20
きっとこっぴどく叱られるに違いない。
「いや、ママさんはいないですけどね、置き手紙がありましてね」
「なに?その手紙はワシにか? 今すぐ読んでくれ」
「下まで取りにいってきますから、そこに座って待っていてください」自分はそう言って店の階段を下りカウンターの上にあるメモ用紙を一枚はぐって、そして二階にあがり、そのメモ用紙を手にし、読み始めた。
「こんな時間まで飲んで。一週間は出入り禁止そして、その続き読んだ方がいいですか?」
「なんだよ。そこまで読んで、途中でやめるなよ」
「では、続きを読みます。手を揚げて後ろを向きなさい」
「なに?そんな事が書いてあるのか?」
「だから聞いたじゃないですか?」
「分かったよ、手を挙げて後ろに向けばいいんだな?こうか?それで続きはなんて書いてあるんだ?」
内ポケットから拳銃を取り出し、引き金を引いて脇西さんの頭をぶち抜いた。倒れ行く脇西さんの姿を見ながら「これが愛ですか?脇西さんの愛は随分と笑えるんですね」と言ってやった。
腹がよじれそうな程笑いながらその店を出た。
名簿を開き、脇西昭の名前を消す。 <残人口5名>
石月実の玄関の前に立ち深呼吸をする。
「ごめんください」そういって玄関を開け中に入った。
中からの返事はない。
「お邪魔します」そう言って靴を脱ぎ中に入っていく。一番奥の部屋に行き、ドアを二階ノックして「こんにちはカウンセリングに来ました」と言って中に入る。
石月実は、学習机の上で何かを必死に書いているようだった。
「カウンセリングなんて必要ありませんから」
「そのようですね、実くんには必要ないと自分もそう思いますよ」そう言った瞬間少し驚いたような顔をして石月実はこちらを向いた。
「他の先生と言う事が違うんですね」
「そうですか?必要がないと感じたからそう言ったまでですよ。今だって自分の好きな事して時間を過ごしているではありませんか」




