邪神様とプレゼント選び
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──邪神様とプレゼント選び
金色祭が1日、1日と近づいています。
そして、私たちは金色祭で交換するプレゼント選びに街に繰り出すことに。
「イリス!」
「フリーダ。お待たせしました」
「大丈夫。私も今来たところだから」
私はフリーダとエミリアさんと待ち合わせしていた帝都中央駅前に馬車でやってきた。馬車は未だに居候しているフェリクスの家のものだ。
12月の金色祭が終わるまではフェリクスの家に居候することが決定してたりします。
「じゃあ、行こうか。まずは帝都百貨店でいい?」
「ええ。そうしましょう」
私たちはプレゼントを買いに帝都百貨店までゴー!
「やっぱり世間も12月が近づくと年末のイベントに備えてるね」
「そうですね。賑やかな感じでわくわくします」
クリスマスムードの漂っている街は、ちょっと浮かれた感じで賑やかです。皆が寒さに負けないテンションを発揮しています。
「フリーダとイリスさんは誰にプレゼントを贈ります?」
エミリアさんがそう尋ねてくる。
「あたしはエミリアとイリス、それに文芸部のメンバーとアルブレヒト様!」
「私はフリーダとエミリアさんに送ったら、あとは生徒会の方々ぐらいでしょうか?」
フリーダと私がそれぞれそう答える。
「生徒会ってことはフェリクス様にも渡すんだね?」
「ええ。お世話になっていますから」
「……あれから進展はないの?」
フリーダとエミリアさんが凄く疑問そうに私の方を見てくる。
「進展と言いましても。一応前よりはずっと仲良くなったと思います。この前もとある暴漢から守っていただいたり……」
「えっ! そんなことが起きてたの!?」
「は、はい」
私の言葉に驚くフリーダに私はびっくりです。
「だから、フェリクス様は顔に怪我してたんですね……」
「愛するイリスを守るために頑張ったんだなあ……」
何やらエミリアさんとイリスが感慨深げにしています。
「けど、イリスはやっぱりフェリクス様のこと、苦手なの?」
「苦手というわけでは。ただいろいろと複雑な事情がありまして」
私は異端の邪神様だからフェリクスと付き合っても、ろくな結果にならないと思っています。それがなければとても親しい友人として、フェリクスと仲良くするのはいいのですけど。
最近は昔みたいに睨んでくることもなく、むしろカルトやマティアス先生と言った害を加えようとする存在から守ってもらっていますし。私のその恩にはちゃんと答えておきたいのです。
「そっかー。イリスも何か複雑な事情がありそうだからね。しょうがない」
フリーダは私が超自然的な存在だと知っているので、そう納得してくれた。エミリアさんもフリーダが納得したので、それ以上の追及はしないでくれている。
「じゃあ、せめてプレゼントはばっちりなのを選んで思いでを作ろう!」
「はい」
恋人として付き合うのは難しいけど、フェリクスという人がいたという思い出は作っておきたいです。それは私の大事な思い出になるだろう。
私たちはそんなこんなで帝都百貨店に到着。
「いい? お互いに送るプレゼントは当日まで内緒だよ? ここで何を買ったのか分からないようにね! それ以外のプレゼントは相談してもいいよ!」
「ええ。当日を楽しみにしないとですね」
「それではまずはお互いに贈るプレゼント以外のプレゼントを買おう!」
フリーダが場を仕切って私たちはまずは私、フリーダ、エミリアさんで送り合う以外のプレゼントの購入を始めた。
「アルブレヒト様には文房具か本だと思うんだけど、どうしようか?」
「流行りの本とかですか?」
「それが流行りの本はもう読まれてるかもしれないんだよね。だけど、流行りじゃない本で名作というのも読んでしまわれているだろうし……」
「となると、文房具がよさそうですね。あなたの作品に期待していますという思いを込めて、万年筆やノートを贈るのはどうですか?」
「それがよさそうだ。ありがとう、イリス!」
「いえいえ」
フリーダのプレゼントが決まり──。
「レオンハルト殿下は好みそうなものというと……」
「……殿下はエミリアが贈るものなら何でも喜びそうだけど」
「い、一応考えませんと!」
「なら、エミリアとペアのハンカチとかスカーフはどう?」
「ペアルック、ですね。それはいいアイディアです!」
エミリアさんのプレゼントが決まり──。
「フェリクス様には何を贈りましょうか?」
私の贈るプレゼントの番となった。
「イリスはフェリクス様の好きなものとか知らないの?」
「知りませんね……」
これまでフェリクスが好きなものの話と言えば『僕とアギロ』の話をしただけだ。彼が他に好きそうなものは思い浮かばない。
「フリーダ。『僕とアギロ』という本を知ってますか?」
「知ってるよ。有名だもん。それを贈るの?」
「いえ。同じ作者の別作品でもあればと思いまして」
本ぐらいしか思い当たるものは今のところないのです。
「うーん。聞いたことないなあ。多分、その作品しか書いてないと思うよ」
「そうですかー……」
となると、何がいいだろうか?
「私と同じようにペアのハンカチなどを贈られますか?」
「そうですね。それが無難なような……」
エミリアさんがそう言うが、12月の金色祭が終わったら、もうフェリクスと会うこともないのだ。そうなるとハンカチ以上のものを送っておきたいと思ってしまいます。
「そうだ。アウトドアグッズはどうでしょう?」
「ア、アウトドアグッズ? どうして?」
「いえ。前にフェリクス様と話したのですが、小説の旅に出る準備をする場面はワクワクして楽しいということで意見が一致しまして。だから、フェリクス様に旅に出る楽しみを実際に味わってもらおうかと」
「おお。なるほど! というか、ちゃんと好きなこと話してるじゃない、イリス!」
「忘れていました……」
邪神様になって記憶力が上がったと思ったのだが、記憶力を運用する知性がポンコツで役に立っていません。
「なら、アウトドアグッズを見に行こう。でも、具体的にどういうのをプレゼントするの? テントとか寝袋とか?」
「サバイバルナイフとかが男の人に受けるかなと思うのですが」
前世で男性だった私的にはサバイバルナイフとか、そういうのに憧れがあるのです!
「ナイフか。男の人にはいいね。しっかりしたのを選ぼう!」
「はい」
私たちはアウトドアグッズがあるコーナーでサバイバルナイフを購入した。
「柄の部分に名前を入れることもできますが、どうなされますか?」
どうやら名前を刻んでくれるサービスがあるらしい。
「では、『I&F』と入れてもらえますか?」
意味は当然イリス&フェリクスだ。私からのプレゼントであることを示しておこう。ナイフを見るたびに私のことを思い出すといいでしょう!
「では、どうぞ」
そして、無事にプレゼント購入は完了した。
「あとはそれぞれに贈り合うプレゼントだね」
「ここからは個別に行動ですね。何を買ったかは内緒ですから」
「うん。1時間後にエントランスで会おう!」
フリーダたちと待ち合わせをしてから、私たちはそれぞれ行動開始。
「フリーダとエミリアさんに何を贈ろうかな~?」
などと考えながら、百貨店内を歩いていると嫌な視線を感じて振り返る。
すると人気が急になくなった百貨店内にひとりの少女がいた。
「イリス、またはイリリースよ。お前が作り物の神が定めた祭事を祝おうとしているのは、いささか滑稽でもあるな」
「クラウディアさん。またあなたですか」
いたのは軍用外套と黒いワンピース姿の少女──クラウディアさんだ。
「我らが探求者にして同志たちカールたち無星の智慧教団が妙なことにローゼンクロイツ協会と接触したと聞いたが、あれはお前の意志なのか?」
「ええ。私は自分の意志で行動することにしました。崇拝者や探求者が望むようには、私は行動しません。私が何をするかは、私の決めること。お父様たちにもそう理解していただきました」
「なるほど、なるほど。お前の意志、か……。それほどまでに人間ごっこは面白いのか? 下等な生き物に紛れ、潜むというくだらないことは、お前にとって愉快なことなのか?」
「そうですが? 私は今も楽しんでいますよ、人間ごっこ。そういうあなたもそうなのでしょう?」
クラウディアさんだって、人間の服を着て、人間の言葉を喋り、人間の形をしているが、私には分かります。彼女はもう人間ではないと。
「ふふ。やはりお前は面白い」
クラウディアさんはそう不気味に笑う。
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