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第86章―8

 それはともかく、で済ませる訳には行かないが。

 実際には、今上(後水尾天皇)陛下と鷹司(上里)美子の中宮入内の儀については、徳川家と縁の深い面々が、何人も参列することになっていた。


 まずは皇后陛下の(徳川)千江である。

 千江の本音としては、幾らお姉様と慕う存在とはいえ、鷹司(上里)美子の中宮入内については拒否したいが、かといって、本当に拒否しては、美子が出家してしまい、自分と逢うことが無くなりかねない。

 それよりも、美子が中宮として入内する方がまだマシと、無理矢理だが内心では千江は割り切っており、皇后陛下として、今上陛下と中宮の入内の儀に列席することになっていた。


 次に九条完子だった。

 言うまでもないことだが、九条完子の夫は幸家であり、九条兼孝の養女である鷹司(上里)美子と幸家は義兄妹になるのだ。

 だから、幸家と完子は当然に入内の儀に参列することになる。


(更に言えば、秀忠の妻の小督は、長女の完子に対し、完子の妹婿になる千江の夫(今上(後水尾天皇)陛下)が別の女性と結婚する場である以上は入内の儀に参列するな、と言ったのだが。

 完子は、私の義妹で同級生の親友が入内する以上、更に妹の千江も賛同している以上、自分は入内の儀に参列します、と実母に反論する事態が起きた。

 こうしたことも、小督を更に不機嫌にする事態を引き起こしていた)


 そして、徳川秀忠の非嫡出子(庶子)になる広橋正之も、入内の儀には参列することになっていた。

 何しろ、鷹司(上里)美子の実母にして義姉になる広橋愛の養子に正之はなるのだ。

 参列しない方がおかしいとまで言える関係だった。


(尚、だからこそ、徳川家光が入内の儀に参列したがったのも事実だった。

 家光にしてみれば、正之が入内の儀に参列しては、徳川家の代表として参列しているようにみられかねない、自分が徳川家の跡取りで、代表者になるべきだ、と考えたのだ)


 そうしたことから、徳川家の縁者として、入内の儀に千江、完子、正之が参列することになっている。


 そういった状況を踏まえた上で、秀忠と家光の父子の会話は、この際に秀忠が家光を落ち着かせよう、と考えたためもあるが、少なからずズレて進んでいくことになった。


「話を変えるが、お前は将来、何になりたい、と考えているのだ」

「陸軍の軍人です。前にもそう言ったではありませんか」

 父の秀忠の問いかけに、家光は即答した。


 実際、家光はそう考えていた。

(ここまで描いていなかったが)家光の兄になる広橋正之は、養母の広橋愛らによって色々と鍛えられたことから、将来は労農党の党員になり、何れは衆議院議員に、更には首相を目指そう、と考えていた。

 そして、正之の希望を知らされた完子や千江は、それを家光に伝えており、更に正之が優秀であることまでも、家光に二人は伝えていたのだ。


 それを聞いた家光は考えざるを得なかった。

 異母兄の正之と、自分は張り合える才能の持ち主だろうか。


 母の小督は、異母兄の正之に負けるな、と猛烈な圧力を掛けて来るが。

 姉の完子や千江の言葉を信じれば、自分はどうにも勝てない。

 その一方で、正之は異母弟の自分と張り合うつもりは全く無いようだ。


 そういったことを考えるならば、自分から政治家の路を断念して、他の路を歩むべきだ、と家光は考えるようになっていった。

 そして、家光にしてみれば、祖父の家康がそれなり以上に軍功を誇っていたことから、自分も祖父の家康と同様に陸軍の軍人を目指すべきだ、と考えるようになっていったのだ。


「それでは、忠長に政治家の路を歩ませろ、後を継がせろと」

「母もそう願っているでしょう。そうすれば良いかと」

 父子の会話は、それで一段落することになった。

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― 新着の感想 ―
徳川家光さん、立場が違うので、そんなに意識しなくても良いのに、と第三者的には見えるのに、優秀な兄弟を強く意識。史実世界と同じで興味深いですね。(史実世界で意識していたのは同母弟ですが。) 家光さんの…
 おおおおお!(´⊙ω⊙`)史実の三代将軍に「お気楽なボンボン」と辛口評価な読者驚愕の家光さん軍人路線!!建国の国父徳川家康さんのさすがは嫡孫、男らしいと見るべきなんだけどヨコシマな視点を持つ金具素屯…
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