理できるぞ!」
「! って事は、本当に誰にも知られる事なく秘密基地が作れるって事か!?」
「ああ! 穴を掘った時に一番面倒なのが、残土処理だからな! それが無くなるのなら、本当に秘密基地が作れるぞ!」
「よっしゃぁ!」
「「じゃぁ、作るか、秘密基地!」」
と、今回の探索で色々と溜め込んだストレスのせいもあってか、俺と裕二は秘密基地建造に大いに盛り上がる。しかし、ここにいるのは俺たち二人だけではない。
突然頭に衝撃が走ると共に、柊さんの冷ややかな眼差しと冷めた口調の声が聞こえてきた。
「二人とも、盛り上がるのも良いけど、ココはダンジョン、敵が潜む森の中なのよ? そう言う話は、外に出てからにしてくれるかしら?」
「「ごめんなさい」」
俺と裕二の頭を槍の石突で叩き、無表情ながら呆れた雰囲気を醸し出す柊さん。俺と裕二は素早く頭を下げながら、謝罪の言葉を口にした。
やばいやばい、柊さんが警戒してくれてたから良かったけど、場所も考えず秘密基地歓談に夢中になってたよ。
「それよりドロップアイテムも回収し終えたし、先に進みましょう。時間が無いわ」
「「は、はい!」」
一言言い残し背中を振り返らずに先へと進む柊さんに率いられ、俺と裕二はバツが悪い表情を浮かべながら慌てて後を追う。
とりあえず、秘密基地歓談は地上に帰るまで御預けだな。
俺と裕二の秘密基地歓談のせいで少々時間を食ったが、探索開始30分ほどで49階層へ向かう階段を見つけた。帰還開始予定時刻までの残り時間は50分……これは行けるかもしれないな。
そしていよいよ俺達は階段を降り、49階層へと足を踏み入れた。
「どうにか時間内に、ココまで来れたな」
「ああ、出発する時は無理だと思ってたんだが……43,44,45を短時間でクリア出来たのが大きかったな」
「そうね。あそこで階段探しに時間を取られてたら、とてもじゃないけどここまで時間を残した状態では来られなかったでしょうね」
40階層帯最後の階層を前にし、俺達は少々感慨深げな心境になった。何せ、無理と思っていた目標達成が目と鼻の先にあるのだから。
とは言え、今気を緩めるのはダメだよな。
「……良し、最後まで気を抜かずに行こう。それに時間内に階段を見つけられなかったら、そこで引き返す事になるしね。喜ぶのは50階層に到達してからにしよう」
「そうだな。気を抜いたせいで最後の最後で、ってなったら虚しいしな」
「じゃぁ早く行きましょう、こうしている時間も惜しいわ。ゆっくりするのは50階層に到達してからにしましょう」
俺達は50階層への階段を目指し、少々足早気味に49階層の探索を開始した。
そして49階層を探索し始めて5分、サル?が木の上から襲い掛かってくる。手には棍棒らしき武器を持っているので、小動物系モンスターより攻撃力は高そうだ。
「今度はサル?、しかも武器を持ってるし」
「気を付けろ、武器を持ってる分間合いが長いぞ。それと伏兵がいる可能性もある、周辺警戒を怠るな」
「……いたわ、向こうの木の上にリス?が隠れて狙ってる」
近接攻撃役が注意を引いて、後方からの狙撃で仕留めるって事か?
「俺がサル?を相手する。大樹はリス?を頼む。それと柊さん、他に伏兵がいないか警戒して。もしいたら……」
「こっちで倒しておくわ」
「頼むよ、行くぞ大樹」
「任せろ」
柊さんに周辺警戒を任せた後、俺と裕二はモンスターに向かっていく。と言っても、俺の方は投げ矢の投擲で直ぐ終わったので、裕二の戦闘の観戦が主だったけど。
そして裕二と対峙したサル?は、俺がさっさと支援役のリス?を倒した事に動揺しているように見えたが、撤退する事は出来ないと悟ったのか棍棒を裕二に向かって上段から全身を使って振り下ろした。すると……。
「うおっ!?」
「キッ!」
裕二が避けた棍棒が地面に当たると、地面が軽く揺れ大きく抉れていた。かなりの威力の籠った一撃だったらしい。当たったら、結構なダメージを負う事になりそうだな。
だが……。
「初撃で当てられていたら、危なかったかもしれないな」
「ギッ!」
初撃を外し慌てて次撃を仕掛けようとしていたサル?の首を、裕二はサル?が動く前に素早く刎ね飛ばし返り血を浴びない様にと距離を取った。裕二に刎ねられたサル?の首は地面を転がり地面に血が流れだす。だが裕二は残心を残しつつ怪訝そうな表情を浮かべながら、サル?の首を刎ねた右手に持った小太刀の様子を窺っていた。
ん、何か気になるような事あったのか?
「お疲れさま、裕二。どうしたんだ、浮かない顔して?」
「いや、サル?の首を刎ねた時の感覚がな……今までのモンスターより少し抵抗感が強かったんだよ」
「……と言う事は、あのサル?が硬かったって事か?」
「それか毛皮が衝撃を吸収する感じになっていたかだ」
つまりあのサル?は、一撃の攻撃力がある上に防御力が高い相手って事か。防御型の近接攻撃役、タンク寄りの役って所かな?
「どうやらあの2体組で終わりみたいよ、伏兵も居ないみたいだしね」
「えっ、あの2体だけで襲ってきたって事?」
「そうみたいよ、威力偵察……って事かしら?」
ここ数階層の傾向を見ると、2体だけでの襲撃と言うのは何かしらの意味があるのでは?と思えてくる。柊さんの言うように、威力偵察をしていたのかと疑いたくなるよな。
となると、この先にモンスターの異種混成群が控えているという事なのだろう。高速攪乱役のイタチ?後方狙撃支援役のリス?奇襲役のアナグマ?……そして防御型の近接攻撃役のサル?と言う組み合わせ。一部隊として考えると、卒が無い組み合わせだな。連携が上手く行くと、かなり厄介な敵集団になりそうだ。
「今まで出てきたモンスターが組んで出てくると、かなり厄介な事になりそうだな」
「ああ、あのサル?が今までの混成群に加わってくるとなると、足止めされてる間に他のモンスターが……って事になるかもしれないな」
「……もしかして今までの連携の拙さは指揮官不在だったのが原因で、あのサル?が指揮官役を担うって事なのかな?」
柊さんの推測に、俺と裕二もあり得るかもと思った。防御型の前線指揮官が粘り強く交戦しつつ、部下を指揮して相手の隙を作り、出来た隙に強力な一撃を加える。サル?を除く組み合わせで足りないと思っていた一撃必殺になりえる攻撃力も、地面を陥没させられるサル?の攻撃力なら十分だ。
という事は、この後遭遇するかもしれない異種混成群は侮れない戦闘能力を発揮するかもしれない。
「うわぁ、最後の最後で面倒な事になってきたな……」
「確かに厄介そうな敵だが、勝てない相手じゃないんだ。今までの様に、相手に連携を取らせる事なく手早く各個撃破していけばいい」
「ええ。連携攻撃が厄介そうだという事は、後方狙撃支援役のリス?とサル?を先に潰せば良いのよ。連携の要さえ潰せば、後は各個撃破出来るわ」
「まぁ、そうなんだけどね……」
俺は後頭部を掻きながら、厄介な敵と遭遇する事がほぼ決まった事に小さく溜息を吐いた。
最後の最後まで楽はさせて貰えないって事だな……。




