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行ってほしくない







『勝者はチーム二人です』



 なんだそのチーム名。


「やったなあ! カロンちゃん!」


「ですね!」


 早速勝利を祝ってハグを交わす二人。


 あれ? 俺は?


 マジでチーム二人じゃん。


『なにしてんだ? リュウキも来いよ』


『そうですよ、MVPはあなたですからね』


 いや、三人だったか。


 俺も輪に入って喜びました。



『勝利、おめでとうございます』


 声の方向を見てみるとアステル先生が。


 その後ろにはさっき戦ったガロードと少年が居る。


 金髪の子はさすがに来れなかったらしい。


「お前、なかなかやるな」


「そっちこそ」


「今回は納得がいかねえ、次はサシでやろうぜ」


 そう言ってガロードは拳を出す。


 俺も応じるように拳を当てた。




「そんなことより、あれつけてくれよ!」


 制服の裾を引っ張るスカーがネックレスを付けるようにせがんでくる。


「なー、いいだろ、オレ頑張ったし!」


「分かったって」


 ケースからネックレスを取り出してチェーンの輪を解く。


 スカーに歩み寄って首の後ろに手を回す。


 面倒だな、これ(くく)らなきゃ行けないのか。


 少し手間取りながら括ることには成功した。


「満足したか?」


「うん……」


 頷いたスカーがどさくさに紛れて俺の手を握る。


「お前らお似合いだな」


「僕達にはプリンセスなんて不釣り合いだったのさ」


 二人は勝手に拍手すると赤いドアから消えていった。




「さて、合格したあなた達にプレゼントがあります」


 アステル先生が話を進める。


『上質な素材を使った剣です』


 そう言って、三本の剣をどこからか取り出す。



 それぞれ金色の装飾が施された鞘で、先生が半分ほど抜いて刀身を見せる。



 俺が持っている剣よりも細身だ。


 刃に赤い文字が刻まれてかっこいい。


「あの……持ち手って鉱石使ってますか?」


「マーナ鉱石を使ってます」


 カロンは顎に手を当てて受け取ろうとしない。


「マーナ鉱石? って重いのか?」


「軽い鉱石ですが、それでも水袋並みでしょうか」


 それを聞いたスカーも目を細くして武器を眺める。


 ……なんで純粋に受け取れないんだよお前ら!


「持ちます、俺が全部持ちます」


「どうぞ」


 三本の剣を腰に付ける。


 制服だから機能性はしっかりしている。


 縛る紐もないのにどうやって付いてるのか分からないが。



「この日の授業はもうないので各自、自分の部屋で羽を休めてくださいね」


『では、帰りましょう』



 そう言って先生は白い扉を出す。


「色が違いますね」


 気づいたカロンがそんなことを言う。


「赤は観戦ルームです」


「えっ?」


 ここまでしてきた事が全部見られてたのか?


 嫌な予感がする。


 何となく白い扉をくぐるとそこに座ってる人は居ない。



 不意に廊下で金色の髪が揺れた。



 ガラスから僅かに見える。


 金髪ちゃんだ。


『行くなよ』


 スカーが追おうとした俺の手を引く。


「どうして?」



「……行ってほしくない、じゃダメか?」



 そう言ってスカーの握る手がキツくなる。


 なんで行ってほしくないんだろう。


「別にいいが……」


「じゃ、帰ろうぜ」


 俺達も揃って廊下に出る。


 金髪の子が行った道とは逆の方向に歩き出す。


 後ろ髪を引かれる気持ち。


「今日は魔法使ったからキツかったなー」


「もう寝ます?」


 窓から外を見てみると雲一つない明るい天気だった。


「肉食ったらそれもありかもー」


「ワタクシは何もしてませんでしたが、走って眠いです」


「リュウキのカバーしてたじゃん」


 俺は眠くないけど、魔法使うと疲れるのかな。


 ちょっと羨ましい。


「でも」


「不服か?」


「爆発に巻き込まれた時、ワタクシにまで土を出してくれたじゃないですか、それなのにワタクシは……」


「次から一緒に防御しあったらいいだけ」




 部屋に着いた二人は中でさっさと休憩を始める。


 俺は腰に付けた三本の剣を外して、背中の剣も外さなきゃならない。


 そういや、この剣ってガロードに破壊されたんだよな……。


 修理ってしてくれるのかな?


 震えつつも鞘から抜いてみる。


 ……全然折れてない。


 俺は幻覚を見てたのか? それとも最強の自己再生持ちの剣?


 使えるんだったらなんでもいいか。



「うげっ……」


 武器を横に置いて、凍らせた肉を入れた箱を眺める二人の元に行く。



「どうしたんだ?」


「それがよ……」


「うん?」


 見てみると見事に氷が溶け、肉が水に浸かっていた。


 氷を置きすぎたのだ。


「ああ……」


「オレ達のアルカデリアンがっ!」


「ドンマイですね」


 正直、最悪。


 あまり食えてないから、屋台に行って何かを食うという気力はなくて。


 即席の栄養源を失ったのは心に来る。


「水でも飲んでみるかー」


「どうやって飲むんだよ」


 蛇口もない、水袋もない。


「魔法の水だよ」


 そっちか。


「へー」



 スカーが人差し指の先っぽを咥える。



 微かに頬が膨らみ、喉が動く。


「水分補給に割と行けるな」


 人差し指を離してそう言った。


「便利だな」


「飲んでみるか?」


「遠慮する」


「いや、飲め」


 そう言って強引に俺の口に人差し指を奥まで差し込む。


 途端に口の中が水分で満たされ始めていく。



 ごくごく。



 飲んでみると普通の水だった。


 指を抜いて口内に溜まった水を飲み干す。


「どうだ」


「美味かったよ」


「そうか!」


 そう言ってスカーは人差し指を舐め上げる。


 口の中からほっぺに指を当てて楽しそうに水を飲んでいた。


 カロンはそんなに興味無さそうだな。


 眠そうで、うつろうつろとしている。


「うう……寝ます」


 言い残してスタスタと寝室に消えていった。



「お前は?」


「眠いから先に寝るよ」



 瞼をパチパチさせるスカーから確かな眠気を感じさせてくる。



「じゃあ俺は飯でも食ってくる」


「いってら」




 俺は武器を付けなおして部屋を後にした。











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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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