74 新たな街へ
「リーフ、降りて」
「は、はいぃ……」
街の外でオートマタとリーフを馬車から降ろし、馬車と馬車馬をダンジョンに送還。
歩きで来ましたという体で街を目指す。
でも、リーフは完全に目を回してたから、仕方なくオートマタにおんぶさせて先を急いだ。
そうしてバロムの街の門に辿り着き、門番に冒険者カードを見せて街の中へと入る。
ちなみに、門番は猫耳の生えたおっさんだった。
つまり、獣人族だ。
この国は人族国家だったウルフェウス王国とは違うらしい。
「ちなみに、そっちのお嬢ちゃんも冒険者かい?」
猫耳門番が、いつの間にかオートマタの背中で気絶してしまったリーフを指差しながら聞いてきた。
さて、どう答えるべきか。
リーフは女じゃないというのはどうでもいいとして、同行者と答えるか、素直に奴隷と答えるか。
冒険者だと肯定する選択肢はない。
だって、リーフは冒険者カードを持ってないから。
まあ、ここは当たり障りなく答えておこうか。
「いえ、ただの連れです」
「そうか。なら、通行料銀貨五枚だ」
言われた通りに銀貨五枚を支払う。
ボルドーの街より通行料が高いな。
ちなみに、最近になって知ったんだけど、銀貨一枚は大体千円札と同じくらいの価値らしい。
同じように、銅貨一枚が百円玉、金貨一枚が一万円札って感じだ。
わかりやすくていい。
あと、これ奴隷って言ってたら通行料いくらになってたんだろう?
ちょっと気になる。
そんなこんなのやり取りを経て、いざ街の中へ。
そこで目にした住人の姿は、結構衝撃的だった。
獣耳の生えてる連中。
耳の長い連中。
小柄で横に太い連中。
見上げる程にデカイ連中。
様々な人種が闊歩していた。
この中になら、魔王をぶち込んでも違和感ないかもしれない。
まさに異世界。
「う、うーん……」
さて、この街、というかこの国の説明を聞く為にも、背中で呻いてるリーフを起こさないと。
という事で宿屋に直行。
代金を払って部屋を借り、リーフをベッドに寝かせる。
そして体を揺すって叩き起こした。
「起きて」
「うー……」
しかし起きない。
それどころか、思いっきり魘されてる。
よっほど馬車の旅がキツかったのかな?
奴隷紋で無理矢理起こすのは簡単だけど、この状態じゃまともな話を聞けそうにないかも。
仕方ない。
寝かせておいてやるか。
どうせ、急ぎの用事でもないし。
なんとなく、オートマタにリーフの頭を撫でさせながら、空いた時間を有効活用する。
まず先生ゾンビを転送して、《テレポート》の地点にこの部屋を登録。
あとは、訓練場で魔法の練習に励んだ。
更に、ボス部屋でリビングアーマー先輩を着込んでの戦闘訓練。
サンドバッグである不死身ゾンビをボコボコにした。
ちなみに、自分のダンジョン産の毒はダンジョンマスターには効かないみたいで、ボス部屋の毒を除去する必要はない。
不思議な仕様だ。
それが終わったら真装の特訓。
瞑想し、自分の中の真なる力と向き合い、引き出す。
手応えはある。
もう少しで引き出せそうな感じが。
でも、さすがに今日はまだ無理だった。
「ご主人様……」
瞑想を終えた時、オートマタのモニターから、そんな声が聞こえてきた。
起きたのかと思えば、リーフはまだ寝ている。
どうやら寝言だったらしい。
でも、オートマタに頭を撫でさせ続けたせいか、大分寝顔が穏やかになってる。
その状態の寝言で私を呼ぶとは、これって懐かれたのかな?
まあ、それに不都合はない。
好感度ばっかりは、無理矢理奴隷にしただけじゃ得られないし。
自発的に味方をしてくれる奴隷は得難い。
そこが、調教ゾンビで操った連中とリーフの違いだよね。
そういう意味では、リーフは替えのきかない貴重な手駒だ。
せいぜい可愛がってやるとしよう。
そんな事を思いながら、オートマタでリーフの頭を撫で続けた。
「えへへ……」
微笑みながら手に頭を擦り付けてきたペットは、意外と可愛かった。





