表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第五章 猛追
61/107

2


                 *


 裏庭に回り、勝手口から中へと入って行く。

 障子の戸が開いており、その隙間から誰かが布団に横になっているのが見える。 随分となめられたものだな。

 居間の方からは、数人の笑い声が聞こえてくる。

 自分の姿にも気が付かないで楽しそうにしているとは、少し馬鹿にされた気分にならないこともない。

 布団に転がっている人の顔を見る。


 日井さんか。飲めない酒でも飲まされてしんどくなったんだろう。内ポケットから銃を取り出し、そして背中に向かって銃弾を放つ。


 次の瞬間、「何か音がしなかった? 運動会の様な」という声が自分の耳にも届いた。


 この和室には、押し入れ意外に何もない、しかし、誰かがこちらを確認しにくる足音が聞こえる。


「日井さん?ぎゃああああああああああああああああああああ―― 日井さんが死んでる」


「犯人はどこに行った?」





「ぎゃあああああああああああああ、わ、私の家で、日井さんが。 殺人が―― 佳代子が……」


「くっそ、なめやがって、ハナさん台所の包丁借りるぞ?」


 自分の姿が見つからないように、ジッと腰を下ろして静かに物音を立てないようにする。埃が空中に舞い咳を吐き出してしまいそうになる。


数ミリの隙間から、外の様子を伺う。三子さんともう一人女の人がわんわんとすすり泣いている声が聞こえてくる。


「殺人鬼姿を見せろ――」そんな声がきちんと自分の耳にも聞こえてくる。別に今ここから出ても良いのだが、念には念を入れることにした。


 こんな機会なんてもう二度とはやってこないだろう。

 そう思うと、つい笑いそうになってしまう。クックックッ………。


「ハナさん、今誰かが笑った様な声が聞こえなかったかい?」

「そうか?私は耳が遠いもんで分からなかったが?」

「聞こえた、絶対聞こえた。柳青さん早く早く早く戻ってきてちょうだい」

「どうしたんだ!?」

「それがこの部屋のどこかから誰かの声が聞こえて」

「何っ!?それじゃあこの部屋のどこかに隠れているというのか?」


「………」

「この押し入れの中か?」


マズイ。自分が隠れていることがバレテしまう。


 足音はこちらに向かって近づいている。押し入れのふすま越しに皆の視線が集まっているのが伝わってくる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ