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第84章―21

 様々な思惑がめぐらされる以上、憲法の内容についても、対立等が起きるのは必然なのです。

 更に言えば、この国民投票の有資格者についても、激論が交わされることになった。

 最初は、それなりの納税実績を持つ者、ある程度の税金を納めた者ということにしようという話しになり、それでまとまりかけたのだが。

 実際に戦場に赴いていた軍人達の多くが、これを聞いて激怒することになった。

 軍人の多くが戦場で戦っていた関係上、税金を納めていなかったからだ。

 命懸けで戦わされたのに、憲法制定に関与できないのか、とそれこそ軍人の多くが武器を政府に向けかねない叛乱寸前の事態にまで至ることになった。


 そして、軍人の多くを宥める為に、完全普通選挙で憲法を承認する国民投票は行われることになり、その国民投票の結果、北米共和国の憲法は制定、承認されることになった。

 更に言えば、この国民投票が前例となって、憲法改正は国民投票で行われるのが、北米共和国では当然視されるようにもなった。


 さて、こうして難産の末に北米共和国の憲法は制定されたのだが。

 最初から揉め事のタネが仕込まれていた。

 それは大統領と国会、どちらを重視するのか、ということだった。

 

 何しろ(この世界では)初の共和国憲法の制定といえるのだ。

 天皇制に代わる共和国の統合の象徴として、大統領制の導入は速やかに決まったが。

 その大統領の権能について、日本の天皇制と同様に形式的なモノにして、国の統治は国会が中心になって、議院内閣制にするのか。

 それとも大統領を行政権の中心にして、議院内閣制は導入しないのか。

 更にはその中間的な意見も出る等の事態が起きて、百家争鳴と言っても過言では無かった。


 最終的には妥協が成って、大統領が対外的なモノ、具体的には主に外交と軍事を行い、国会議員が互選で選んだ首相が組閣した内閣が対内的なモノ、主に内政を行うことになった。

 そして、大統領選挙と国会選挙は同時に行うことで、大統領と国会が対立する可能性を無くす、ということになったのだが。


 そんなことで、大統領と首相の対立が起きずに済む筈が無かったのだ。

 徳川家康、武田信光の二代の大統領時代は、首相も同じ党派に所属していたので大丈夫だったが。

 徳川秀忠大統領の下で、国会は武田派(?)が占めてしまい、大統領と首相の党派が異なる事態が引き起こされてしまった。


 そして、武田派が担いだ土屋長安首相と徳川秀忠大統領は、しばしば大喧嘩をすることになり、徳川秀忠大統領やその周囲は、

「議院内閣制廃止、大統領を中心とする行政権を」

の大キャンペーンを張って、憲法改正運動を展開することになった。


 それに対して、土屋長安首相は、

「我が北米共和国の憲法を護れ。大統領は外交と軍事に専念すべきだ」

との護憲運動の大キャンペーンを張ることになった。


 その結果、護憲派と改憲派が武力衝突する事態さえ生じた。

 何しろ、北米共和国の成り立ちが成り立ちである。

 北米共和国の憲法上で、住民が銃で武装するのが人権の一つである、として認められているのだ。


(この辺り、それこそ新規の植民地を開拓する際には、原住民との紛争が生じるのが稀ではなく、そうしたことから、住民が自衛するには銃の武装を認めるべきだ、いや、権利だ、との声が高かったという裏事情がある。

 そして、北米共和国独立後、北米共和国は現実で言うところのカナダやアラスカの積極的な植民地開拓を進めていったのであり、そうした事情も住民の銃での武装を人権だ、として北米共和国においては認める背景になった)


 ともかく、そんなこんなが絡み合った大騒動が起きることになった。

(尚、武田家本体はこの状況を静観した。

 本音では、大統領制と議院内閣制の併用に困難を覚えていたからだ)

 そして、1613年に土屋長安は急死した。

 土屋長安ですが、分かる人にはピンと来る名前で、史実の大久保長安になります。

 この世界では、史実と異なり、大久保一族と大久保(土屋)長安は対立する事態になります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 大統領制って一つ間違うと、大統領独裁になり、事実上の終身大統領になってしまう。(時々は、本当に終身大統領を名乗る厚かましい奴もいる。)発展途上国の大統領は、往々にしてそうなります。 大統…
[気になる点]  改憲を成し遂げ大統領権を拡大した徳川秀忠大統領は「日本の改憲が後から遅れて起こって」ホッとしてるんじゃないかなぁ?(・Д・)もしも先か同じ頃に「国家の統合の象徴」って意味では近似する…
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