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伏し目がち








『怒らないで……』


 俺の隣に座ってきたと思ったらスカーは悲しそうな顔をしている。




 何の話をしているのか、さっぱり分からない。


 俺はよく分からず死んだ後、アステル先生のいる空間に来た。


「座りなさい」


 先生に言われて他の死んだメンバーの間に座ると、一緒にテーブルゲームをすることになった。


 内容はトランプゲームに似ている。


「そんなことしてていいんですか?」


 転送された生徒は恐る恐る聞いていたが「バレなかったら怒られると思いますか?」って極論を返せなかった。


 そうこうしているうちに俺のチームは勝利が決まったらしく。


「次の戦いに備えてください」


 アステル先生に言われて、待機室にひと足早くお世話になっていたというわけだ。


 観戦用の映像はゲームに夢中で見てなかった。


 負けたら脱衣する話だったからな。


 誰が最後の敵を仕留めた? それすら知らねえ。




「よく分からないが、スカーは頑張ったのか?」


「約立たずだった」


 俺が右手を上げるとスカーはキュッと目を閉じる。


 サラサラの髪に沿って頭に触れた。


「叩かないの……?」


 驚いた様子で目を開け始めた。


「そんなことしねえよ、次から頑張れ」


「チューしてくれたら頑張る」


「人が居るからな」


「やだやだ、チュッチュしたいー」


 駄々をこねられると困る。


「んむっ」


 うるさいスカーの唇を人差し指で塞ぐ。


 周りを見て、誰も見てないことを確認。


 その人差し指を自分の口にも当てた。


「これで勘弁な」


 本人は黙って、頬をほんのり赤くする。


 これで満足してくれたようだ。




『も、もう一回……』




 してくれてなかった。


 図々しく手で数字の一を表しながらねだってくる。


「これだけだぞ?」


 今度は自分の唇に触れてから、スカーの柔らかい唇をむにっと押す。


 さっきよりもやけに水気を帯びた柔らかい部分。


「……」


 じっと見つめてくるスカーの為に濡れた人差し指を舐める。


 それを見てニッコリ微笑むと俺の肩にコツンと頭を倒した。


「なあなあ」


「どうした?」


「オレが死んだら、泣く?」


「なんだよそれ」


 妙な質問してくるな。魔法空間じゃ死ぬことはないのに。


「リュウキがオレの事で泣くことないから……」


「お前には絶対泣かねーって決めてるよ」


「なんで?」


「泣き虫の涙を拭うのは俺の役目だろ」


 男の俺がお前を守らなきゃ行けないんだ。


 泣いてる暇なんて、ないに決まってる。


「じゃあ泣いてもいい? 静かに泣くから」


 瞳が潤いを溢れさせ、光をキラキラ反射する。


「なんでそうなる」


「そういう所が嫌なんだよぉ……」


 そう言って本当にポロポロ泣き始めた。



「泣くなって」


 背中を撫でながら指で涙を拭ってあげる。


 中身は俺なのに、俺より面倒な奴だな。


「泣くのに、条件、要るんだっけ」


 鼻をすすりながら聞いてくる。


「なくてもいいよ、もう」


 どっちでもいい話。


「今は、寂しくて、泣いてるんだ……」


 サラサラとした銀色の髪にキスをすると簡単に泣き止んだ。


「足も触ってほしいな」


 人差し指で教えられたのは太もも。


 ゆっくり手を置くとズボンの上からでも冷たさが伝わる。


「冷え性、なんだよ」


 何度か触っても冷たいまま。



『寒くて寂しいってめちゃくちゃキツいよ』



 何も言えなかった。俺は冷え性じゃないから。


 脱いだジャケットを足にかけてやることしかできない。


「オレのことってキモく見える?」


「別に」


「じゃあ、遠慮なく」


 膝に掛けてやったジャケットを胸に抱き、(えり)の匂いを嗅ぐ。


「……変でごめんよ」


 そのまま俺に背中を向けるとベッドに入っていった。


 後ろからちょっかいを出そうとしたら、サラに呼び止められてしまった。


『リュウキくん』


「なんだ?」


「作戦会議」


 仕方なくベッドから降りて向かう。


「二人で会議って……」


「どうせ指示は君なの、経験者の話を聞きなさい!」


「それは聞いておきたい」


 サラはペラペラ喋り始めた。


「まず、私とおデート」


「……」


「いえ、ミスです。次は六チームから三チームに変動します」



 サラは恥ずかしそうに丁寧口調で話を続ける。



「最初に五人チームと戦って、最後に六人の特別チームと」


「待ってくれ、六人が残るとは限らないだろ?」


「一人多いと全然変わるんですよこの戦いは」


 そうなのか。


「ここで共有して起きたいのは、五人の中に強力な人間が居る、ということです」


「へえ?」


「青い髪の男、見ませんでしたか」


「見たな」


「上位クラスでも話題になった人物です」


 実質上位クラスじゃん。


「能力があるとか?」


「魔法は普通なんですが」


「剣術が凄いとか?」


「いえ、剣もそんなに」


 じゃあ、何が強いんだ?




『めちゃくちゃイケメンなんです』




 真面目に話を聞いた俺が馬鹿だった。


「女子の間では顔面上位って呼ばれてるんです」


「皮肉じゃねえか」


「しかし、女の中でも精鋭が集まったチームになるでしょう」


 全体的なパワーは高いかもしれないな。


「話はもう終わりか?」


「いえ、あの人についてなんですが」


 サラはスカーをやる気がなさそうな人と評価する。


「気持ちの波が目立ちます」


「……確かに」


 お前のせいだけどな、サラ!


「次は行動を共にする作戦を組んでみては」


「スカー守りながら戦うのはな〜」


「そうしないと負けます」


 念を押されてしまった。相当な何かが戦闘の中であったらしい。


「わ、分かったよ……」


「嫉妬はしてしまうので早く済ませてくださいね」


 ズィッとプライバシーを侵してきたサラの唇が俺の肩に触れる。


 サラの口から吹き込まれた熱い熱が服越しに伝わった。


「もう終わることでしょう」


『フィールドに転送します』


 経験者は時間まで分かるらしい。





 転送された俺達は前回のような場所に居た。


 少し違うのは遮蔽物が完全にないこと。


 進行しにくかったが、今回は素早く動ける。


『リュウキ、これ……』


 俺のジャケットを抱いたまま転送したスカーはよそよそしそうに近づいてきた。


 強く抱きしめられてシワシワになっている。


 受け取るとふんわりスカーの匂いがした。


 袖を通したら割と暖かくて文句はない。


「シワシワにしてごめん……」


 最近のスカーは伏し目がちな気がする。


「もっと元気に行こうぜ」


「元気?」


「そうだ、声は出さないと伝わらねえぞ」



 スカーの手を握って、前を見る。


 青い髪の男が勝っていて、他のメンバーは全員女のハーレムチーム。


 その中にカロンが見えた。


『30秒だけ準備時間を設けます』


 サラに魔力の看破を頼む。


 金髪ちゃんとガロードはデュオを組んでもらった。


 瞬間移動できるサラは遊撃役。


「オレは?」


「俺と来たくないならそこに居たら?」



 スカーの手を離して一歩だけ距離を取る。



「そんなこと言うなよ」


 俺の後ろに立つと手を巻き付けてきた。


「やめろって動きにくいから」


「ハグハグしたいんだもん」


 サラの視線がキツい!


 だが、振り払うにはもったいない感触が俺の背中には宿っている!


「……魔力に覆われてます、防御手段を」


 スカーは俺の耳元で言葉を囁く。耳を冷たい冷気が掠めた。




『クリエイト』




 雪が空を泳ぎ始める。


 俺達が踏んでいる地面が氷の床に姿を変える。



 魔法の床は俺達を乗せてエレベーターのように上がり始めた。










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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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