第3章
ベルネレへの道中、野宿をして全員眠っている。ただ1人を除いて…。
?「…はい、今のところ順調のようです」
暗がりにいるせいか、その姿ははっきりと見えない。
?「はい…はい…。“神組成阻止計画”はまだ始まったばかりです」
独り言のようにただ話していた。
?「…途中で“2人”を確保しました」
しかし相手の姿は見えない。
?「…分かりました、引き続き監視と護衛を続行します」
そして会話(?)が終わる。
−翌日−
マリー「ねぇ〜、まだ着かないの〜?」
道をひたすら歩いていた。
ガルフ「そのセリフ125回目ー」
なんとなく相づちをうつ。
朝からこの繰り返しで、さすがに飽きてきた。
マリー「あ゛〜!もう疲れたー!」
コロタ「わ、私も〜。ハクタ〜おぶってよ〜」
ハクタ「…仕方ないなァ、ほれ」
そう言って背中を差し出す。
ハクタ「よっこらせっと…」
その光景を見ていたマリーがウィドルを見ながら言う。
マリー「ほほえましいわ〜。あーあ、誰か私をおぶってくれる人いないのかなー?」
ガルフ「なんなら俺がぶひゃ!?」
そのセリフを即座に感知したマリーはセリフを言い終わる前に殴っておいた。
ガルフ「そんな元気があるならまだ大丈夫じゃねぇかよ〜」
マリー「うるさい!」
ガルフ「はい…(泣」
ウィドル「2人とも、ケンカしてる場合じゃないぞ。ほら、ベルネレが見えてきた」
そう言って指を指した方向には町が見えていた。ウィドル達がいた街よりずっと人が多そうだった。
マリー「あ、あれがベルネレ…」
ハクタ「おっきいなー!」
ベルネレ。ウィドル達が目指していた町。あの日少女に言われ、目指していた町。町の中央には大きな建物があった。
コロタ「ハクタ、帽子かぶろう?」
ウィドル「うーん、たしかにその耳は目立つからな…」
それぞれに帽子をかぶる。
ごそごそ…
帽子をかぶった2人の姿を見て、
マリー「か、かわいい…」
の一言を言ったのは余談の話。
−ベルネレ−
すごい町並みだった。
人が多く、店は建ち並び、品物に目移りしてしまう。
ウィドル「まずは宿探しだな」
そう言って周りを見渡す。
マリー「あ、あそこにしよう?」
マリーがそう言って指差したのは見るからに高そうな、そして豪勢な宿だった。
ウィドル「……。マリー、僕達はこれからも旅をするかもしれないんだ、だから節約しなきゃいけない」
ウィドルのその言葉に少し笑いながら言う。
マリー「や、やだなぁ〜、冗談に決まってるじゃない」
ガルフ(嘘だ…絶対に嘘だ…目が笑ってない)
とガルフは思った。
言うと殴られるから。
シェリィ「あの宿はどうでしょう?」
シェリィがそう言って指差したのはごく普通の宿だった。
ウィドル「…うん、あの宿にしよう」
マリー「ちぇ…」
そして宿に入る。
宿に入るウィドル達をものかげから誰かが見ていた。
その人物はフードをかぶっているせいで顔はよく見えなかった。
見えたのは血のように紅い眼…。
−宿部屋−
マリー「んー、愛しのベッドちゃーん」
マリーはベッドに飛び込んだ。
ガルフ「やっと着いたなー」
ガルフは椅子に腰をかける。
ハクタ「オレはお腹へったー」
コロタ「オレもー」
ウィドル「ははは、そう言うと思って昼食を頼んでおいたよ」
ハクタ&コロタ「やったー!」
2人はステレオで言った。
シェリィ「………」
−数分後−
ウェイター「お持ちしました」
ウェイターが昼食を持って来た。
テーブルの上に食べ物が並べられる。
ガルフ「うまそー」
マリー「ちょっと、よだれ垂れてるわよ」
ガルフ「あっ、すまんすまん」
そう言って食べ物にかぶりつく。
マリー「あ!フライングー!」
ハクタ「そう固いこと言わずにさっさと食べようー」
ウィドル「マリーもガルフも頼むからケンカしないで食べてくれ…」
ガルフ「ウィドル…モグモグ…そういえばさ…モグモグ…」
マリー「食べるかしゃべるかどっちかにしなさい!」
ガルフ「モグモグ…ゴクン…」
ウィドル「んで…なんだ?」
ガルフ「いや、ベルネレに来たのはいいけどよ、これからどうするんだ?」
マリー「あ、それあたしも聞きたかったー」
ウィドル「………」
ウィドルは急に黙ってしまった。
マリー「まさか…何も考えてなかったの?」
ウィドル「いや、ペレアは『一つの真実がわかる』って言ってたからこの町のどこかにそれらしいものがあると思うんだけど…」
シェリィ「………」
ウィドル「多分この町にある“博物館”のことだと思うんだ」
ガルフ「なら次の目的地は博物館だな」
マリー「食べ終わったら行きましょう」
−博物館の前−
ガルフ「デカいな…」
その博物館は周りにある二階建ての家より大きかった。
マリーが看板を見た。
マリー「ん?なになに…“古代アンティオキア博物館”…」
ウィドル「“古代アンティオキア博物館”…」
コロタ「いいから早く中に入ろうよー」
ウィドル「…ああ」
−博物館内−
マリー「広いねー」
ハクタ「広いなー」
2人が上を見ながら言った。
ウィドル「2人とも、上ばっかり見ている危ないぞー」
ガルフ「お、なんだ?デカい壁画があるぞ」
ガルフが見たその先には厳重に守られた壁画があった。
ウィドル「なんか書いてあるな…」
その壁画は絵の横に文字が書いてあった。
ガルフ「…うーん、見たことない文字だな…」
マリー「古代語かなんかじゃない?」
みんなが考えている中に老人が入って来た。
老人「ほっほっほっ、旅の者よ、その壁画に興味があるかな?」
ガルフ「じいさん、なんか知ってるのか?」
老人「ほっほっほっ、申し遅れた、わしはここの館長じゃ」
マリー「え…ここの館長?」
館長「そうじゃ。そこの壁画の絵はな、古代にいた神じゃ」
ウィドル「……」
館長は刻々と語り出す。
館長「その昔、神が実在していたらしい、その名はアンティオキア、しかし、その神は死んでしまった」
ガルフ「な!し、死んだ!?」
館長「そうじゃ、全知全能の神アンティオキアは死んだのじゃ。その頃から魔物が現れるようになった…」
マリー「壁画に書いてある文字は何?」
館長「残念ながらわからん、もしその文字が解るのなら大発見じゃ」
ガルフ「ふ〜ん…」
ウィドル「………」
ウィドルはその文字を険しい顔で見ていた。
マリー「ウィドル?」
ウィドル「…ん?」
マリー「さっきからずっと文字を見ているけど、もしかして解るの?」
ウィドル「そ、そんなわけないじゃないか」
館長「そうじゃそうじゃ、その文字が解るのはとある“一族”だけと聞いたことがある」
ウィドル「一族?」
館長「アンティオキアと共にいた一族…“ノア族”と呼ばれておる」
ガルフ「んで…そのノア族とやらは今もどっかにいるのか?」
館長「いや…アンティオキアが死んだと同時に行方がわからなくなってしまったそうじゃ…」
マリー「気になるわね〜」
ウィドル「そろそろ…戻ろうか…」
ガルフ「どうした?急に戻ろうだなんて」
頭に手を当てながら、
ウィドル「なんか…気分が…」
シェリィ「一度宿に戻りましょう」
−再び宿部屋−
ウィドル「うぅ…」
宿に帰るやいなやベッド倒れこんだ。
マリー「ちょ、大丈夫?」
シェリィ「安心して下さい。ただの熱です」
ガルフ「まったく、だらしない」
ウィドル「すまない、みんな、少し寝かしてもらうよ…」
シェリィ「看病は任せて下さい。他の方々は町でも散策したらどうでしょう?」
マリー「でも…」
ウィドル「構わないよ、それにこんな大勢の中にいちゃ眠れない」
ガルフ「マリー、行くぞ」
マリー「う、うん」
ウィドルとシェリィを残し、全員部屋から出る。みんなが出て行ったのを確認してウィドルはシェリィに話しかけた。
ウィドル「シェリィ」
シェリィ「なんでしょう?」
ウィドル「知ってることがあるなら全部教えてくれないか?」
シェリィ「何のことでしょう?」
ウィドル「あの壁画…なぜ僕は読める?」
シェリィ「やはり…」
ウィドル「そう言うってことは何か知っているな」
シェリィ「………」
ウィドル「あの壁画にはこう書いてあった!“アンティオキアは人間に殺されたその日、神は自分の分身である魔物を生んだ”!」
ペレア「それが『一つの真実』なのよ」
急にペレアが現れた。
ウィドル「ペ、ペレア!?」
ペレア「あの壁画に書いてあった通り、アンティオキアは人間に殺されたのよ」
ウィドル「そんな…どうして!?」
ペレア「人間が神を超えてしまったからよ」
ウィドル「神を…超えた?」
ペレア「アンティオキアも予想外だったのよ、まさかあそこまで人間が進化するなんてね」
ウィドル「だからって…どうやって神を…」
ペレア「“魔法”よ」
ウィドル「魔法…?」
ペレア「長い時を経て人間が得た力、それは神に理解できなかった力」
ペレアは更に話しを続ける。
ペレア「その力を得た人間は自らを“神”と讃え、アンティオキアに戦いを挑んだ」
ウィドル「そんな…」
ペレア「そして“神”は死んだ、殺された」
ウィドル「でも、それとハルフルが襲われたのとどう関係する?」
ペレア「アンティオキアは生きてるわ」
ウィドル「!?」
ペレア「壁画に書いてあったでしょう?“神の分身である魔物”」
ウィドル「でも僕は授業で魔物は人類が生まれた頃からいるって…」
ペレア「そんなの大嘘よ、歴史には隠蔽された真実がいくつもあるものよ」
ウィドル「………」
ペレア「“神の分身"たる魔物、彼らは“分身"でもあるけど“部品"でもあるのよ」
ウィドル「部品?」
ペレア「そ、“部品"。何かを造るには“部品"が必要でしょう?それと同じことよ」
更に話しを続ける。
ペレア「…そして魔物達は人間を喰らい、人間の知識を取り込んでるのよ」
ウィドル「知識を?」
ペレア「アンティオキアはどうして自分が殺されたか知りたかった、だから分身たる魔物は人間を喰らい、その人間性を取り込んでるのよ」
ウィドル「魔物が部品でそれらが人間を欲している?」
ペレア「少しめちゃくちゃだけど大体は合ってるわ。そしてアンティオキアは復活しようとしている」
ウィドル「!?」
ペレア「さっき言ったでしょ?アンティオキアは生きているって」
シェリィ「あの〜」
いきなりシェリィが話しかけてきた。
ペレア「何?」
シェリィ「少し話しを整理しませんか?」
ウィドル「ああ、そうだな、少し整理してみようか」
コホン、と少しせきをして言う。
ウィドル「神アンティオキアは昔、神自身を超えた人間に殺された。しかしアンティオキアは自分の分身たる魔物を生み出し、その魔物は人間を喰らい人間性を取り込んでいる」
ペレア「さすがね」
ウィドル「魔物は部品で…って何を造ろうとしてるんだ?」
ペレア「…神の肉体」
ウィドル「神の肉体?」
ペレア「そう、神の肉体。アンティオキアは人間を知るには人間と同じになればいいと考えたらしいわ」
ウィドル「魔物を使って人間の肉体集め、か」
ペレア「それはちょっと違うわ、魔物で肉体造りをするのよ」
ウィドル「う〜、頭痛くなってきた」
ペレア「魔物には4つの段階があるの、“下級魔物”“中級魔物”“上級魔物”そして“ヴァーテラ”」
ウィドル「…ヴァーテラ?」
ペレア「ヴァーテラとは最上級魔物のことよ、神の大事な部品。ちなみにハルフルを襲ったのは中級よ」
ウィドル「あの強さで中級…」
ペレア「あいつらとはいずれ戦うことになる、だから今より強い力が必要よ」
ウィドル「まさか…魔法を?」
ペレア「ええ、ここから南に行くとカハルタという町があるわ、そこを目指しなさい」
ウィドル「わかった…」
ペレア「じゃあ、私はこれで」
ウィドル「あ…」
そしてペレアは消えていった。
ウィドル&シェリィ「………」
2人とも黙ってしまった。
ウィドル「もう寝るよ…それとこの話しはみんなには言わないでくれ」
シェリィ「はい、ではお大事に」
シェリィが部屋を出るとペレアが待ち構えていた。
シェリィ「…させません…」
ペレア「いいえ、すべてはすでに決まっていることなのよ…」
わけのわからない会話をし、ペレアは消えた。
そしてシェリィは外へ向かっていった。
−翌朝−
マリー「うーん…よく寝たー!」
勢いよく声を出し、起きる。
ガルフ「早く起きないともうすぐ昼になるぞ」
マリー「って、もうみんな起きてるじゃん…」
ウィドル「ははは、その分疲れてるってことだろ」
マリー「もう体は大丈夫なの?」
ウィドル「ああ、少し無理をしていたらしい。心配かけてすまなかった」ガルフ「んで、リーダーさんよ、これからどうするんだ?」
ウィドル「カハルタってとこを目指す」
一同「カハルタ?」
ウィドルとシェリィを除く全員が声を合わせて言った
ウィドル「……(汗」
シェリィ「カハルタは古代から続く町だと言われています」
マリー「またあの子が現れたの?」
ウィドル「…ああ。カハルタを目指せって言われた」
ガルフ「いよいよ本格的な旅になってきたな」
ウィドル「今のうちに言っておくよ、死にたくないなら来なくてもいい、遠慮なく言ってくれ」
…。
一息の間があった。
ガルフ「そんなヤツがこの中にいるとでも思ってんてんのか?」
その間を打ち破るようにガルフが言った。
ウィドル「ああ、そうだな。それじゃ、行こうか」
一同「おう!」
シェリィ「………」
−いつまで続くのだろうこの旅。不安を持ちつつウィドル達は旅を続ける−
-キーワード3-
−アンティオキア−
その昔存在していた神。神を超えた人間に殺され、復活しようとしている。
−壁画−
博物館にあった壁画。神と人間が描かれているが、風化しているためほとんどが消えている。
−魔物の階級−
下級魔物、中級魔物、上級魔物、そしてヴァーテラの4つがある。魔物達は本能的に上に従うようになっている。
−宿−
ウィドル達が泊まった宿。一部屋六人は入れるようになっている。




