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第86章―3

 だが、そんな想いをしつつも、二人は共にローマ帝国の(1621年現在の)現状にも想いを馳せざるを得なかった。


「それにしても、1585年にローマ帝国復興が成し遂げられた際、何れはローマ帝国を真の大国にしたいと考えましたが、それが30年余り後に現実になるとは。勿論、色々と不満が無いことは無いですが。それでも、ここまでのことが成し遂げられたのは、本当に神の援けがあったようにしか考えられません。ローマ帝国の領土が本当に太平洋に到達するとは、かつてのローマ帝国最盛期にも無かったことです。勿論、ローマ帝国最盛期には、イングランドやフランス、スペインやポルトガル、北西アフリカまでも領土だったことを考えれば、そういった領土は回復できていませんが、それ以上に広大な領土をウクライナからロシア、更にはシベリアへと獲得することが出来ました」

 エウドキヤ女帝はしみじみと言い、上里勝利も無言で肯くことしかできなかった。


 実際、ローマ帝国内どころか、世界中でエウドキヤ女帝は謳われている。

「幾ら血脈があったとはいえ、ローマ帝国歴代の皇帝の中で、その功績は初代皇帝アウグストゥスを凌ぐのではないか」

「男女を問わず、世界史上屈指の暴君なのは間違いないが、ローマ帝国復興に加え、東西教会合同という大功績を成し遂げる為の必要悪と考えるならば、逆説的に世界史上で屈指の名皇帝といえるだろう」


 だが、最早、これ以上のローマ帝国の領土拡大を図るのは無理だろう。

 西中欧諸国の改革、近代化は急であり、更に北米共和国や日本は、商売上の顧客ということもあって、西中欧諸国へのローマ帝国の領土拡大を認めない態度を徐々に示すようになっている。

 そうしたことからすれば、ローマ帝国が西中欧諸国に攻め込む訳には行かない。


 そして、西北アフリカ、モロッコやアルジェリアはオスマン帝国と友好関係にあり、ローマ帝国が下手に攻めては、それこそ宗教絡みの大戦勃発ということになりかねない。

 宗教絡みの大戦勃発となっては、それこそ終わりの見えない戦争が起きかねない。


 それを言えば、シベリアの大地の殆どをローマ帝国は領土化して、カムチャッカ半島のペトロパブロフスク=カムチャッキーを不凍港として確保するまでになっているが、そこから南下して中央アジアや東アジアに攻め込めるか、というと。


 日本を主な背景とした後金やモンゴルといった国が、ローマ帝国の南下を阻止する姿勢を示している。

 更には、そういった姿勢の背景には宗教上の問題もある。

 

 ローマ帝国の皇帝は、東西教会の合同によって「キリスト教の守護者」の称号を帯びた。

 だが、そのことはイスラム教徒や仏教徒から反感を買うことでもあり、そうしたことから、敵の敵は味方の論理から、中央アジアを中心とする地域では反ローマ帝国の声がイスラム教徒や仏教徒の住民の間で高まり、それがモンゴルの急拡大を招いてしまったのだ。


 ローマ帝国としても、更には日本を主な背景とする後金やモンゴルにしても、本格的な戦争を起こすようなことをしては、宗教上の対立が背景にあることから、終わりの無い戦争になる危険性が高いとして、お互いに自制していることから、破局が避けられる事態になっている。


 更に言えば、大事業を協働でやることで、双方の緊張緩和を図るべきだ、という日本の提案から、ユーラシア大陸横断鉄道建設が提案されて、実際に1621年現在では、大部分の地域でユーラシア大陸横断鉄道が実際に運行されるようになっていて、それもローマ帝国と周辺諸国の緊張緩和をもたらす事態を引き起こしている。

 完全に完成した、といえるのは1620年代半ばになるだろうが、順調に進んでいる。

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