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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
運命の赤い糸
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4

察するに誰かが、この一冊だけをここに置いたに違いない。元の場所に戻そうとしたけれど、見つけることが出来なかった為、近くにいた店員さんにその本を手渡した。


 ズラリと並ぶ色鉛筆の前に立ちこげ茶色を探してレジに並ぶ。店員さんの左手小指から出ている糸の先が、すぐ傍でノートを見ている赤ちゃんを抱いた女性についていたので、ついそちらに目が行ってしまい、気が付いた時には、財布から小銭をジャラジャラと落とし、後ろに並んでいた女の子が100円玉を拾ってくれて、私は顔を赤くしながらお礼を言った。





  ショッピングモールを出て赤い糸の先を追いかけながら、そういえば昔バスに乗っていて、降りる時にお金を払おうとしたら、手に持っていた小銭を肩に掛けていたカバンを持ちなおそうとした瞬間に全部落としてしまい、慌てて拾うも、すぐ後ろには降りる人が並んでいたので、見兼ねたバスの運転手さんが「いいですよ、そのままにしていてください、料金はいいですから」と言ってくれて私は赤っ恥をかきながら逃げるようにしてバスを降りたことを思い出した。


 川の前に着き、赤い糸の先は右のガソリンスタンドの方に向かっている。横断歩道を渡り、川沿いを歩く。

少し狭い道で、もう少しきちんとした歩道があればいいのに等と思いながら歩いた。


 一体どこまで歩いたら、相手に辿り着くことが出来るのだろうか? 橋を渡ると、コンビニがあり家で飼っている柴犬のタンにそっくりな柴犬が店の前の駐車場の金網のフェンスに繋がれている。ついその犬に近づいて見てしまう。

 私に犬の匂いが付いているのか、その柴犬は吠えることをしないで尻尾を振っている。そんな姿が嬉しくて、笑顔になる。


ついでにフルーツサンドでも買おうかとコンビニの中に入ったものの、ここにはそれが売っておらず、結局なにも買わずにそこを出た。

もう少し先に進むとそこには動物病院があり、外から中をチラリと覗くと中はギュウギュウな程に人気で混んでいるのが窺えた。

ざっと見た感じ待ち時間は一時間くらいだろうか。銀行の前を通り、団地に入って行く。

団地に入ると言う事は、もしかして近いのだろうか?

この辺に住んでいないと通らないような細道を通って行く。


この辺の家はどこも一軒が大きく、おおきな庭もある家が多い。紺色で見たこともないような目立つタイプの車が停まっているけれど、外車だろうか? 余程車が好きな人なのだろう。

 家もそれなりにオシャレで、どんな人が住んでいるのだろかと気になりはしても、人の家を覗くわけにもいかない。

しばらく歩くと、家を解体中の様でここは通れませんと言う紙が貼ってありそこには赤と白の縞々のカラーコーンがあった。


  数件の家が取り壊されるようで、その中の一軒はブルーシートで全体が覆われているが、私がいる場所からはその中身が見えてしまうので、つい立ち止まってどんな家なのだろうか?と中を覗く。


 窓ガラスは割れていて、その奥は真っ暗で階段があるのが見える。少し不気味に感じながらきっとここは肝試しとかに使われていたのではないだろうか?などと考えてしまった。


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