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「高沖明君、風呂に入っていないのに服を着せて、脱がせるだけ脱がして、それじゃあまるで変態ですね」
「変態なんじゃない、お前にはアリスちゃんの素晴らしさがよく分かっていないだけなんだ」
「ほら風邪引いちゃうよ、服を着せてあげなさいよ~」
「うるさい、そんな事お前になんか言われなくても分かってる。いいか、アリスちゃんの身体をこれ以上ジロジロ見るな」
その男の発言に自分は、腹を抱えて笑い転がりそうだった。
「君は、アリスちゃんが生きているのだとでも言うのかね?」
「ああ生きているさ。しかしなんでそんな事をお前に説明しないといけない?大体ここは僕の家だぞ?勝手に人の意のクローゼットになんて隠れたりして警察に突き出してやるからな」
「ほぉーおー。君がそんなに威勢のいいことが出来る様なタイプだなんて思わなかったよ。君ね閻魔祭に出席しなかっただろう?それから公民館で何が起こったのかしらないだろう? 君が言う様に警察に電話をしてもいいんだよ? あれ? この部屋テレビもなにもないけど、もしかして停電になっている事にも気が付いていないとか?」
「それで電気がつかないのか。僕はてっきり蛍光灯がきれたとばかり」
「呑気なもんだな。それで君のご両親は何をやっているんだよ?」
「なにって?閻魔祭に行ってまだ帰って来てないけど……そんな事お前には関係ないだろう?」
「確かに関係ないね。だが、こんな狭い世界に閉じこもっていたら一人だけ異世界に行っちゃうよ?」
「ふん、関係ないね。それよりももう帰ってくれないか?ここは僕の部屋で君の部屋ではないんだ」
「そんな寂しい事をいうなよ。自分はもう少し君とアリスちゃんの会話を見ていたいんだ」
「それは無理。人に見せる為にやっているんじゃないんだ」
「ふーん、それじゃあ二人だけの世界で永遠に生きたいと?」
「まあ――そういうことになるかな」
「そうか、その決意は固いんだな?」
男はそう聞いた自分の問いかけに対し首を縦に振った。
内ポケットに手を突っ込み、そして勢いよく銃を外に出し、男の喉仏に発射させた。手に持っていた人形はその衝撃で床に落ちて目を開けてその顔は高沖明を見つめているようだった。
その家を出て、名簿を開いて高沖明の名前を消す。 <残人口6名>




