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第85章―12

 その一方で、明帝国軍の将兵に対する鞭も苛烈なモノになった。


 様々な軍律が厳格に定められ、軍律に違反した場合の最高刑は銃殺刑と定められて、犯罪者は兵の射撃の的として処刑されることになった。

 これは他の兵に対する見せしめの意味もあった。

 軍律違反をしたら、このように処刑されることもある。

 それを実際に目で見た兵の多くが、身を引き締めることになった。


 そうした中で、最高の軍律違反の一つとして定められたのが。

「阿片を始めとする麻薬の厳禁ですか」

「そうです。皇帝陛下からも勅令が出ました。我が帝国内では、皇帝の許可を得た医師のみが、麻薬を医療用として使用するのを認める。それに反する者は、最高で死刑にすると」

「しかし、それは極めて困難ですぞ。明帝国内では阿片系の麻薬が完全に蔓延していて、例えば、大都市の歓楽街においては、阿片窟があるのが当たり前になっている」

「だからこそ、皇帝陛下も1年間の猶予を認められました。今から1年だけ待つ。その間に改心して、麻薬の使用等を止めろと。そうした者は罪に問わないと」

「しかし、麻薬には言うまでもないことですが、身体的、精神的依存性がある。止めろと言って、簡単に止められるものではありません」

 立花宗茂らの日本軍の将帥と。袁崇煥らの明帝国軍の将帥は激論を交わすことになった。


 尚、明帝国軍の将帥にしても、麻薬の害は日本からの教育指導もあって、極めて有害であることは熟知していることではある。

 だが、度々既述しているが、この1616年頃の明帝国内では、阿片等の麻薬が完全に蔓延しており、それを止めるとなると、極めて困難なことが心ある者程、よく分かる状況にあったのだ。


 実際、明帝国軍の内部でさえ、阿片を始めとする麻薬が蔓延しているのが現実だ。

 下手に阿片等の麻薬を止めろ、と言えば、麻薬に耽溺している一部の将兵が、麻薬の禁断症状から暴動を起こしかねない。


 だが、その一方で。

「麻薬に耽溺して、幻覚症状に陥っている兵に、銃を持たせる訳にはいきませんぞ」

「それこそ味方撃ちする事態が多発しかねないし、軍紀紊乱の基になる」

 そのように立花宗茂らに指摘されては、袁崇煥らもそれに同意せざるを得ない。


 最終的には。

「今から1月の猶予を認める。その間に麻薬を止めるか、軍隊を辞めるか、どちらかを選ばせるということでどうか」

という武田信勝らの提案が採用されて、明帝国軍内部からの麻薬追放の動きが始まった。


 とはいえ、この問題の解決には極めて苦労することになった。

 兵は手元にお金が無いこともあって、麻薬に余り手を出していなかったが。

(こういった問題もあったことから、兵には退職金制度が採用されることに成ったのだ)

 ある程度の指揮官になると、流石に麻薬を常用する者は稀だったが、時折、麻薬をたしなんでいる者がそこそこいたからだ。

(最も、その多くが徐々に常用患者になって、軍人として務まらなくなってもいたが)

 そして、明帝国軍の処遇が改善されたことは、そういった者達が密かに麻薬を購入しやすくなったということでもあった。


 ともかく猶予期間の1月が経過するまでに、それなりの麻薬患者が自発的に明帝国軍から去って行ったが、密かに麻薬を続けつつ、明帝国の軍人を続けようとする不心得者もそれなりにいる事態が起きた。

 

 こういった状況に対して、明帝国軍は抜き打ち査察として将兵の麻薬検査を随時に行い、麻薬の使用が判明した者は容赦なく銃殺刑に処していくことになった。

 こういった厳罰主義によって、明帝国軍内の麻薬禍は1年余りでかなり静まることになったが。

 その為に明帝国軍の将兵、数千人が麻薬使用によって銃殺されるという代償を支払ったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  憲兵的軍隊として刷新される以上は軍隊こそ最も襟を正さなければ規範にすらならない、と苛烈に軍隊内から阿片禍を根絶したのはお見事!(とは言え市井に広まってる方は一年後の非合法化を経ても二、三…
[良い点] 秋霜烈日の厳罰主義。 良民の護民官として立つべき兵士自身が法を犯していたら、示しが付かない。 先日まで、官軍の兵卒は流賊並みと思われていた訳だが、この世評を覆す為には厳しい処置が必要。 […
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