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「でもそれって言っている事おかしいと僕は思うんだ。だって学校に行っていなくても僕はここにいて息をしてご飯を食べたりして生きているじゃないか。どうして絶対勉強しないと日本で生きていけないって言うの?そんなの大人が勝手に作った理由だと思うんだ」
「そうだねえ、別に義務教育を受けなくても息は出来るし、美味しいご飯だって味わう事が出来る」
「そうでしょう?きっと僕は生まれる時代を間違えたんだ」
「なるほど、何故そう思う?その考えは先生も同じだ」
「それ本当?先生も生まれてくる時代間違えたの?例えば義務教育なんていうものが生まれる前の時代に生きていたら、お父さんやお母さんだって僕の事を変な子扱いしなかったんだと思うんだ。僕はこの時代に生まれてきたせいで変な子になってしまったんだ、僕は結局時代を間違えて生まれて来てしまったんだよ」
「そういう考え方があるんだね」
「先生もやっぱり僕の考え方はおかしいと思っているの?」
「いいやそんなことない。だって先生も変わっているから。ただ先生は君に聞きたいことがあって今日はやってきたんだ」
「僕に聞きたいことってなあに?変な絵を描く理由について?その質問には毎回同じようにこたえてるんだけど、変な絵を描いているんじゃないって」
「いや、そんな事を聞きたいじゃないんだ。ただ、君が描いた作品の中で畑の中に野菜が描いてあってその中に光り輝く神様の様な絵があるだろう?」
「前に僕が描いた神様の?ああ、あの絵ね。公民館の掲示板に貼りだされてあるやつね」
「そうだ。あれは何かの漫画を見て書いたのか?」
「漫画?あれは漫画を見て書いたんじゃなくて、夜に金色の物体が野菜の上の方で浮いているのを見かけたんだ」
「それはなんだとおもう?」
「わからない。でも野菜を元気にさせてるような妖精か何かかと思ったんだ」
「そうか、それじゃあ次に聞きたいことは、その絵はどこの畑か覚えているか?」
「案山子に紫色のハッピを着させている畑、お母さんと歩いて帰っている時に僕だけが見たんDあ。お母さんにいったけどお母さんは信じてくれなかった」
「そうかそれは先生の畑だ。今先生はずっと思っていた謎が解けたよ。先生の家にも神様が来てくれていたらうれしいとずっと思っていたんだよ。君の絵を見た時に一度その絵の意味と場所を聞いてみたいと思っていたんだよ」
「なぜそんな事が聞きたいの?」
「いやそれは先生も神様に憧れているからだよ。子供には不思議な力があるっていうからな」
「先生は神様が見えないの?」
「見えないというか、それは自分自身だから見ようがないというかね……そうか、そうか自分の所に神様がね」
「変な先生。そんな事を聞いてくる先生今までいなかったよ?」
「あ、もう充分さ。ありがとう。それじゃあね」
内ポケットから銃を取り出し、石月実の心臓に一発打ち込む。銃口から上がる煙をふーっと吹き、耳の中に指を入れ頭をブルッと震わす。
名簿を開き、石月実の名前を消す。 <残人口4名>




