表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1724/1800

第84章―24

 そんなことまで、今上(後水尾天皇)陛下は考えたが、それ以外のことも鷹司(上里)美子と話し合わずにはいられなかった。


「裏では其方も承知していたようだが。伊達政宗首相から、例の(猪熊)事件で南極や南米に赴いていた面々について、大日本帝国憲法改正に伴う事実上の恩赦として、日本本国への帰国を認めるべきだ、との上申があった。朕としては、全員出家した上ならば、帰国させても良い、と考えるがどうかな」

「そうですね。流石に例の事件から10年以上が経ちますから、良いのではないでしょうか」

(猪熊事件が起きたのは、1609年であり、12年の歳月が流れている)

 二人は、そうやり取りをした。


「それにしても、宮中女官複数が参加した乱交の宴を開いたのは確かに問題だが、流石に南極に送るのは余りだ、との声が一部の公家の面々から挙がったので、南極送りになった男性は出家しなくて良い、としたのですが。どうやら手緩かったようですね」

「全くだな。南極に付いていった女性と関係を持つのは、まだ目を瞑れたが。そこで二股どころか、三股まで掛けた男が出るとはな。確かに南極に妻を連れて行った男はおらず、既婚男性にしても、南極に赴く前に妻とは離縁(離婚)した男ばかりだったから。妻以外の女性との間に、子作りをしても問題無い、といえるかもしれないが、あそこまで無節操な事態を起こすとは」

 二人は慨嘆するようなやり取りを、何時かせざるを得なかった。


 実際、例の(猪熊)事件だが、最終的に南極送りになった男性は(史実(?)に准じて)7人だった。

 尚、出家の上で南米送りになった女性は5人である。

 そして、この事件で最大の罪状とされたのが、乱交の宴を開いて、それに参加したことだった。

(ちなみに、徳大寺実久と烏丸光広は、乱交の宴に誘われたものの、宴自体には不参加だったことから、数年に亘る自宅謹慎で済むことになった)


 ともかく同じ場所に送っては、不道徳な関係を続けかねない、と危惧されたことから、男性は南極に、女性は南米に送られることになり、処分案の最初の段階では、共に出家の上で送られる筈だったのだが。

 流石に出家の上で南極送りは余りでは、という同情の声が、主に公家社会において高まったことから、男性は出家せずに南極送り、ということになった。

 その結果、実家の配慮から身の回りの世話をする女性も、南極送りの男性に随伴することになった。

 そして、様々なことが考えられたことから、複数の女性が1人の男性に基本的に随伴したのだが。


 その果てに、7人の男性が30人近い子どもを南極で儲けるのは、それこそ今上陛下以下の面々からすれば、完全に想定外としか、言いようが無かった。

 特に酷い、といえるのが、猪熊教利で。

 本人曰く、偶々です、と言い張るが、自分の世話をする女性以外、具体的に言えば、共に南極送りになった男性の世話をする女性にも手を出した結果。

 自分の世話をする2人の女性以外にも、他に1人の女性との間に、合計6人もの子どもを儲ける事態を、猪熊教利は引き起こした。


「他の者はともかく、猪熊教利に関しては、出家の上で奥高野に終生押し込めとするつもりだ」

「それでよろしいか、と私も考えます。尚、(猪熊教利の)子どもとその母は四辻家が全て面倒を見る、と四辻与津子が明言しています」

「流石に与津子も庇えぬか。その代わり、兄が関係した女性とその子は、血縁の義理等から面倒を見るつもりのようだな」

「幾ら何でも当然のこと、と私は考えます。全く謹慎していない、と(猪熊教利は)轟々たる非難を浴びて当然です」

 今上陛下と美子は、そこまで突き詰めた話を交わして、この件の最終処分を事実上は決めた。

 何で猪熊家ではなく、四辻家が猪熊教利の子の面倒を見るかですが、猪熊家は教利が四辻家の分家として創設した家の為です。

 その為に教利とその子しか、猪熊家の家族は事実上はおらず、四辻家が教利の子の面倒を見ることになりました。


 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 史実では猪熊さんは死刑。史実より緩い。 [気になる点] 今、大河で平安の王朝全盛期をやっているが、この時代で猪熊事件の基準で裁いたら死刑・流罪が山盛りではなかろうか? 光源氏(架空の人物だ…
[良い点]  30人もの南極児!一番歳をとってる子は就学児童の年頃になってるの今回の恩赦が無かったと考えたらなんか泣ける( ;Д; )ある意味信尚さんが逝去したからこそ、その子たちの人生が助かったとも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ