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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第四章 遠い記憶2 1
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6


 どうして自分が大事にしているものを、独断で勝手に捨ててしまうのだろうかと、抗議したところ、母親はまるで分かってくれようとせず、結局謝ってもらえる事もなかった。


 そのおもちゃを今頃引っ張り出して遊ぶわけではない。

 ただ、そのおもちゃを見て懐かしみたかっただけなのだが、その思いは母親には届かなかったようだった。

大体母親とは昔から意見が合わない方だった。

自分は難しい子で母親の期待には添う事なんて出来ない。話したところで会話が成立しないし、言葉のキャッチボールになんてならないことが多い。

母親は自分の事を分かってくれようとしない、自分の気持ちを馬鹿にするばかりで最後まで話を聞いてみようとはしてくれない。

 自分が発する言葉はいつまでも子供の発言でしかなく、自分の要望は異常なまでに厳しい父親によって奪われたりした。

 だから自分は悩みなんて誰かに話すことはしなかったし、いや正確に言えばしたかったこともあったけれど、どうやって説明していいのかそれすらが分からなくなっていったのだ。


 だからと言って、両親が嫌いと言う事でもなかったが。


 ただ、自分の考えた内容では周りは(親)動いてくれない。そうやって思ったら、自分の発言にも少しずつ自信がなくなっていった。


 女優や俳優をやっている人を見ていて思う事は、自分の意志に反して言葉を話ていき、そのうちに自分の本心がなんだったか分からなくなる時があるのでないだろうか、と心配になってしまう。


 本当の自分の気持ちと考えや自分をしっかりと強く持っていないと、元の時分が思い出せなくなってしまうのではないだろうかと。


 名前なんかだと忘れないようにその辺にしっかりと書いておけばいいけれど、心や中身は書いて覚えておくと言うのも難しいものだと自分は考えている。


 演じた役柄に自分を奪われてしまわないように、自分の芯を強く持っていないといけないのである。


 そうやって、俳優や女優の心配をしたところで何が起きるわけでもないし、何の役にもたつこともないのだけれど。





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