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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第一章 はじまり
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―――五年前―――(島村佳代子)


 この島の人間で朝一郎さん享年97歳の通夜があってね、当然のごとく私も参加していたのだけど、大豆ミツコもそこには当然参列していて、夕飯の支度を手伝っている時に、大豆ミツコの娘である真奈美ちゃんが島に帰省してきてすぐこちらに来たものだから、礼服でもないしギラギラと光るピアスをしてすごく派手な恰好をしていて、みんなそれを見て、まるで宇宙人でも見るかのような目で見ていて、それを察したミツコが私に向かって「通夜なんだから赤い口紅控えたらどう?」って言ってきやがって「私の口紅色なんかより真奈美ちゃんの服装の方がどう考えても酷いでしょう」と私はそうやって言いかえしたのよ。


 それは本心だったし、自分の娘と自分を守るために私の事をはなしてカモフラージュしようとしているのが見え見えで腹が立ったのよね。


 それ以前から、ミツコが私の事を色々と噂したり悪口を言ったりしている事を知っていたし、娘の非常識な格好に、自分が噂の餌食になってしまう事を恐れたんだろうね。


 それで咄嗟に私が餌食となるように仕向けたわけなんだろうけど、まさか私が言い返すなんて思っていなくて大誤算だったんでしょうね。


 その翌日から徹底的に私への報復が始まったのよ。


 ここの島に住むという事はね、どんなに小さくて些細な事でも大袈裟に言われたりするものだから気にしないようにしていたけど、あのしつこさはそれにしたって尋常じゃない。



 私の一つ一つの行動をまるでストーカーの様に誰かに吹聴して回り、そして笑いものにし自分の暇な時間と精神力を全部そこに当てた。



 都会の方では隣にどんな人が住んでいるのか分からないなんていう事を聞いて信じられないけど、逆にそれが羨ましいと何度も思った事もあるわよ。


 だって窮屈で面倒だし正直疲れるから。


 都会の人の様に、他人に無関心でいてくれれば自分のことばかり考えるだけでいいのにと、そう考えたりもしたけど、いつまでも気にしているのもやはり馬鹿らしくなってきて、ミツコのいう事は、心で受け止めないようにしたら、そのうち少しずつターゲットを変えたみたいだけど。


 この島の怖さは、お互い陰で悪口を毒づいているくせに表ではニコニコと笑顔で笑って近づいてくるところだったりするのよね。


 ミツコも散々私に嫌がらせをしときながら、私の前ではそんな事を微塵も感じさせないように努めてはいた。でも、私だって伊達にこの島に住んでいるわけじゃないし、


そんな事ぐらいしっかりと見抜けるほどの洞察力ぐらいはあるのよね。


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