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――十数年後 高校生の噂話―――
「それで島、その島の人たちを殺害したのは、結局誰だったんですか? 渡山博が殺害したんですか?」
「そうじゃないんだ。いや確かに渡山博は殺人を犯した。だが、彼が殺人鬼だったわけじゃなかったんだ」
「それじゃあ一体誰が? 渡山博もその後、結局亡くなっているんですよね。殺人鬼は台風の中に沈没した船を見て咄嗟にそんな犯行を思い付いたんですかね?」
「いや、その船が海底に沈んだのは事故なんかじゃなかったらしいんだ。あれは計画的な殺人事件だったらしい。殺人鬼が船長室に行き、船長を殺害しているところがハッキリとカメラに残っていたらしいし」
「でもそんなに上手くいきますかね?」
「殺人鬼の妻は船の免許を全てもっていて、島の中でもその腕は知られたもんだったらしい、だから船が確実に沈むのを確認してから、妻が運転するボートに飛び乗り、そして島に戻り、どんどん殺害していったんだ」
「でも、この新聞の記事の記載されてる人達は全員亡くなったんですよね? 殺人鬼の妻ってどういうことですか?」
「そう思うだろう?でもそうじゃなかったんだ。当時は全員亡くなったって間違った報道がながされたんだが、だけど、色々と調べて行くうちにそうじゃないことが分かったんだ」
「渡山博が殺害した男の遺体の近くにはダイイングメッセージが遺されてあって、全ての犯行は彼がやったと見なされていたのだけど、生存者がいることが分かったんだ」
「だからその生存者は誰だったんですか?」
「千田賢吾――その男こそ殺人鬼だったんだよ」




