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第90章―5

 広橋正之が、主に日本の徳川家の面々と親しくなった、そもそもの発端だが。

 美子が中宮として入内する前どころか、鷹司の姓を名乗る前、九条完子にしても徳川完子だった頃から、同い年の親友として、完子が上里家に来た際に、美子はそれとなく正之のことを完子の身内として、完子と逢わせ続けたのだ。


 完子は日本住まいが長く、更に美子に久我通前に、と両親が結婚していない友人もいることから、正之のことを特に嫌うことは無く、むしろ異母弟として素直に受け入れた。


 更に完子を介して千江皇后陛下とも正之は逢うようになり、又、美子の義妹になる鷹司孝子が、徳川家光と結婚したことから、その縁を美子は活用して、日本に来た家光と正之も、異母兄弟として逢うようになったのだ。


(尚、このことを聞いた徳川秀忠の妻の小督は激怒した。

 小督にしてみれば、正之は徳川家の人間ではなく、完子や千江、家光の兄弟姉妹ではないからだ。

 確かに血縁的には兄弟姉妹になるが、徳川家の人間でない以上、正之を兄弟姉妹扱いするな、と完子らに小督が手紙を送る事態にまでなったが。

 美子の言葉もあって、完子らは小督の手紙を事実上無視した。

 

 そのことに加え、美子が中宮になったことから、美子と小督の仲は、小督が亡くなるまで完全にこじれたままで終わることになるのだが。

 美子は、正之を素直に認めない小督が悪い、と馬耳東風の態度を執り、完子らまで美子に味方して、小督は子ども達に裏切られた、として、小督と完子らの仲まで悪くなる副産物が生じたのだ)


 閑話休題、ともかくそれを発端にして、日本にいる徳川家の親族と正之の仲は、それなりに築けたのだが、そうは言っても、ということがある。

 だから、池田茶々と正之は、微妙に疎遠な状況のままだった。


 そういった背景の下、池田茶々らのチームが、月面初到達を行うことが、トラック基地から発表されて、世界各国から祝いのメッセージ等が、池田茶々らのチームの下に届くようになった。

 その中には、正之のメッセージもあって、親族ということから、茶々から正之に返事もあったのだが、茶々からの返事は素っ気ないものだった。

 そのことから、正之は茶々が月面に足跡を残すのに消極的なのでは、と推測してもいたのだ。


 とはいえ、そういったことを身内同士ではあるが、それこそお互いに推測し合っているだけな以上、明確に口に出しあって言うのは、どうにもはばかられることでもあった。

 そうしたことから。


「本当に人類初の月面到達を目指すロケットの打ち上げから、順を追って楽しんでいきませんか。池田茶々が月面に足跡を残すか否かも含めて」

「そうしましょうか」

「そして、中宮陛下の御子全員が無事に産まれて育つことを祈念しましょう。それにしても、本当に人類初の月面到達と、中宮陛下の御出産がほぼ同時になったら、何か大きなことをトラック基地なり、月着陸船なりから行われることがある気がしますね」

「確かに」

 正之と松一は、更なるやり取りをした後、暫くの間、お互いに無言のままで想いを様々に巡らさざるを得なかった。


 二人は共に似たようなことを考えていた。

 本当に人類初の月面到達は、無事に成功するだろうか。

 更に池田茶々は月面に足跡を残すのだろうか。

 月面を目指す3人の宇宙飛行士の内1人は、月司令・機械船に残らざるを得ない以上、茶々が月司令・機械船に残るという決断を下せば、茶々は月面に足跡を残さないことになる。


 更に美子中宮陛下の御出産。

 本当に胎児が5人もいるのだろうか。

 そして、その中に男児はいるのだろうか。

 もし、男児がいるのならば、その子は皇太子殿下になる。

 多胎児の皇太子殿下を、日本の国民は受け入れて欲しいものだ。

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― 新着の感想 ―
>美子の言葉もあって、完子らは小督の手紙を事実上無視した。 正しいと思いますね。小督さんも日本文化の元で育ち、日本本土に在住していたので、源氏物語のダイジェスト版くらいは読んでいるでしょうが、現代語…
 日本で生涯の友と出会い伴侶を得た完子さんとエジプトで育ち北米に名家として根付いた小督さんでは大事にするモノや考え方が世代の断絶以上に溝が深いのがよく分かる正之さんを巡る親族としての取り扱いの対立( ̄…
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