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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第12章 夏休みはダンジョンへ

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299/650

第263話 視線って……一種の精神攻撃だよな

お気に入り21900超、PV32570000超、ジャンル別日刊31位、応援ありがとうございます。



朝ダン、ダッシュエックス文庫様より発売中です。よろしくお願いします。







 コボルト達の死体が消え全滅した事を確認し、恐る恐る他のパーティーの方を振り返ると予想通りの表情と眼差しが俺達に向けられていた。

 すなわち、驚愕と恐れの感情だ。

 

「「「……」」」

「「「……」」」


 暫し俺達と他のパーティーは無言で睨み合い……見つめ合っていた。どちらとも、何と話を切り出して良いか分からないと言った状況だからだ。

 しかし、受けた衝撃の度合いで言えば、初めから行動後の相手の反応を予測していた俺達の方が軽い、よって……。


「よ、よぉし。皆、怪我をせずに片付けられたな」

「あ、ああ。この位なら、まぁな」

「え、ええ、そうね。それよりアイテムを回収して早く撤収しましょう、襲撃があったとは言え今は休息の時間だもの」

「そうだね、サッサと回収して寝直そうか」


 緊張で少々言い淀みながらも、俺達は出来るだけ軽い口調で他のパーティーに会話の内容が聞こえるように若干大きめの声で話しをする。

 いきなり集まってくるなよと言う意味合いを込めた、他のパーティーへの牽制行動だ。今の戦闘を見た直後の冷静さを欠いた状態だと、考えが混乱していて質問自体が支離滅裂になり下手をすれば喧嘩騒ぎになりかねないからな。質問をしに来るにしても、パーティー内で話を纏めてからにして欲しい。 


「「「……」」」


 俺達の牽制が効いたのか、驚愕の状態から復帰した他のパーティーはザワついているものの、俺達の方に質問をしに突撃をかけてくる者は出なかった。とは言え休憩明け、もしくは撤収中に話し掛けてくるだろうな。

 そんな事を思いつつ、俺達はコボルト達からドロップしたアイテムを回収していく。すると、そんな中に……。


「おっ、これは……マジックアイテムか?」

「かもしれないな。見た目は……鉛筆ポイな」

「何に使う物なのかしら?」


 コボルトがドロップしたアイテムの中に、表面に幾何学的な文様が彫り込まれた鉛筆らしき物があった。俺の“解析鑑定”を使えば直ぐに正体は判明するのだが、他のパーティーが見ているので使うのは控えている。バレるとは思わないが、念の為だ。

 お陰で、このアイテムがどう言った物なのか分からず俺達は頭を捻る。


「鉛筆っぽい見た目をしてるんだから、何かを書くのに使う物だとは推測出来るけど……」

「使ってみれば分かる……とはいかないからな」

「そうね。このアイテム、見た限り消耗品系のアイテムポイものね。1回使ったらお終い、って事もありそうだわ」


 このアイテム、両端の片方だけ2㎝ほど文様が刻まれておらず、この部分を削って使用しろと暗に言っているように見える。となると、柊さんの言うように一回使用してお終いという可能性は十分にあった。

 まぁ、マジックアイテムとは言え複数回使えるとは限らないと言う事だな。


「たぶん、そうだろうね。じゃぁ、このまま持ち帰って鑑定待ちか……」

「だな。正体が分からないから、幾らになるか期待半分って所だな」

「良いモノだったら、打ち上げが豪華になるわね」


 アイテムの高額買い取りを期待し、楽しげな会話をしているように見えるようにアピールしておく。正直に言うと、今更マジックアイテムが一つ増えたところでそれほど嬉しくはないが、他のパーティーが見ている以上それなりのアピールは必要だ。

 高額買い取りが期待出来るマジックアイテムを獲得したのに、喜びの声も上げずに淡々とした態度で回収する高校生……うん、色々な意味でアウトな光景だな。


「よし、コレで最後っと」

「今回は、結構ドロップ率良かったな。17体中9体が、アイテムをドロップしたぞ」

「内一つはマジックアイテムだったから、大収穫ね」


 とは言っても、9個中7個はコアクリスタルだったので、マジックアイテムがドロップしていなければトホホな結果になってただろうけどな。コボルトを10体以上倒して得られた対価が数千円から数万円程度……うん、割が合わない事この上ない。

 

「じゃぁアイテムの回収も終わった事だし、サッサと寝直そう。ユックリ体を休めない事には、疲労も抜けないからな」

「そうね。ごめんなさいね広瀬君、この後の夜番も御願いするわ」

「問題ないよ。俺は先に十分休ませて貰ってるから、二人もユックリ体を休ませて置いてくれ」


 アイテムの回収を終えた俺達は、未だに俺達への反応に戸惑っている他のパーティーに向け軽く会釈をした後、声を掛けられる前に俺と柊さんは陣幕の中へと足早に退散した。夜番の裕二を外に残して。

 悪い裕二、暫く他のパーティーからの視線に耐えてくれ。






 俺を呼ぶ声が聞こえ、瞬時に意識が覚醒した。2度も襲撃があったので、またかと思いつつ体を起こしつつ周囲の気配を探ってみたが、モンスターらしき気配は感じ取れない。

 不思議に思い首を捻りつつ周囲を見渡してみると、若干疲れた表情を浮かべた裕二が陣幕の中に顔だけを入れ此方を見ていた。


「おはよう、大樹」

「ああ、おはよう裕二。……もう時間?」

「ああ。それより、起きたのなら朝食の準備をはじめよう」

「あ、ああ……分かった」


 俺が起きたのを確認し、裕二は顔を陣幕の外に引っ込めた。そっか、もうそんな時間か……じゃぁ早く動き出さないといけないな。

 俺はベッドから起き上がり、背伸びをして体の凝りを解す。


「直寝に比べればマシだけど、やっぱり簡易組み立てベッドだと体が凝るな」


 簡易組み立てベッドでも、価格が高い造りの確りした物なら話も変わるのだろうが、在庫処分で投げ売りされていた安物だと寝心地も程々だった。コレを教訓に、それなりの物に買い換えようかと思ったが、襲撃された場合は回収出来ずに破棄する可能性が残る以上、高価な一品物の採用には二の足を踏む。

 ウン万円のベッドを、モンスターに襲撃される度に破棄する……手痛い出費だよな。


「あっ、柊さん。おはよう」

「おはよう」


 首の運動をしながら物音がした方を見てみると、先に目が覚めていたらしい柊さんがベッドの片付けをしていた。テキパキとした動きを見るに、寝ぼけているような雰囲気はない。

 ああ、一足出遅れたかな?


「ほら九重君。朝食の準備もしないといけないんだから、九重君もベッドを片付けてスペースをつくってよ」

「あっ、うん。ごめん」


 俺は急いでベッドを片付け、10分ほどで調理スペースを確保した。まぁ調理と言っても、お湯を沸かす事なんだけどな。

 そして“サイレントウォール”を使って遮音した後、昨日と同じように柊さんにアルミ鍋に水を出して貰いインスタントバーベキューコンロに火を着ける。柊さんが水を出せる事は既にバレているけど、ダンジョン内で“サイレントウォール”の使用を習慣づける為にも毎回掛ける事にした。それと……。

 

「裕二、朝食の準備をしているんだけど、牛丼・親子丼・中華丼……どれが良い? って……」


 陣幕から顔を出し、裕二に朝食で食べるメニューを聞こうとしたのだが……思わず絶句してしまった。

 針の筵……正に俺達の陣幕に向けられている視線を表すには、この表現が適切だろう。俺が夜番をしていた時より、更に注目の眼差しが酷くなっている。


「ん? ああ、大樹か」

「……ええっと、裕二? もしかしてあの後からずっとこの調子なのか?」

「ああ。いやぁ、人気者は辛いなぁ……」


 俺に気付き振り向いた裕二は、妙に穏やかで達観した表情を浮かべていた。

 ……ごめん裕二、何か色々お疲れ様。


「それより、何が良いかだったな? そうだな……親子丼で頼むわ」

「ああ、分かった。親子丼な。準備出来たらまた声を掛けるから、もう少し待ってくれ」

「了解」


 俺は内心で裕二に必死に頭を下げ謝りながら、他のパーティーからの視線を避けるように陣幕の中に顔を引っ込めた。

 拙い拙い、裕二の為にも早く朝食の準備を進めないと……。


「どうしたの九重君、そんなに血相を変えて……」

「ああ、柊さん。ごめん、出来るだけ朝食の準備を急ごう」

「? 別にそんなに急がなくても……あっ、もしかしてモンスターが近付いてきてるの?」

「そう言う訳じゃないんだけど、ある意味モンスターの襲撃よりタチが悪いかも……」

「?」


 俺の歯切れが悪い言葉に、柊さんは首を傾げる。まぁ、コレだけで事情を察しろというのは酷だよな。俺は困ったような表情を浮かべながら、柊さんに先程見た陣幕外の様子と裕二の状態を話す。

 すると話を聞いた柊さんは、顔を顰め溜息を漏らした。


「成る程、陣幕の外はそんな状況になっているのね」

「うん、だから早めに準備をすませようって言ったんだ」

「確かにそんな状況じゃ、外には居づらいわよね。じゃぁ、出来るだけ急ぎましょう」


 とは言っても、規定された時間は湯煎するのに必要なわけで、そこまで早くは出来ないんだけどな。でも、他の準備は進められるのでそちらを急いだ。 

 そして十数分後、朝食の準備が整った。


「「「いただきまーす」」」


 陣幕の外で夜番をしていた裕二を中に呼び戻し、3人揃って食事を始める。見張りを立てていなくても良いのかと言われそうだが、モンスターの襲撃なら食事中でも察する事は出来るので問題ない。むしろ問題は、俺と柊さんが食事をしている最中に裕二が他のパーティーからの視線に晒され続けているという精神的負担の方だろう。無論、そんな視線に晒され続ける事になる裕二の精神的負担は言うまでも無い。


「……美味いな」

「「……ああ、うん。そうだな(ね)」」


 疲れた表情を浮かべながら心底美味しそうに親子丼を食べる裕二の姿を見て、俺と柊さんは何とも言えない表情を浮かべながら相槌をうつ。むしろ他に、どんな言葉を掛ければ良いのか分からないよ。

 この親子丼を食べている姿を見るだけで、夜番でどれだけ裕二が心労を抱えたのか慮れると言うものだ。本当にお疲れ様である。


「ああ、ええっと、裕二? これ食べるか?」

「その、広瀬君? 良かったら、これも食べてよ」


 俺と柊さんは、付け合わせのデザート、羊羹を裕二に勧めた。因みに、俺と柊さんが渡したのは、芋羊羹と栗羊羹である。甘味で一息ついて、心の平静を取り戻してくれれば、良いのだが。


「ん? ああ、ありがとう二人とも」


 穏やかな表情でお礼を言う裕二の姿に、そこはかとなく哀愁を感じさせる。

 そんな少々据わりが悪く、居心地の悪い朝食の時間は粛々と過ぎていった。 






 朝食をすませ陣幕の撤去などの出発の準備を進めていると、漸く意を決したのか2つの企業と大学生パーティーのテントの方から数名ずつ歩み寄ってきた。その近付いてくる人達の顔には困惑と緊張、そして畏怖の感情が張り付いていた。

 そんなに緊張しなくても、取って食ったりしないよ。


「予想通り、3パーティーとも来たな」

「そうだな。まぁ、当然と言えば当然か」

「相手を深く探るのは御法度でも、簡単な情報は知っておきたいでしょうしね」


 3つのパーティーは俺達にそこそこ近付いたところで立ち止まり視線で互いを牽制し合った後、波佐間商事の馬場さんが代表し少し固い声で話し掛けてきた。


「ああ、ええっと、出発準備で忙しいところすまない。少し話をする時間を貰っても良いかな?」

「……ええ、大丈夫ですよ」

「ありがとう」


 俺が代表し馬場さんに返事を返すと、馬場さんはホッとしたような表情を浮かべた。

 そして軽く咳払いをして表情を引き締めた馬場さんは、俺達に向かって質問を投げかけて来る。


「マナー違反な行為だと言う事は承知の上だけど、君達に聞いておきたい事があるんだが……良いかな?」

「質問の内容にもよりますが、何となく内容は察せますので大丈夫ですよ」

「すまない、ありがとう。私達が聞きたい事は2つ、襲撃を掛けてきたコボルトとの戦闘に関してだよ」

 

 そう言って、馬場さんは右手の人差し指を立てる。


「質問の一つ目は、最初に襲撃を掛けてきた、コボルト達の行動についてだね。アイツらは何故、君達との戦闘を避けたんだい?」

「さぁ? 正直に言って、俺達にも原因は分かりません。コボルト……モンスターがあんな行動をしたのは初めてでしたから」

「えっ、そうなのかい? 俺達の中では、君達がスキルやアイテムを使ってコボルト達との戦闘を避けたと推測していたんだけど……」


 俺達というのが馬場さんのパーティーだけを指すのかと一瞬思ったが、俺達に向けられる視線から他の2つのパーティーも同じ推論を持っていたらしい。

 まぁ、そう思うのは無理ない状況だったけどな。


「残念ながら、そう言った類いのスキルやアイテムは持っていませんね。だから余計に、何でコボルト達が俺達を避けたのか分からないんですよ」

「そうか……」


 馬場さん達は原因が分からず残念と言った素振りを見せているが、本心はどうなのだろう? 内心では、俺達が有用な情報を隠しているのではと思ってるのではないのだろうか。

 少々場の空気が悪くなってきたので、俺は場を和ませるジョークをぶち込む事にした。


「ああ、そう言えば夕食にカレーを食べていたので、ヒョッとしたらカレーに含まれるスパイスの刺激的な匂いが嫌で寄ってこなかったのかもしれませんよ? ほら、コボルトって犬系の顔立ちしてますし」

「ははっ、流石にそれは……」 

「ははっ、やっぱりそうですよね」

「「ははっ」」


 俺の発したジョークはダダ滑りし、互いに苦笑いを浮かべながら乾いた笑い声をあげた。

 まっ、まぁ悪い空気は払えたから一応成功……かな? 
















ただ見られているだけでも、意外と精神的には参りますよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] バカか? 自分たちより明らかに格上だとわかった段階で針の筵になるレベルの視線は向けないでしょ。 作者はヤンキーをガン見するんか?
[一言] これはキレていいよ 人が良すぎるな 相手によっては妨害行為判定で暴力沙汰になっててもなんらおかしくない 多少意趣返しが欲しい 迷惑かけられたって企業勢の悪評バラ撒くとか
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