第88章―14
そんな経歴を経た上で、テレシコワはローマ帝国空軍に志願して、兵士から士官への路を歩んだ末に、最終的には宇宙飛行士の路を歩んでいたのだ。
そして、成育歴から止むを得ないと言っても過言ではないが、ローマ帝国からモスクワ大公国(ロシア帝国)への侵攻によって生じた様々な悲劇等について、テレシコワは今だに悪夢を見る現実があった。
さて、続けて思い切り話を変えて、ライドの成育歴を述べるならば。
「えーっ、ライドって純粋な黒人では無かったの」
「外見上は黒人にしか見えませんが、白人の血が4分の1、私には入っています」
「でも、どう見ても黒人にしか見えない」
「そんなことを言われますが、池田さんも細かいことを言えば、白人の血が4分の1入っていて、純粋な黄色人種では無いのでしょう。実際、池田さんの髪の色は茶色が掛かっていて、私からすれば、白人と黄色人種のハーフにしか見えません」
初めてお互いが会った直後と言える頃に、ライドと池田茶々はそんなやり取りをして、それにテレシコワも無言で肯く事態が起きたのだが。
ライドにしてみれば、というか、北米共和国内ではよくある話の果てだった。
ライドの父方祖父は、それこそ北米共和国成立前の日本の北米植民地ではよくあった話になるが。
ヨーロッパ大陸にいる家族の口減らしの為に年季奉公人として、欧州から北米植民地へと親から売られた存在だった。
そして、売られた先で懸命に頑張ったのだ。
又、ライドの父方祖母も似た話から北米共和国に赴いていたのだ。
アフリカ大陸にいる家族の口減らしの為に親から年季奉公人として売られて、転売された末に北米共和国に赴いていた。
とはいえ、自分が売られる前から、こういったことはよくあることだ、として見聞きしており、観念して頑張ったのだ。
そんなこんなの果てに、父方祖父母は同じ主に仕える年季奉公人として、知り合うことになった。
そして、お互いに好意を抱いたことから、二人は結婚して、ライドの父が生まれたのだ。
ライドの父は白人と黒人の混血だったのだが、外見上は黒人の血が強く出ることになった。
だが、その一方で1574年から始まった北米植民地独立戦争の果てに、日本から独立した北米共和国では、(少なくとも表向きは)人種差別が許されない国になっていた。
そんなことから、年季奉公が明けた後で、ライドの父の両親は労働者として一生懸命に頑張って、ライドの父を始めとする家族を育てることになったのだ。
更に言えば、そういった人種間の混血児が、北米共和国では稀ではなく、却って人種間の純血に拘る方が結婚できない、と言われる事態が起きるようになっていた。
そして、ライドの父は両親の援けもあって頑張った末に、最終的には北米共和国内で陸軍軍人の路を歩むことになったのだ。
更には、同僚として、純粋な黒人であるライドの母と知り合うことにもなった。
ライドの母方祖父母も、ある意味ではライドの父方祖父母と似た経歴をたどっており、年季奉公が明けた後で、結婚して労働者として頑張って、ライドの母を始めとする子どもらを育てたのだ。
そして、お互いに知り合った末に、職場結婚をライドの両親はすることになり、両親の影響を受けて、生まれて来たライドも軍人の路を最終的には歩むことになったのだ。
ともかく、で済ませられる話ではないが。
ライドは、こういった経緯から、軍人の路を歩むことになり、今では宇宙飛行士の一人になっていた。
そして、外見からライドは純粋な黒人とみられることが多く、実は違います、というのがライドにしてみれば、密やかな快感になっていたが。
池田茶々やテレシコワに、そういった態度をライドは貫けなかったのだ。
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