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第90章―10

 月着陸船が月司令・機械船から分離し1時間半余り経った頃、テレシコワとライドは、池田茶々からの緊急通信を受けることになった。

 二人は思わず緊張したが、茶々の言葉はある意味では真反対のことを伝えて来た。


「聞いて。日本の中宮陛下は3人の皇子、2人の皇女を無事に出産したとのことよ。月面から盛大に「君が代」を歌って。私も力の限り歌うわ」

「「ええっ」」

 茶々の言葉に、テレシコワもライドも想わず絶句した。


(当然のことと言えるが)美子中宮陛下が多胎児妊娠をしているというのは、多胎児妊娠を忌む人がいることから、日本の宮中の極一部にしか知らされておらず、茶々らにしてみれば、寝耳に水も良いところとしか、言いようが無かったのだ。

 だから、驚きの余りに茶々らのみならず、この世界中の多くの人が驚き慌てることになった。


 実際に世界中の多くの人が似たような反応を示したのだが。


「5人ですか。本当に」

「日本政府が嘘を言うと想うの」

「ええ、美子中宮陛下の真実の血筋、正親町天皇陛下の孫というのを覆い隠すような国ですから」

「それは嘘だと言ったでしょう」

「しかし、そうでなければ、50歳のエウドキヤ女帝と20歳にならない身で対峙等はできません」

 茶々とテレシコワは思わず口論めいたことをする程だった。


 テレシコワにしてみれば、エウドキヤ女帝は「大虐殺」を行った暴君なのだ。

 そんな暴君に平然と対峙した当時19歳の女性の美子が、特別な血を承けていない筈が無いのだ。

 だが、茶々にしてみれば、美子は特別な血を承けるどころか、元奴隷の実母を持つ女性だ。

 だから、美子を茶々は特別視しない事態が起きている。


 とはいえ、そんな口論をする時間等は殆どないのが現実で。


「ともかく日本政府の発表を信じて行動しなさい。これは船長命令よ」 

という茶々の言葉に、テレシコワもライドも最終的には従うしかなかった。


 そして、そんな口論(?)から1時間ほど後、

「事前の精密観測よりも、やや困難なようですが、あの予定地点に降下するのが無難かと」

「確かに」

 テレシコワとライドは、月面着陸地点の最終確認を行い、着陸行動に入った。


 実は月面着陸の予定地点だが、観測の精密度を高める程に悩みを深める事態が多発した。

 最初は、地球上からの観測だけで充分だとして、月面の何処に着陸するかを決める予定だったのだが。

 それこそ無人探査機を月に向かわせて月周回軌道からの観測、更には有人での月面周回軌道を活用した観測を重ねることで、月面着陸地点観測の精密度を高める程、想わぬ問題点が発見されては、別の月面着陸地点が推奨される事態が起きたのだ。


 そんなこんなが絡み合った結果、最終的な月面着陸地点候補にしても一つにはどうにも絞れず、予備も含めれば5つも最終候補に残る状態だったが、最有力候補が結果的に選ばれることになった。


 そして、何とか月面着陸に2人は成功したが、すぐに2人が月面に自分の脚を降ろすことが出来る筈が無い。

 それこそ月面は真空だし、重力も地球とは違うのだ。

 そういったことから、最終的な準備が調うのには、月面着陸から5時間程が掛かることになった。


 そして、ライドが、

「これは小さな一歩ですが、人類が初めて記す月面への第一歩でもあります」

と語りながら、月面へと降り立ち。

 更に、テレシコワが、

「私が生まれて初めて見るとしか言いようがない、余りにも荘厳にして荒涼たる土地です」

と語りながら、月面へと降り立った。


 そして、テレシコワとライドは、

「日本の皇太子殿下が生まれたという報道を聞いています。それを寿ぐ為に「君が代」を歌います」

といい、実際に君が代を歌った。

 更には、池田茶々もそれに唱和して寿いだのだ。

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― 新着の感想 ―
結果的に、茶々さんの判断により、月面到達を他の二人に譲って正解みたい。ローマ帝国が留守番をしても、北米共和国が留守番をしても微妙なしこりが残りそう。まあ、他の二大国に君が代を歌わせたから良しとしましょ…
 皇子ガチャが3人の大当たり!!ヽ(´▽`)/男の子がきっと生まれると信じてた九条内大臣もガッツポーズを決めてますなコリャ♪( ̄∀ ̄)よこしまな読者はマーフィーの法則にかけて「全員おんなの子だったりし…
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