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殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~  作者: 虎馬チキン


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113 魔王の最期

「マモリよ……」


 魔神から逃げている最中、魔王がかすれるような声でそう呟いた。

 無視して先を急ぐ。

 でも、魔王はそれを気にした様子もなく、死にそうな声で語り続けた。


「我はのう、実は魔物である父と、人である母の間に生まれた子なのじゃよ。

 つまり、半分は人間なのじゃ」


 ……そうだったんだ。

 魔王の生い立ちに興味はないけど、その告白には少しだけ驚いてしまった。


「父は、恐らく戯れで母を孕ませたのじゃろう。そういう事をする魔物はよくいる。

 それでハーフが生まれてくる確率は低いがのう」


 魔王は声を出すごとに弱っていく。

 それでも、話す事をやめなかった。


「そして、我を連れて父の下から逃げ出した母は、魔物の子である我の事を、それでも愛した。

 我を普通の人間として育てようとした。

 幸い、我の見た目は、そういう種族と言われれば納得できるくらいには人に近いからのう。

 母は我の事を他者とは違うと言い、その事を絶対にバラしてはならぬとキツく言い付けたが、正直、当時の我には他者と己の違いなどわからんかった」


 後ろから飛んでくる流れ弾を避けながら、魔王の話に少しだけ耳を傾ける。

 今はそうする事しかできないから。


「そんなある日、我の運命を変える出来事が起こった。

 当時の友の一人が、どこで手に入れたのか鑑定石を持ってきてのう。

 まだ幼く、何も知らなかった我は、その場のノリで鑑定石を使ってしまった。

 ━━そして、我が人間ではない事がバレた。

 その話は、口の軽い子供から大人へと伝わり、あっという間に街中の知るところとなってしまった」


 魔王が苦笑する。

 その眼には、深い後悔の感情が籠っているように、私には見えた。


「女神教の教義は知っておるか? あやつらの掲げる教義は魔物の完全なる撲滅。

 今思えば、それは魔神様を復活させない為の措置だったのじゃろう。

 じゃが、そんな事で納得できる程、我の受けた仕打ちは生易しいものではなくてのう。

 ━━我は魔物として処分されかけた。

 つい先日まで優しくしてくれた人が、手の平を返して我の死を望む。

 あの光景は今でも夢に見る、我のトラウマじゃよ」


 その時の事を思い出しているのか、魔王が遠い目をした。

 そんな魔王に対して、私は語る言葉を持たない。


「母もまた、背信者として殺された。

 死の直前に、母は命と引き換えにして我を逃がしてくれたが、その時に我は悟ったのじゃ。

 人の世界に、我の居場所はないのじゃと」


 後ろから流れ弾が飛んでくる。

 それが魔王に当たった。

 普段なら何でもないような一撃で、魔王は苦悶の声を上げる。

 もう、それ程までに魔王は弱っていた。

 HPは尽きる寸前。

 それでも、魔王は話をやめない。


「街から命からがら逃げ出した我は途方に暮れた。

 幼い我には力もなく、頼りになる人など誰もおらん。

 人間への怒りと恨み、どうしようもない孤独、母への罪悪感、いつ死ぬともわからない状況への恐怖。

 そうした負の感情ばかりを抱えながら、我は人のいない森の中をさ迷った。

 そんなある日の事じゃ。

 魔神様の声が聞こえてきたのは」


 後ろから飛んでくる流れ弾の数が減ってきた。

 あと少し。


「独りで声を圧し殺して泣く我に、魔神様の声は優しく響いてきてのう。

 己を魔物の神と名乗るその声に、心が限界を迎えておった我はすがり付いた。

 その後は言われるがままに案内され、魔王城へと導かれた。

 そこで魔王城のダンジョンコアに触れ、ダンジョンマスターとなり、魔王となった我に魔神様は言ったのじゃ。

 『人の世界に居場所がないのなら、魔物の世界を造ればいい。君の居場所はきっとそこにあるよ』とな。

 我にはそれが救いの声に思えたものじゃ。

 それを信じてここまで戦ってきたが、結果はこの様よ……」


 充分に魔神から距離を取ったと判断した時点で、ダンジョンから先生ゾンビを転送。

 すぐに先生ゾンビのテレポートにより、魔王をダンジョンの中へと送った。

 その現象に驚いたのか、魔王が僅かに目を見開く。

 でも、逆に言えばそれだけだった。


 魔王を転送した先は、ダンジョンの最下層たるボス部屋。

 そこには、有事の際に備えて完成体リビングアーマー先輩を着込んだ私本体が待機してた。

 私は無言で、オートマタに支えられた魔王へと歩み寄った。


「マモリよ、お主は我を殺すつもりじゃな?」


 ピタリと、私の動きが止まった。

 図星を指されたせいだ。

 なのに、魔王はそれを理解して尚、静かに笑った。


「それは構わん。お主が我の事を快く思っておらん事は知っておった。何せ、出会いが出会いじゃからのう。

 ここで静かに暮らすお主を、我は戦場へと引き摺り出した。恨まれても文句は言えぬ。

 さあ、殺すがよい」


 ……死の間際だっていうのに、あまりにも堂々としすぎでしょ。

 さすが、この世界で唯一、私が心から頭を下げた相手。

 私は、ほんの少しだけ魔王に敬意を籠めて、剣を振り上げた。


「最後に、胸の内を誰かに話せて良かった。……では、さらばじゃ」


 振り下ろされた剣が、魔王の首をはねる。

 そうして、私はこれまでにないような膨大なDPと経験値を手に入れた。

 それに、これで魔王の経験値が魔神に渡る事もない。

 この世界の理が、魔神にも適用されるのかはわからないけど。


「…………」


 そして、私は無言でメニューを操作し、いつものようにハイゾンビ作成を選択。

 すぐに魔王の死体をゾンビ化した。

 魔王ゾンビが無言で立ち上がる。

 私は、最強の戦力を手に入れた。


「……まあ、仇は取ってあげる」


 気づけば、私は魔王ゾンビに対して、自然とそんな事を言っていた。

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殺戮のダンジョンマスター籠城記(1)
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