18
ザッと残り六人の名前を調べる。
そして次は「こはた」と言う小さなスナックへと向かった。
「こはた」のドアを引いて中に入ると、チリンと鈴の音が鳴り響いた。一階を通り過ぎ二階に上がっていく。
二階は酔いつぶれた客が寝れるようになっており、ドアを開けた瞬間に上から物が落ちてきた。
ゴツンと鈍い音とともにその落ちたものを拾い上げると、それは古い黒板消しであった。
「なんだぁ、ママかと思って。ごめん、ママを脅かすつもりだったんだ」
「………」
「そんな難しい顔をしなくてもいいじゃあないか」
「ずっと寝ていたんですか?」
「いや。それが昨日は飲み過ぎてしまって、閻魔祭はどうだった?」
「どうもこうもないですよ。外は台風ですから船は途中で動かなくなりました」
「動かなくなったって、ママはまだ帰って来てねえし、どういう事だよ?」
「どういう事だよって……みんな死にました」
「また、そんなこと言って冗談キツイんだから。それよりさ酒飲まないか?俺が奢るからさあ」
「まだ飲み足りないんですか?昨日も相当飲み明かしたんじゃないんですか?」
「いや、それはまあ……」
「何時まで飲んでいたんですか?」
「そんな母ちゃんみたいな事聞きやがって」
「いや、別に嫌ならいいんですよ?言わなくても」まあどのみち興味はないのだが。
「明け方の五時まで飲んでいた」
「五時?ママさんよく怒りませんでしたね」
「だから、怒ってるに決まってるじゃないか。帰れって何回も言われたのは覚えているんだけど、気が付いたらさそのここで寝ていてさ」
「全く、そんなに飲んだりして肝臓やられますよ?」
「いや、気をつけるって。っていうかなんでそんな事をお前に言わねえとなんねえんだよ?それで、お前は?お前は一体何をしに来たって言うんだよ?」
「自分はママに昨日の夜頼まれていたんです」
「はぁ?ママがお前にそんな事頼んだのか?」
「そうですよ、嫌ならいいです。別に自分には何のメリットもないんで……」
「あーああーごめん。ワシが悪かった。謝るよ。で、ママはなんて言ってた?」
「なんていっていたと思いますか?」
「いや、それは分からんが心配して倒れていないか見てくれとかなんとかか?」
「まあそんなところです」
「まーたやってしまった。ママ困った顔していただろう?こりゃあ一週間は出入り禁止だな」
「出入り禁止って、ママって見たまま通り怖いんですね」
「いやまあそりゃあ飲み屋のママだからな。しかしあんなんでも昔はえらいベッピンさんでなあ、島の男どもは夢中になってかよったもんよ」
「で、一番古い客が脇西さんってわけですか」
「まあ俺よりも古い客は皆先に逝っちまったからな。お前は愛と言う物が本当の意味で分かっていないだろう?」
「……」




