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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第三章窮追
35/107

8

「ホールから?目がいいんだな」

「自分が殺されてしまうかもしれないと思って、必死だったんです。ところでホールから放送室へ移動したんですか?どうして?佳代子さんから逃げるためとかですか?」


「いや、そうじゃない、それは俺じゃなくてホールから出てきたのは崎谷さんだ」

「え?崎谷さん?一緒にこんな所まで避難してきたんですか?」


「いや、そうじゃない、殺人鬼を捕まえにきたんだよ。野放しにしておくわけにはいかねえからな」

「……それじゃあ殺人鬼はこの中にいるんですか?」そういいながら腹の中でニヤリと笑んだ。


「いや、それは分からないが。それで佳代子さんはどちらに向かって走った?」

「こっちに向かって走っていたと思いますが、自分は石丸さんの方ばかりに気を取られてしまって……」

「ひとまずロビーに向かおう。崎谷さんが心配して待っているはずだ、いいか背中同士をくっつけて慎重に向かおう」

「はい」しっかりと忠実に嶋岸秀雄の命令に従った。まずはここに隠れているものに出てきてもらわねば。


 ロビーに向かうと、崎谷義男の姿はない。

「十五分後にと話していたんだが」


「まさか佳代子さんに……」すかさず不安を煽る。

「急ごう」恐れをなさず嶋岸秀雄はホールへと向かった。

 ホールへ静かに入るが、ドアが重いだけに我々が入って来たのは、この中に崎谷義男がいるのであれば丸わかりだろう。


ゆっくりと中を歩いて行く。

「崎谷さん」と小声で嶋岸秀雄が叫ぶ。


 どこに隠れているんだろうか、かくれんぼの鬼をしているような気持ちになりながらぐるりとあたりを見回す。そして思いついた。


「嶋岸さん、自分どうしてもトイレに行きたくなってしまったので、すぐに帰ってきますから」と慌てて走るようにして出て行った。

 そしてトイレに入り、少し待ってから窓を開け、そして窓から外に向かって銃弾を一発飛ばした。ブルブルッと首を振る。


 そして銃を内ポケットに収めるなり、しっかりとジッパーを締め、再びかなり慌てたようにしながらホールへと戻った。


 ドアを開けると「なんだお前か。大丈夫か?」と二人揃って自分を歓迎してくれた。

「崎谷さん、よかった無事だったんですね」

「あぁ、今、銃声が聞こえたが」


「そうなんです、自分はトイレに入っていたんですけど、出ようとしたときに聞こえてすぐ近くで聞こえました。もしかしたら自分に向かって撃たれたんじゃないかと……」そう言って大袈裟なまでに足と口と手を震わせた。


「これからどうする?崎谷さん」


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