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本気の狂気








 サラの煽り文句に相手は地面に手を置く。


『クリエイト』


 周囲から気味の悪い人形を生み出して行進させる。


「これは俺様がやるよ」


 土の剣が人形の頭を粉砕する。


「私が本体を叩くの?」


「そうだろうが、決めつけて影に隠れるつもりか?」


「そのつもりだったけど……」


「さっさと沈めろ」


 サラは息を大きく吐くと魔力に手を伸ばした。


『前言撤回』


 そう言って消えると人形をクリエイトする少女の前に姿を現す。


「えっ!?」



 握り拳を作り、綺麗なフォームで殴り掛かる。



 拳が通る軌道が風の魔法で瞬間的に加速する。



『ごめんね』


 風切り音と共に放たれる一撃が少女の顔を歪ませる。


 強烈な打撃が少女を遠くに吹き飛ばした。


「ちょ、ちょっと!?」


 少女の仲間が驚きを漏らす。


「お前、最低か」


 仮想空間で遠慮なく同性の顔面を狙えるサラ。


 ガロードは狂気に近いものを感じていた。


「そう?」


「女だぞ、情とかねえのか?」


「顔の方が気持ちいいでしょ?」


 サラはバチバチと魔力を鳴らす。



『ひ、ひいい』


 女の子は背を向けて逃げ出してしまった。



「待ちなさい!」


「お前に女はダメだ」


 ガロードは今にも瞬間移動しそうなサラを羽交い締めにする。


「離して!」


 叫びは無駄な言い争いに発展する。


「さっきは敵! 女はもっと敵なの!」


「そんなん知らん!」


「でも、倒さなきゃ終わらない!」


「クズは黙っとけ」


「代わりにあんた殴っていい?」


「あぁ?」


 そう言って肘でガロードの横腹を突くと魔力の糸でガロードの背後に移動する。



「おい……ぶっ殺すぞ!」


「上位クラスにボコられたい?」


 サラは不敵に微笑む。


 ムカついたガロードはヒュッと剣を振り下ろす。


 その前に姿を消し、ガロードの背後に現れた。


「おりゃあ!」


 声に気づいたガロードが振り返りながら拳を防ぐ。


 火花と共に体が後方に引っ張られ、地面を鳴らして踏ん張る。


「ガチかお前!」


「ここは手加減が基本でしたか」


「そりゃそーだろ、状況分かってんのか」


「する相手が居なかったので、分かりませんでした」


 サラは両手を輝かせると戦う構えを取った。


『今から本気で行きます』


「なんでこんな目に……」


 ガロードの後悔が渦巻いた。




 その頃、金髪ちゃんは魔力を膨らませていた。


「もう出したいな、ダメかな」


 三人を眺めながら呟く。


 リュウキは決闘を始めた二人のせいで三対一を強いられている。


「二人は喧嘩してるからな〜」


 スカーは体育館座りでリュウキの動きを眺めていた。


「喋り方、変わったね」


「かわいく見られたくて」


「……いいじゃん、それ」


 垂れた髪を右耳に掻き上げて魔力をリュウキに流す。


「そう?」


「かわいいって女の子の特権なんだよ」


「……自分って女の子かな」


「女の子じゃないの?」


「分からないんだ」


「好きな人に聞いてみてもいいんじゃない?」




 スカーの魔力に呼応した剣が銃口に光を貯める。


『ど、どうしたんだアナライザーマグナム!?』


 吐き出された熱線は大地を焦がした。




「聞いてみるか」


 スカーは早く終わるように爆発魔法を促す。


「でも、向こうで戦ってるよ?」


「簡単だよ」


 強風でガロード達を煽ってこちら側に移動させる。


「な、なんだ!?」


 踏ん張っていたが、あまりの風力に転がされ始めた。


 泥まみれになった二人が思惑通りスカーの近くで仰向けになった。


「さ、最悪だ……」


 呟くガロードを横目にスカーが指示を出す。


「あそこでやっちゃって」


「りょーかい」


 魔力の糸に気づいたサラがスカーを睨む。


「またするんですか」


「今回はちゃんとできるよ」




『どっかーん!』




 かわいい声と光が世界を何度も包む。


 見えない先で燃え裂ける香ばしい香り。


 断続的な爆音と焼け付くような熱。


 スカーは瞬時にリュウキを氷の殻に閉じ込めた。


 溶け出る大量の水が熱で蒸発する。


 溶けるよりも速く魔力で氷を補う。



 爆発が収まると氷の殻を残して人間は消えていた。


 氷の殻を大きな剣がバキバキと突き破る。


 その中からリュウキが出てきた。


『勝者が決まりました』


 アナウンスの後、アステル先生が空から舞い降りる。


「五人で勝ってくれたので楽です」


 パチパチ拍手するとこれからの流れを説明する。


「数日置いてクラス対抗戦が始まります、知らない人はいないと思いますが、アスタロト・アカデミーでもっとも賑わうでしょう」


 アステル先生は「負けてくれたら楽なんですがね」と言った。


「質問ありますか」


「優勝したら何があるの?」


 スカーの質問に「なんでもお願いを叶える権利です」と答える。


「欲しい!」



 なんでも叶える権利。



 スカーは黒い空に欲しいモノを浮かべて瞳をキラキラさせる。



「まあ、頑張ってください。詳細は後日」


 アステル先生は扉を作ると出ていった。


「じゃあ帰るか」


 リュウキが扉をくぐる。


「そうしましょ」


 教室に戻ると他の生徒はまだ居なかった。


「私はお先に帰るー」


 金髪ちゃんは教室を出ると右に曲がっていく。


「俺様は残るぜ」


「残るのか」


「することがあるんでな」




 リュウキは特にすることもないので、教室を出る振りをしてガロードをこっそり観察することにした。


「な、なにしてんの?」


「ガロードのすることが気になるだろ、俺は暇なんだ」


「きっも」


 そう言ってスカーは横に並んで隠れた。


「私みたいなことしてて嬉しい」


 スカーの隣にサラが並ぶ。


「こんなことしてたのか!」


「リュウキくんが思う以上に私はあなたを狙ってた」


「きっもいな」


 リュウキはボソッと呟いた。


「その言葉、お返しします」


 じっと見ること数分。


 生徒が帰ってき始め、扉から女の子が飛び出る。


 ガロードの机を叩いてピョンッと跳ねる。


 紫色の短いウルフカットがゆさゆさ揺れた。




『お兄ちゃんっ!』




「ここで言わないって約束だろうが」


「だってぇ、あの怖い人から守ってくれたじゃんか!」


「代わりに俺様が殴られたんだが……」



 ガロードがサラを抑えた理由。


 顔面をぶん殴ろうとした二人目が、ガロードの妹だったのだ。



 それに気づいたサラは「なるほど」と言った。









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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