表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第10章 注目株って響きは良いけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

248/650

第221話 ダンジョン探索は終了したんだけど

お気に入り18190超、PV21860000超、ジャンル別日刊61位、応援ありがとうございます。







 帰還開始を知らせる時計のアラームを止めた後、俺達は来た道を引き返し始めた。まぁ最短ルートで帰還すると、予定時間を大幅に下回るので適度に寄り道(モンスター討伐)をしながらだけどな。

 っと言っている内に、早速おでましか。


「9体か……じゃぁ今回は私が行くわ。3体通すから、頑張って倒してね」

「は、はい!」


 沙織ちゃんに一声掛けた後、柊さんは槍を構えながらユッタリとした足取りで威嚇するゴブリン達に近付いていく。特に気負いした様子も見えず、平静そのものだ。

 そして柊さんの槍の間合いにゴブリン達が入った瞬間、柊さんの槍を持った腕が一瞬ブレると3体のゴブリンが宙を舞った。


「いったわよ、頑張って」


 宙を舞ったゴブリンは沙織ちゃんの前に落ち、落下の衝撃で咳き込んではいるが特に外傷は見受けられない。力尽くでゴブリンを弾き飛ばしたのでは無く、上手い具合に掬い上げ放り投げたようだ。

 そして柊さんは残った6体のゴブリンを相手に、直ぐに倒さない様に気を付けながら丁々発止の戦闘を始めた。 


「はっ!」


 沙織ちゃんは立ち上がったゴブリンが体勢を整えきる前に、一番近いゴブリンに目掛け槍を繰り出した。多数対一の戦闘訓練とは言え、あからさまな隙を見せている敵に何も手出ししないと言うのは無いからな。先ずは確実に一体を仕留めておくのは、悪い手ではない。

 そして沙織ちゃんが繰り出した槍は何の抵抗も受ける事なく、狙い通りゴブリンの眉間を貫いた。


「!?」

「「ギッ!?」」


 落下の衝撃から立ち直り現状把握に努めていた残り2体のゴブリンは、突然仲間の頭が貫かれ血を吹き出した光景に驚愕の声を上げる。まぁ、いきなり仲間の後頭部から大量の血と共に槍が突き出てきたら驚くよな。

 そして、慌てた様子で周囲を見渡し仲間の頭を貫いた槍の持ち主……仲間を殺した下手人である沙織ちゃんの姿を視認し、直前に自分達を弾き飛ばした柊さんの事も忘れ沙織ちゃんに血走った眼差しを向け怒りの咆哮を上げた。


「「ギギッ!」」


 残ったゴブリン達は完全に沙織ちゃんを敵と認識したらしく、棍棒を振り上げながら沙織ちゃんに飛び掛かった。連携も何もあった物ではないが、ゴブリン達の目には仲間の敵討ちという明確な殺意が宿っている。正に鬼気迫る気迫と言った様相で、気が弱い者であれば体が硬直し一歩も動けなくなるだろう。

 だがそんな威圧に晒されても沙織ちゃんは、何の支障も感じさせない動きで即座に迎撃行動に出た。


「えいっ!」

「ギッ!?」

 

 槍で頭を貫いたゴブリンの体に前蹴りを放ち、槍を引き抜きながら飛び掛かってきたゴブリンの一体に死体をぶつけ打ち落とす。即座に倒したモンスターの死体を迎撃に利用するなんて、沙織ちゃんも大分多対一の戦闘にも慣れてきたみたいだな。

 そして沙織ちゃんは、即座に引き抜いた槍をもう一体の飛び掛かってきているゴブリンに繰り出す。ゴブリンの死体を蹴って、槍を引き抜いた反動を上手く打ち消しているから出来る上手い反撃だ。


「!?」


 沙織ちゃんが迎撃に繰り出した槍はゴブリンの胸の中心を深く抉り、ゴブリンの胸と口から大量の血が溢れ出す。うん、あれは確実に致命傷だな。

 そして沙織ちゃんは無理にゴブリンを貫こうとはせず、力を逃しながら槍を縦方向に回転させゴブリンを地面に叩き付けつつ頭を蹴り抜き首の骨を蹴り折った。致命傷を与えたからと油断せず、確実にトドメを刺すか……。今回は相手が少ないからそれでも良いが多対一戦の場合、相手を行動不能に出来たらトドメを刺すより残りの敵を相手にする事を優先すると言う判断をした方が良い場合もあるって事を教えて置いた方が良いな。


「やっ!」

「ギッ!?」


 そして沙織ちゃんは残った一体……仲間の死体の下から這い出ようと藻掻いていたゴブリンの喉に槍を突き刺し捻る。するとゴブリンは一度大きく痙攣した後、槍を抜こうと伸ばした手から力が抜け動かなくなった。


「あら? もう終わったの? じゃぁ、此方も直ぐ片付けるわね」


 沙織ちゃんの戦闘が終わった事を察し、丁々発止の戦闘を続け3体までゴブリンを減らしていた柊さんは、沙織ちゃんに一声声を掛けると決着を付けようと動き出した。バックステップでゴブリン達から少し離れると、手にした槍を大きく引き一呼吸入れ大きく踏み込みゴブリン達との間合いを詰める。

 そして次の瞬間、槍を持った柊さんの腕がブレたと思うと同時にゴブリン達の頭が宙に飛ぶ。一瞬で3体の首を貫いたらしい。


「おまたせ、終わったわ」


 立ったまま血を吹き出しているゴブリンを背に、柊さんは疲れた様子も見せずに俺達の方へと戻ってきた。まぁゴブリンが相手じゃ、疲れるまでもないよな。









 ゴブリン達の粒子化が終わると、柊さんと沙織ちゃんがドロップアイテムを回収していく。すると、今回はその中に当たりが混じっていた。

 それは、マジックアイテムである解体ナイフだ。コレは今でもそこそこの値段で買い取って貰えるので、低階層帯のドロップ品としては当たりの部類だ。


「良かったわね、沙織ちゃん。これ、売ればそこそこの値で買い取って貰えるわよ?」

「えっ、本当ですか?」

「ええ。もし売らなかったとしても、コレを倒したモンスターに突き立てれば食材系のアイテムをドロップするから、今までみたいにモンスターを倒したのに何もドロップアイテムが出ないと言う事が無くなるわよ。……と言っても、低階層帯のモンスターがドロップするお肉は、今の所余り高額で買い取って貰えないからかなりの数を採取しないと儲けは出にくいんだけどね」


 柊さんが解体ナイフの事について教えると、沙織ちゃんは微妙な表情を浮かべる。まぁ、1個100円とかで買い取られる肉だからな。長期運用して利益を出すより、売ってしまってそこそこの一時金を手にした方が良いかもと思うのは無理もない。せめて10階層以降……オーク肉等を手に入れられる様になれば、売らずに解体ナイフを保有する意味も出てくるんだろうけどな。今の沙織ちゃん達の段階だと……売って活動資金に回した方が良いかもしれない。

 そして柊さんと沙織ちゃんが解体ナイフの扱いについて話していると、美佳が俺の袖を引っ張りながら興味津々と行った眼差しを向け尋ねてきた。


「ねぇ、お兄ちゃん。アレって、本当に当たりなの?」

「昔は低階層帯のモンスターが落とす肉でも、結構な値で買い取ってくれていたから、解体ナイフも当たりアイテムだったんだけどな」

「ああ。でも今だと、解体ナイフを使うと食材系アイテム以外が出なくなるからって、食材を専門に集める探索者や企業以外は積極的に使わないな」

「……つまり?」

「アイテムを拾った探索者の探索スタイルによって有効活用出来るアイテムにも成るし、単なる換金アイテムにも成る品だな。まぁ、今のお前達なら換金アイテムにした方が良いんじゃ無いか?」


 当初の柊さんには垂涎のアイテムだったが、今では単なる一換金アイテムだからな。モンスターを倒して1つ1つ肉を採取するより、深く潜って高レベルモンスターを倒し得たドロップアイテムを売却した益で業者から大量購入した方が効率が良い。

 まぁ、霜降りミノ肉狙いの時は話は別だけどな。アレは解体ナイフを使って、食肉ドロップの数を熟さないとまず出ない。誰だよ、物欲センサー切れないのは……って全員か。


「そうですか……じゃぁ今回は換金に回す事にします」

「そう」


 どうやら、柊さんと沙織ちゃんの話し合いが終わったようだ。今回は、換金に回す事にしたらしい。

 まぁ、妥当な判断だろうな。 








 途中途中でモンスターと戦いながらダンジョンを引き返した俺達は、本来の帰還予定時間より少し早めにダンジョンを出る事にした。午後になり、低階層帯で活動する人が多くなったせいで遭遇するモンスターの量が減ったと言う事も有り、窓口が混む前に換金する事にしたのだ。

 

「ふぅ……お疲れ様。今日の探索は如何だった美佳、沙織ちゃん?」


 ダンジョンの入り口を出た俺は、美佳と沙織ちゃんにダンジョン探索の感想を聞いてみた。


「うーん、流石に連続で潜ったからちょっと疲れたかな?」

「そうか……沙織ちゃんは?」

「私も美佳ちゃんと同じで、少し疲れた感じです。でも……」

「でも?」

「昨日に比べ、ゴブリンを倒しても精神的には大分マシになりました」

「そっか……美佳はそのへんどうだ?」


 まだゴブリンを倒した事を振り切れないようで、沙織ちゃんは若干引っかかりを覚えているような表情を浮かべている。だが、昨日のダンジョン探索終了直後よりは大分平常に近い表情を浮かべているので、本人が言うように大分マシなのだろう。

 そして俺は沙織ちゃんに向かって軽く頷いた後、顔を少し横にずらし美佳に精神面の負担は大丈夫かと聞いてみた。すると……


「私は……まだちょっと慣れない、かな?」

「そうか……」


 昨日よりはマシだが、美佳は若干顔を強ばらせながら“まだ慣れない”と答えを返してきた。まぁ俺達も慣れるまで時間が掛かったので、昨日の今日で慣れろとは言えないよな。ある程度時間を掛けて、自分の中で考えと気持ちを整理し消化する必要があるしさ。

 俺はヘルメット越しに軽く美佳の頭を撫で、急いで考えと気持ちを決める必要は無いと慰める。


「まぁ、何だ? 今回は休みの都合で連続でダンジョンに潜ったけど、次に潜るのは早くても一週間後だ。急がず、ユックリ自分の中でその気持ちを消化すれば良い。何か相談したい事があれば、遠慮無く俺に相談すれば良いからさ。余り自分の中で溜め込みすぎず、吐き出したい時は愚痴を吐き出せよ」

「……うん。ありがとう」


 そして美佳の頭を撫で慰めながら、俺は沙織ちゃんにも美佳と同様に声を掛ける。


「沙織ちゃんも何か相談したい事があったら、遠慮せずに声を掛けてくれて良いからね。幾ら大分マシになったと言っても、全く影響が無いって訳じゃ無いからね。人に愚痴を吐き出すだけでも、随分精神的には楽になるからさ」

「はい。ありがとうございます」


 沙織ちゃんは既に自分の中である程度折り合いが付いているように見えるが、それが別の意味で心配なので相談という名目で意識調査をして置いた方が良いだろう。今回の件が原因で、斜め上に考えがぶっ飛んで傷害事件でも起こしたら大変だからな。

 モンスター討伐が生活の糧になると言うプロの探索者なら兎も角、学生や別に正式な仕事を持つアマチュア探索者にとって人型モンスターを殺す事が出来るようになると言うのは、ある種の心の壁を取っ払う……もしくは低くする。プロなら仕事という括りで心に棚を完全に作る事が出来るだろうが、アマチュアでは一般生活と探索者生活の境が曖昧になり、意識の切り替えが上手くいかずヒョンな事から探索者としての力をダンジョン外で誤って振るいかねない。そうならないようにする為にも、美佳と沙織ちゃんには心の棚……プロ意識を身に付けさせないとな。


「おい、大樹。通路の端に寄るか、ロッカーに移動しないか? そんなに混んではいないけど、出てくる後続の邪魔になってるぞ」

「「「えっ?」」」


 裕二に指摘され慌ててダンジョンの入り口に顔を向けると、確かに裕二の言うように通路の真ん中で足を止め話していた俺達を迷惑そうな表情で見ながら通路の端を進む人達が……って。


「「「す、すみません」」」


 俺と美佳、沙織ちゃんは謝罪と共に頭を軽く下げながら、慌てて通路の端による。

 って、裕二、柊さん。苦笑していないで気が付いていたのなら、もっと早く教えてくれよ。


「あぁ、えっと……話はまた後でするとして、取り敢えずロッカーに移動しようか?」

「う、うん」

「は、はい」


 俺は若干バツが悪い表情を浮かべながら、この場を離れロッカーへ移動する事を提案する。人通りの邪魔にはならなくなったとは言え、居心地が悪いから早く離れたい。

 そんな俺の提案に美佳と沙織ちゃんは即座に頷き、裕二と柊さんも苦笑を浮かべたまま頷いた。








 着替えを済ませた俺達はロッカーを後にし、今日のダンジョン探索で得たドロップアイテムを換金しようと受付がある建物へと移動した。受付がある建物の中の人は休日に比べかなり少なく、コレなら余り待たずに換金手続きを行う事が出来そうだ。


「じゃぁ整理券を取って来るから、待合席の方で待っててよ」

「おう。じゃぁ、頼むな大樹」


 俺は皆と別れ、発券機から受付整理券を取った。


「53番か……」


 時間帯も関係しているだろうが、やはり平日のダンジョン利用者は少ないようだ。

 そして整理券を持って皆がいる待合席に移動しようとした時、不意に後ろから声を掛けられた。


「あ、あの、すみません。ちょっと良いですか?」


 声を掛けられた方に顔を向けると、そこには俺より頭一つ分低い美佳達と同い年くらいの女の子2人組がスマホ片手に不安気な眼差しを向けてきていた。

 ……って誰、君達?

















ダンジョン探索合宿終了ですね。後は、ドロップアイテムを換金するだけなんですけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 丁々発止って互角に戦う様じゃなくて、激しく音を立てて戦う様なんだけど… 武器使うなら武器同士を激しく撃ち合って音が響くような戦いだから、ゴブリンと互角に近い戦いをするのには使ったらダメでしょ…
[気になる点] やっぱりまた通路の真ん中で立ち止まって長話しして注意されてるけど何で?
[一言] 美佳&沙織の子守りは、いつ終わるんだろうか? 同じような事の繰り返しばかりで、進歩ないし、説明が多すぎてテンポが悪い。 退屈してきた。 スライムダンジョンをどうするか、という話は、どうなって…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ