第87章―3
話中での政宗の扱いが酷いですが。
織田(三条)美子を始めとする上里家の兄弟姉妹全員が、今上(後水尾天皇)陛下への鷹司(上里)美子の入内で政宗が暗躍した件について、不快感を覚えており、そうしたことから、政宗はこんな扱いに。
(政宗が、美子の入内を進めたのは、美子の首相就任を阻止するためで、二人が結婚することで幸せになって欲しい、という考えからのことではありません。
更にそれを上里家の兄弟姉妹全員が見抜いてもいました)
そして、入内の儀が終わった後、26年前と同様に、織田(三条)美子を長姉とする上里家の兄弟姉妹は、織田家に集って、軽い夕食を食べながら、兄弟姉妹の歓談を楽しむことになった。
尚、その場には伊達政宗首相が強制連行されて、母や母方の伯叔父母の世話役を務めさせられている。
「何で首相の私がこんなことをする羽目に」
と政宗は抗議したのだが。
「26年前に兄弟姉妹水入らずの場に押しかけようとしたでしょう。今度は招いたのに文句を言うの」
「それから、鷹司(上里)美子を強引に入内させようと暗躍した罰よ」
と伯母の織田(三条)美子に逆に叱られて、更には、
「嫌なら良いのよ。姪の美子を入内させようとした真実を、私や弟妹が世界中にばらすだけだから」
とまで政宗は言われては。
政宗は渋々ながら、伯母の美子の命令に従って、世話役を務めるしか無かった次第だった。
実際、元尚侍の織田(三条)美子やローマ帝国元大宰相の上里勝利、更には北米共和国前大統領の武田信光の実母にして、北米独立戦争以前から、それなりに世界に名が知られていた武田(上里)和子、更には九条兼孝の正妻の九条敬子といった面々が、今上(後水尾天皇)陛下と鷹司(上里)美子の入内の真実と称して、内幕話をしては。
世界中の新聞社等が、その内幕話を報道する事態が起きかねない。
更にそれによる様々な政治的ダメージを考えるならば。
さしもの政宗も、伯母の美子の脅迫に屈するしか無かった次第だった。
(尚、美子の弟妹全員が、この事態は政宗の自業自得、と突き放したのは言うまでもない)
それはともかく(?)、兄弟姉妹9人が揃って早々。
「本当に26年ぶりに兄弟姉妹が全員集えるとは想わなかったわ」
長姉の美子はしみじみと言い、弟妹8人全員が肯いた。
更に末妹の中院里子が言った。
「今日の入内の儀に参列して想ったのですが、源氏物語が現実化した気がしますね。初恋の相手が義母で、その義母と結婚するとか。あっ、この場限りの話でお願いしますね」
「公家社会では公知の事実と言って良かったけれど、言われてみればその通りね」
今上(後水尾天皇)陛下の初恋の相手が、鷹司(上里)美子なのを知っている九条敬子が、妹の里子の言葉に返して、美子以外の全員がそれに肯いたが。
美子は、ポカーンとする風情を示した。
美子にしてみれば、源氏物語は宮中を主な舞台とする政治闘争小説なのだ。
光源氏と藤壺中宮が関係を持って、冷泉院を藤壺中宮が産んだのは、政治的なモノ、政略結婚に近い、と美子は考えている。
美子は真顔で弟妹に訊ねた。
「源氏物語って、そんな話だったっけ」
中院里子は溜息を吐きながら、言った。
「源氏物語は、大河恋愛小説です。政治闘争小説として読むのは、姉上くらいです」
「そうなの」
末妹の里子に、そこまで言われるとは心外、と暗に美子は言わざるを得ないが。
この一件に関しては、美子以外の弟妹全員が、里子に味方する事態となった。
「里子が、美子姉さんの源氏物語理解についていけない、というのも当然ね」
敬子が言い、それに清と丈二も無言で肯いた。
「流石は美子姉さん。源氏物語をそのように読み解けるとは」
和子も溜息を吐くように言わざるを得ず、勝利、道平、智子も和子の言葉に無言で相槌を打った。
「何よ、私の考えがおかしいの」
美子は懸命に抗議したが。
他の8人は、これ以上はこの話を続けてもムダ、と考えて話を懸命に逸らし、美子との話を強引に打ち切って、その後は四方山話をすることで、兄弟姉妹の旧交を温めて終わった。
その一方、政宗は考えざるを得なかった。
流石は美子伯母上。
源氏物語を政治闘争小説と読み解くとは。
本当に怖ろしい話としか、言いようがない。
ご感想等をお待ちしています。




