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第88章―6

 さて、何故に月面到達用のロケットの製造について、最終的には日本をローマ帝国は頼る羽目になったのか、というと。

 余りにも巨大なロケットになってしまい、ローマ帝国本土からトラック基地まで、月面到達用のロケットを運ぶのは極めて困難と言う事態が生じたからだった。

 実際問題として、月面到達用のロケットをトラック基地で組み立てて完成させて、打ち上げることさえも一筋縄ではいかない事態が生じてしまったのだ。


 最終的に完成された月面到達用の三段式ロケットだが、全長は約110メートル、直径は翼部分を除いても10メートルに達する代物になった。

 その重量は約3000トン近い代物に達してしまい、それこそ(史実の第二次世界大戦当時で言えば)駆逐艦では無く、小型軽巡洋艦の重さがあると言われても当然の代物になったのだ。


 これだけの総重量があるロケットを、幾ら分解して運ぶとはいえ、ローマ帝国の領土からトラック基地にまで運ぶとなると、様々な問題が噴出するのは必然的としか言いようがない。

 だから、少しでも問題を少なくするために、月面到達用のロケットについて、最終的には日本で主に製造する事態が起きたのだ。


(この世界での話になるが)三段式ロケットである以上、それぞれのロケット部を基本として、主に3つの部分に分けられて、月面到達用のロケットは開発、製造されることになった。

 そして、開発自体はローマ帝国内でほぼ完結したが、その製造となると基本的には第一段目と第二段目は日本で行われて、第三段目のみがローマ帝国内で行われる事態が起きたのだ。


(尚、製造がこうなったことから、本来から言えば第三段目も日本で製造すべきだったが、ローマ帝国の最後の意地というか、面子の問題から、第三段目のみはローマ帝国内で行われることになったのだ。

 だが、そのために第三段目を空輸するためだけの専用機が開発、製造される事態が引き起こされて。


 今上(後水尾天皇)陛下は、美子中宮陛下(尚、この時点では尚侍)に対して、

「幾ら面子があるとはいえ、わざわざロケットの一部を運搬する為だけに、ローマ帝国は専用機を開発、製造しなくともよいのでは」

と問いかけることになり、美子中宮陛下は、

「それだけローマ帝国にしてみれば、面子が大事ということでしょうね。本当にバカバカしい」

と冷笑して答える事態が起きることになった)


 こういった事情から、主に3つの部分に分けられて製造された月面到達用の三段式ロケットは、トラック基地の現場で組み立てられる事態が起きた。


 更なる余談をすれば、燃料等を満載した時点で、第一段目が約2300トン、第二段目が約500トン、第三段目が約120トンの重量があるのが、月面到達用の三段ロケットだった。

(細かいことを言えば、その大部分、8割以上というか9割近い重量が燃料である)

 そんなこんなから、幾ら大型船舶が使えるとはいえ、ローマ帝国本土からトラック基地までロケットを運搬するのは極めて困難な事態が引き起こされたのだ。


 そして、トラック基地に搬入された各部分だが。

 まずは水平状態で問題が無いのか、厳重な検査が行われた後で、垂直状態に立てられて、約3000トン余りの移動式発射台の上で各部分を組み合わせる作業が行われることになり、移動式発射台が実際の発射拠点まで運搬して、その上でロケットの発射が行われるという手順が踏まれることになる。


(尚、これだけの重量がある代物である以上、移動式発射台にしても、ロケット部分も合計すれば約6000トンの重量があるモノが地上で移動することになる。

 そうなると、移動も最高時速2キロも出せれば、上等になるのはどうにもならなかったのだ)

 少し補足説明を。

 月面到達用の三段目ロケット運搬について専用機云々は、史実のオマージュです。


 更に言えば、月面到達用の一段目と二段目にしても、ロケットを運搬する途中で問題が生じる危険を考えれば、ローマ帝国内で製造するよりも日本で製造した方が危険を低減できる事情が。

(実際、史実のアポロ計画でもロケットを製造、運搬するのには多大な苦労が生じています)


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― 新着の感想 ―
いや、本当に巨大な大迫力のロケットですね。 H2ーBロケット(全長56.6m、直径5.2m、質量531トン)の実物大展示モデルは、名古屋市科学館で見れます。見ると大迫力です。但し寝た状況。 立って…
 脚光を浴びる“物作り”より地味な“運ぶ事”の方が月ロケット計画では最重要になってそれを見事に乗り越えた日系三大国、ある意味世界の物流の過半を制している実力が有ればこそ(ᵔᗜᵔ*)とは言え平時の物流網…
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