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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第四章 遠い記憶2 1
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2

 ある日、近所のガキがカメを拾って来た。そのカメを持って家に帰ったが母親に叱られたらしく、自分の所で飼えないか?と聞いてきたことがあった。

 そのカメは、足を怪我していて、今、川に離しては死んでしまうのだと言ってきた。それで、仕方なくそのカメを引き取り、そして近所のガキはかなり安心したようだった。


 別に近所のガキを可哀相に思ったわけでも、怪我をしているカメを可哀相におもったわけでもない。

 ただ、自分は思いついた。


 足が片方不自由なら、もう片方も同じようにしてやればいい、と。

 それから、しばらくして近所のガキがカメが見たいと言い出した。

 だから自分は、カメを見せてあげた。


 そしたら「足が甲羅から出ていなくておかしいね」なんて言うから、「カメをもっと大きな所でおよがしてあげようと、神社の所の小さな池に放したら他のカメが食いちぎったんだ、と答えておいた。


それから、動物病院に連れて行くから、もう見れなくなるけど、家で本当に飼う事はできないか聞いた後に、そのカメは、生ごみの日に一緒にゴミ袋の中に入れたまま捨てた。

 猫とか動物と違って、カメは鳴いたりしないからそういう面では、カメもいいなと思った。


 それからその近所のガキの顔が子供の頃同じ学校だった人にそっくりで、それもまたおもしろい気がした。

 近所のガキにそっくりだった人は、いつも半ズボンで気が付くと、ズボンを脱いでパンツも脱いで走り回ったりするもんだから、ある時、面白半分で尻の割れ目のところに、隣の席の奴の鉛筆を挿してやった。


 そいつは、それを見ても、ただ叫びながら校舎を走り回るだけだった。

 床にその鉛筆が転がっていたので、ティッシュで拾って、隣の席の奴の筆入れの中に収めておいた。


 そして隣の席の奴はその鉛筆を次の日、口の中に入れて噛んでいたのを見た時には、ただただ笑いがこぼれた。

 なにがそんなにおかしいのかと、聞いてくるものだから鉛筆、噛むよりもなめる方が美味しいの知らないのかと、大真面目な顔していってやったら早速その鉛筆をなめ始めてますます笑いが止まらなかった。

 ただ、自分はこいつの事が嫌いなわけでもなければ、恨みなどもあるわけではない。

                    

2


両親がいない事で色々おせっかいを妬いてくるものも一定数いたが、あれは結構便利だったりはした。


 自分が可哀相な身である事をこちらが言わなくても、いや実際別にそれが自分にとっては可哀相でもなんでもなくただの環境で現実だというだけにすぎないのだが、両親を持つ人たちには、その現実から更に可哀相、大変そう等と色々な感情が加えられるらしい。

 近所の人たちも確かに、自分を可哀相だと初めの頃はよく言っていた。

 それが自分の事を知らない世界に入り込むと、必ずと言っていいほど自分は同情の対象とされた。

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