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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第14章 夏休みはイベントがいっぱい

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第302話 お盆休みスタート

お気に入り25590超、PV45190000超、ジャンル別日刊49位、応援ありがとうございます。



朝ダン、ダッシュエックス文庫様より発売です。よろしくお願いします。





 ダンジョン探索から戻ってきて少しすると、世間で言う所のお盆休みが始まった。と言っても、夏休み期間中の学生には余り違いは感じないんだけどな?

 まぁ、お盆休みが始まったと言う事で、我が家でも特別な事が……始まっていなかった。 


「……ねぇ、お兄ちゃん? お父さんとお母さんの実家に行くのって、明後日だっけ?」

「ああ、明日までは父さんの仕事があるらしいからな。明後日の朝出発だよ」


 リビングのソファーに寝そべりテレビを見ていた美佳が、気の抜けた暇そうな表情を浮かべながらお盆休みの予定を尋ねてきたので、反対のソファーに座っていた俺はアイスコーヒーをストローで啜りながら、テレビから視線を離さないまま張りの無い声で返事を返した。

 因みに俺達がダラケタ姿で眺めているテレビ番組は、各地の美味いもの紹介特番と言うありきたりなものだ。

 

「そっか……暇だね」

「ああ、暇だな。……あっちに持って行く、お土産の準備でもしてたらどうだ?」

「お土産か……」


 父さんと母さんの実家は然程遠くないので、車を使えば時間も掛からずに回って行ける。

 流石に帰省前にダンジョン探索に行くわけにも行かないからな、ポッカリ時間が空いて暇だ。買い物に行くという選択肢もあるが、燦々と降り注ぐ太陽が肌を焦がす外には出たくないな。エアコンが効いた部屋でアイスコーヒーを啜る、コレは中々に捨てがたいものだ。


「お兄ちゃんは何か用意してるの?」

「俺か? 俺は……ミノ肉を持って行くよ。霜降りの」

「えっ!?」


 美佳は霜降りミノ肉という単語を聞き、今までの怠惰な様子をかなぐり捨て飛び起き、驚愕といった表情を貼り付けた顔を俺に向けてきた。


「ちょっ、お兄ちゃん! それ、何時手に入れたの!?」

「ん? この間裕二達と潜った時に、道を塞ぐミノタウロスを倒したら偶然な」


 30階層に向かう通り道にミノが現れ邪魔だったので、何時も通り淡々と倒したら霜降り肉がドロップしたのだ。久しぶりに霜降りミノ肉がドロップしたので、テンション上がって裕二と柊さんの目も輝いてたっけ。

 因みにジャンケン決戦の結果、今回の霜降りミノ肉は俺が貰った。


「偶然って……ああっもう! それはいいや、それはそれとして、どうして霜降りミノの肉を手に入れたって教えてくれなかったの!」

「ん? いや、別に言わなくても良いだろ?」

「で、でも、霜降りミノ肉なんだよ!?」

「どうした? そんな必死になって……」


 美佳は微妙に焦ったような表情を浮かべ、何か言い辛そうに言葉尻を濁す。

 そして暫く無言で見つめ合っていると、美佳は躊躇しつつ口を開く。


「だって、アレ美味しいし……」


 言い終わると、美佳は恥ずかし気に顔をそらした。つまり、霜降りミノ肉を食べたかったと言う事だな。確かに霜降りミノ肉は1度味わうと、また食べたくなる味だ。店で買うとしても、霜降りミノ肉は今でもかなり高いしな。

 目に届く範囲で食べられる機会があるなら、そりゃ逃したくないか。

 

「ミノ肉は向こうに持って行くんだから、向こうで食べれば良いじゃ無いか?」

「でもそうなると、食べられる量が減るし……」

「まぁ、皆で分けるだろうからな……」


 普通のミノ肉なら一杯在庫はあるが、霜降りミノ肉はそんなに在庫無いからな。親戚皆で食べるとなれば、切り分けたら一人一切れに成る可能性は高い。味を知っていれば、一切れじゃ物足りないか。

 今度、霜降り肉求めてミノ狩りするかな? 今回は譲って貰ったから、裕二や柊さんの分も確保しないといけないしな。


「ううっ……」

「そう残念そうにするなって、今度手に入ったら食べさせてやるよ。と言っても、何時になるかは約束出来ないけどな」


 乱獲しないでコツコツ遭遇したミノを相手にしていたら、ホント何時になるか分らないけどな。

 俺は何時果たせるか分からない約束を美佳と交わしながら、コーヒーを啜りつつテレビを眺めた。






 父さんのお盆前の仕事も終わり、本格的にお盆休みに入った我が家では帰省の準備が進められていた。と言っても今回は曜日の関係で盆休み期間が短いので、それほど長居する計画ではない。

 父さんと母さんの実家に顔を見せて回るだけの、二泊三日の短い帰省旅だ。


「大樹。本当にコレ、お土産に持って行って良いの?」

「うん、良いよ。そのつもりで用意してたから」

「そう、ありがとう。とは言っても、お土産にコレって大丈夫かしら?」


 母さんは俺が渡した、霜降りミノ肉を眺めながら少し困り顔を浮かべていた。まぁ、お土産って言うには中々に高価な品だからな。オマケに霜降りミノ肉の塊だけでは2家分には少ないと思ったので、通常のミノ肉も出しているので市場価格で金額換算すると偉い事になる。

 このミノ肉の塊一つでも、出す所に出したらウン万円する品だからな。


「焼き肉用に切り分けて、お土産って言って渡せば直ぐ消費してくれるんじゃないかな?」

「そうかしら……」

「たまの帰省のお土産なんだから、奮発したって言えば良いよ。それに現地直送だから、店で買うより元手は掛かってないしさ」

「そう、ね」

「じゃぁ、後は頼むね」


 微妙に納得したようなしてないような表情を浮かべながら、母さんは俺が渡した塊肉を切り分けていく。うん、肉盛り一皿で幾らになるんだろうな、コレ? 俺は金額についてはもう考えないようにして、切り分け作業をしている母さんに一声掛けて台所を後にした。

 そして俺はリビングに移動し、ソファーに座りテレビを見ている父に声を掛ける。


「父さんの方は準備良いの?」

「ん? ああ大丈夫だ。と言っても、母さんが既に用意してくれているから、特にコレと言って用意する物は無いんだけどな。大樹は?」

「俺の方も準備出来てるよ、特に用意する物も無かったしね」


 お土産用のミノ肉も、母さんに任せたので上手くやってくれるだろう。

 

「そう言えば大樹? 父さんと母さんには、お前達が探索者をやっているって事教えていたっけ?」

「えっ? ああ、そう言えばお爺ちゃん達には言って無いかな? 去年の盆は探索者やってなかったし、正月いってないから」

「そっか……一応伝えておいた方が良いと思うぞ?」

「ああ、うん。そうだね……」


 ダンジョンブーム真っ最中の今なら、時期的に俺と美佳が探索者をやっていると教えても問題ないだろうけど……何か一言くらい言われそうだ。

 特に父方の祖父母は、美佳に結構甘かったからな。


「美佳のヤツは、探索者を辞めろって言われそうだな」

「そうだな。父さんも母さんも、美佳の事を猫可愛がりしてたからな」


 俺と父さんは黙り込み、暫し無言で互いの顔を見つめ合った後頷き合う。

 まぁ、成るように成るだろうと。


「まぁ、行ってからの事だな」

「そうだね。行ってみないと分からないよね」


 俺は父さんと何とも言えない表情を浮かべあった後、リビングを後にし自室に戻る事にした。明日は長距離運転をして貰うので、今夜はユックリ休んで貰わないとな。

 そしてリビングを後にして部屋に戻る途中、俺は部屋の扉の前で美佳と鉢合せした。


「あっ、お兄ちゃん」

「ん、どうした?」

「ねぇ、お兄ちゃん。チョット相談があるんだけど……」


 美佳は申し訳なさげな表情を浮かべながら、俺を部屋に連れ込んだ。明日持っていく荷物の準備をしていたらしく、床にはバッグと荷物が広げられていた。


「で、相談ってなんだ?」

「えっとね。この間のイベントの話を麻美ちゃん達にも教えてたの。そうしたら、さっき返事のメールが届いて……」

「館林さん達に? で、何て返ってきたんだ?」

「私達も行ってみたいって。皆の話について行く為にも、探索者がしてる事を少しでも知りたいって言ってた。だからお兄ちゃん、麻美ちゃん達も今度のイベントに同行しても良いかな?」


 どうやら、今度あるイベントに興味を持ったらしい。まぁ入社希望者を集める企業の宣伝がメインのイベントだが、探索者の事を知るには丁度良いイベントかもしれないな。

 ダンジョン食材を使った屋台も出るし、美味いもの巡りだけでも楽しめるだろう。


「ああ良いと思うぞ、ちゃんとイベントの開催日時を連絡しておけよ?」

「大丈夫、それはもう連絡してあるよ」

「まっ、そうだよな」


 お盆直後に開催されるイベントに参加希望という事は、少なくともスケジュールに空きがあるから参加したいと言ってきてるって事だもんな。開催日時くらいは当然伝えてるか。

 まぁ兎も角、俺が了承した事で美佳はホッとしたような表情を浮かべていた。


「でも良かった、麻美ちゃん達に駄目って言わなくてすんで」

「ん? 何か、そんなに気になる事があったか?」

「うー、えっとね。どうも麻美ちゃん達、ウチの部の中で自分達だけ探索者資格を取ってない事を気にしてるみたい」

「館林さん達が?」


 美佳の話を聞くに、どうも館林さん達は自分達が探索者資格を持っていないのに、ウチの部に所属している事に罪悪感のような物を感じているらしい。夏休みに入った事で、美佳達とは別の友達が探索者に成る事が増え余計に気になる様になったとの事だ。

 確かに周りが僕も私もと続々と探索者になり始めれば、今のままで良いのかと焦りもするよな。


「ちょっと前なら、麻美ちゃん達もどう?って気軽に言えたんだけど……」

「この間の件か?」

「……うん。あんな場面を見ると、流石に、ね?」

「まぁ、そうだろうな」


 美佳は気まずげな表情を浮かべ、何とも言えない雰囲気を醸し出しながら顔を俯かせた。当然の事だが、川原さんの件は衝撃的だったらしい。自分の意思で行くか周りの雰囲気に流されていくか、どちらでもダンジョンに行くという結果に大きな違いは無いが、その決定の過程の差が致命的なまでに大きくなる事があると知ったら、気軽に探索者になろうよとは口に出来ないからな。

 探索者として経験を積み周りを見渡す余裕が出来たからこそ、今までと同じように振る舞う事が出来なくなる。これも、成長と言えば成長なんだけどな……。


「麻美ちゃん達がイベントに一緒に行けるってのは嬉しいけど、イベントを見ただけで探索者になるって言わない様に、私達も教えられる事は教えるよ」

「俺達より、美佳達の方が距離は近いからな。今度行くイベントは企業が自社に入る人を集めようってイベントだから、都合の良い所を強調して伝えてくると思う。流されて探索者にって事にならないように、伝えられる事は伝えてやってくれ」

「うん」


 頷く美佳の目は、確りとした覚悟の色を宿していた。






 眩しいばかりに輝く朝日が昇り、徐々に周りの気温が上がり始めた。余り晴天だと肌がジリジリと焼けるので曇りぐらいが丁度良いのだが、空は雲一つ無い清々しいまでの晴天だ。

 そんな正に夏の空と言わんばかりの下、俺は車に荷物を積み込んでいた。


「大樹、コレも積んで置いて。あっ、保冷剤は多めにね」

「了解」

「お母さん、コレも持って行って良い?」

「ええ。邪魔にならないだろうし、良いわよ」


 荷物は然程多くなかったので、車への荷積みは短時間で終わった。お盆で車が多く所々渋滞も起きているので、今から出発してお昼前に到着といった所だろうか?

 そんな事を思って居ると、戸締まりの確認をしていた母さんが出て来て俺達に声を掛ける。


「皆、お待たせ。出発するわよ」

「はーい」

「了解」

「よし、じゃぁ出発しよう」


 と言うわけで、皆で車に乗り込み父さんが運転する車は動き出す。

 移動は割とスムーズに進み、長い渋滞に捕まる事も無く、ほぼ予定通りと言った感じで目的地に到着した。先ず到着したのは母さんの実家で、住宅街に立ち並ぶ二階建ての一軒家だ。


「やっと着いたわね。ここに来るのも、久しぶりだわ」

「去年のお盆以来だから、一年ぶりかな?」

「ええ。お正月は美佳が受験生って事もあって、来れなかったから一年ぶりね」


 車を降りた母さんは懐かしげに実家の家を眺め、父さんは家前の駐車スペースの確認をしている。

 因みに、俺と美佳はというと……。


「うーん、疲れた。ここに来るのも久しぶりだね」

「そうだな」

「お姉ちゃん居るかな?」

「盆休み中だしな、大学も休みだろうし帰省してるんじゃないか?」


 車を降りた俺と美佳は長時間乗車で凝った体を伸ばして解しながら、母さんの実家を眺めながら大学に通う親戚のお姉さんの在宅の有無を気にしていた。

 因みにお姉さんは、今年大学二年生で今は県外の大学に通っている。


「二人とも、そんな所にいないでこっちにいらっしゃい」

「「あっ、はーい」」


 玄関のチャイムを押している母さんに呼ばれ、俺と美佳は慌てて駆け寄る。

 そしてチャイムが鳴り数秒後、玄関の扉が開き母さんとよく似た女性が出て来た。


「いらっしゃい美春、お帰り」

「ただいま、姉さん」


 出迎えてくれたのは母さんのお姉さんで、俺と美佳の伯母さんだった。
















盆休みでお土産(霜降りミノ肉)持って親戚周り……歓迎されますよね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらずナチュラルに兄のものは自分のものって思ってるねー妹ちゃん。
[気になる点] 父(親)と子の会話で、自分の子と会話してるときに自分(父親)の親を父さん、母さんとは言わないかな? 普通に、爺さん婆さんorお爺ちゃんお婆ちゃんって言わないかな? 子が産まれると、近い…
[一言] 次は企業イベントかと思わせておいて普通にお盆の帰省が入る所が朝ダンクオリティですねぇ…w 久々に主人公達以外の一般家庭目線からのダンジョンや冒険者に対する意識が窺い知れる機会ですね。 従姉…
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