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一変










 サラの部屋は何も変わっていなかった。


 僅かにテーブルの周辺がホコリを被っていて。


 サラの全てが取り残されたような。


 開いたままの窓から入ってきた風はやけに肌寒い。


「はあ……」


 サラと寝たベッドに腰を下ろす。


 俺はあの時、なんて返したらいいのか分からなかった。


 ずっと一緒に居てやるよってまことしやかに誤魔化した。


「ごめんよ、サラ」


『はい』


 言葉が聞こえた気がして振り返る。


 窓の風が俺の頬を撫でる。


 風が揺れて、そう聞こえただけみたいだった。


「迷惑な風だな」


 うるさい風に押されて部屋を後にする。


「もうよろしいのですか」


「ああ」


 アルカデリアンを買って自分の部屋に戻る。


「遅かったですよ!」


「すまない」


「すぐ終わることなのに遅いと……」


 なんとなく、カロンが俺をこき使うような気がしてる。



「悪かったって」


「心配するので、寄り道するなら言ってください!」


 カロンに買ってきた物を渡すとその場でアルカデリアンを出し始めた。


「……はい、どうぞ」


「え?」


「一緒に一本を食べようかと」


 なんでだよ、いつも一人で食ってるのに。


「リュウキさん、あまり食べてないのはバレバレです」


 押し付けられた肉には感謝する。


 噛みちぎって飲み込むと心地よい塩気を感じた。


「……うまい」


「でしょう?」


 お世辞にも栄養が取れる食事ではない。


 満足感はいつも通りだった。


「一緒に寝てあげても良いですよ、嫌われさん」


「ひどいな」




 更に二日経つ。




 カロンの隣でいつものように早起きする。


 長く寝たらカロンにセクハラしてしまうかもしれないからな。


 ドンドンドン。


 玄関の方からそんな音が聞こえる。


 まさか、泥棒か!?


 身構えているとドアが開かれる。




『じゃーん!』


 スカーだった。




「おかえり」


「あれ?」


 さっきまで光に満ちていたスカーの笑顔が影る。


「どうしたんだ?」


「……なんでカロンちゃんと寝てるの!」


「そりゃ、カロンに頼まれて」


「早く降りて!」


 仕方なくスカーに従う。


「こっち来て!」


「はいはい」


「ギューって抱きしめて!」


 スカーの背中に手を回して抱き寄せる。


「こうか?」


「うん……」


 思った以上に素直だった。


「本当はさびしくて」


「……」


「リュウキが分かってくれないから八つ当たりしちゃった」


 だからあんなにプンプン怒っていたらしい。


「ごめんなさい……」



「俺も分からなくてごめんな」


「小さな事で怒るスカーがわるいから」


「こだわりを持つスカーもかわいいぞ」


 よしよしと撫でてあげると話が途切れる。


「きもちいい……」


 頬を緩ませてスカーがニヤける。


「最近、体が重い」


「そうなのか?」


「歩いて帰ってくるのもきつくて、魔法でなんとか帰ったんだー」


 筋力ないからだと俺は思う。


「運動するか」


「やだやだ」


「歩けなくなったらどうするんだ」


 不意にスカーが口を手で抑えてコンコン咳き込む。


「いや、風邪だからだな」


「……また出たあ」


「何が?」


 スカーが閉じた手を開く。その手のひらはべっとりと赤かった。


「ドッキリにはかからないぞ」


「ドッキリじゃないもん……」


 嘘は良くないぞって思いながらその手を舐める。


 舐めたことのある味がした。


「はっ?」


「出かける前にも血を吐いたんだよぉ」


「落ち着こう」


 スカーを抱きしめて、ひたすら髪を撫でて焦りを思考の隅に追いやる。


「リュウキ、ドキドキしてる」


「当たり前だろ!」



 血を吐くって一体? 良い状況ではない。



「落ち着いて」


「ああ」


 深呼吸してスカーの目を見る。


「なんで、言わなかったんだ?」


「異世界だから普通かなって」


 えへへと呑気に笑えるスカーがうらやましい。


「そんなわけないだろ」


 抱っこして玄関に向かう。


「デートするの?」


「するなら病院デート」


「やだやだ」


 抵抗する力もないスカーが暴れても、なんの問題もない。


「チューしてくれたら、行ってもいいけど……」


「良いぞ」


 首に腕を回したスカーが唇を押し付けてくる。


 行きたくないのか、すぐに終わってくれない。


 右手でスカーの肩を掴んで引き剥がす。


「まだ……」


 強引に離してしまったせいで、俺とスカーの間に透明な糸が引かれる。


「じゃあ指舐めとけ」


 人差し指をスカーのすぼめた口の中に入れる。


「ん……」


 渋々納得してくれたのか、チュルチュル舐めている。


「もういいだろ」


「だめ、まだ」


 玄関からスカーを抱いて飛び出ると、いつもの男が!


『様子を見に来たが』


 ちょうどよかった。



「スカーの体調が良くないみたいで、どこに行ったら診てもらえる?」


「……向こうだ」


「分かった」


 指が示す方向に向かって歩き始める。


「一大事なら言ってくれ、最高の医療を要請する」


「そうなるかもしれない」


 向こうと言われて歩いてみたが、どの部屋かわからない。


 どれだ?


 ドアを見てみると赤い十字のマークが描かれている扉を見つけた!


 これだな!



 入ってみると白衣の人が居て、保健室って匂いがした。


「どうしました?」


「彼女が血を吐いたんです」


「なるほど、魔力の方は?」


「一万から上って聞いてます」




 白衣の人が頷いて簡単に答えを出した。


『分かりました、アランデル症ですね』 










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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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