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第88章―8

 ともかく、そんな感じで、この世界では人類史上最大のイベントといえる人類初の月面到達が目指される事態が起きたのだが。


 その間にも、様々な宇宙探査が同時並行的に行われるのは当然だった。

 更に言えば、(メタい話をすれば、前の部で描いたが、鷹司(上里)美子の使嗾等によって)世界三大国が宇宙探査に積極的になる事態が起きていたのだ。


 そのために探査機を使った上での更なる太陽や金星、火星の探査、又、人類初の月面探査の事前準備も兼ねた月探査が行われる事態が起きることになった。


 勿論、それ以外の太陽系内の惑星等の探査、具体的には水星や木星、土星等といった惑星、他にも小惑星や彗星、又、それぞれの惑星を周回する衛星等の探査等、他にも主に天文学者に言わせれば、多くの探査機を使った探査計画の実施が必要不可欠ではあったのが。


 流石にそこまで宇宙探査を広げる余裕が乏しく、そうしたことから、人類初の月面到達を果たした後に、そういった探査機を使った宇宙探査は行われることになり、それまでは地球上からの光学式の天体望遠鏡や電波望遠鏡での宇宙探査が推進されることになったのだ。


 だが、それでも、様々な知見が増えていくのは、当然の話で多くの天文学者が感動することになった。

 この際、主に1621年のガリレオとケプラーの会話で、基本的に描くことにするが。


「太陽周回軌道からの太陽探査機情報には、感動せざるを得ないな」

 ガリレオは自らに言い聞かせるように言い、ケプラーも肯きながら、

「全くその通りだな」

と言わざるを得なかった。


 実際、太陽周回軌道からの太陽探査機情報によって、太陽風、宇宙線、磁場を観測・監視する太陽周回軌道宇宙天気の観測が、1621年には可能になっていたのだ。

 更には、磁場、太陽フレア粒子、惑星間領域の電離の観測にも成功している。

 それこそほんの10年前の1611年当時でさえ、ここまでの成果が太陽探査が成功することになると、どれだけの人が考えられただろうか。


 そして、他の惑星や衛星、小惑星や彗星等の探査も進んでいる。


「それにしても、水星に何時になったら、探査機を送り込めるだろうか」

「後、20年以上は掛かる気がするな」

「自分達は亡くなっている可能性が高いな」

「仕方なかろう。水星に探査機を送り込むのは、太陽の重力等の影響を考える程に難しい。若い科学者に言わせれば、重力計算上は、土星よりも遠方になる天王星に探査機を送り込む方が、水星に探査機を送り込むよりも容易だそうだ」

「それは聞きたくなかったな。私の恩師のティコ・ブラーエが、それを生きて聞いたら、何と考えるだろうか」

「それを言えば、コペルニクスの方が、遥かに残念がる気がするな」

「話を変えるが、コペルニクスは、水星を観測できていない、という伝説があるな」

「実際には、完全に伝説の話だ。何しろ、コペルニクスはイタリア半島に何年にも亘って、実際に住んでいたからな。その際に水星の観測が出来たのは間違いない。実際に、「皇軍来訪」以前にイタリアに住んでいた私でさえ、肉眼で水星を観測できたからな」

 ガリレオとケプラーは、軽口混じりの会話を交わしながら、お互いに考えざるを得なかった。


 もし、コペルニクスが、今少し長命して、「皇軍知識」に触れられていたら、その内容にどれ程に驚き、又、喜んだだろうか。

 それに、ティコ・ブラーエも亡くなる間際に、

「何故に私に今少しの生命を、神は与えなかったのか。「皇軍知識」等を完全理解した上で、神の御下に私は赴きたかったのに。神よ、貴方は残酷極まりない」

 そう、ケプラーらに思わずこぼした後、天国に赴くことになった。


 本当に神は残酷極まりないことをしている。

 この世界でティコ・ブラーエとケプラーが知り合った経緯ですが、次話で補足します。


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史実世界通りの生没年とすると、 ニコラウス・コペルニクス 1473年~1543年 ティコ・ブラーエ 1546年~1601年 ミヒャエル・メストリン 1550年~1631年 ヨハネス・ケプラー 157…
 ガリレオさんとケプラーさんの何気ない会話から浮かび上がる僅かな差でチャンスを掴めなかった可哀想な先人達、自分の両目に原始的な観測機器と不確かな理論に果てしない筆算のみで宇宙の深淵に挑んでいたこの時代…
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