表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1677/1800

第82章―7

 そして、そんなことがあった翌朝。


 鷹司信尚と美子は、息子達に起こされることになった。

「どうしたの」

 美子が少し寝ぼけながら、息子達に訊ねると、

「体を家族で鍛えましょう、と母上は言われました」

「そうですよ。一緒に走りましょう」

 教平と松一は、口を揃えて言った。


「そう言えば、そう言ったわね」

 美子は、(内心では渋々)夫と共に起きて、子ども達と走ることになった。

(尚、智子も結果的に共に走ることになった。

 一人だけの仲間外れは嫌だ、と智子がダダをこねた末、それなら、お前も一緒に走れ、と兄弟に責められた結果だった)


 そして、家族5人で早朝に走ることになったのだが。

 摂家の一家にして、尚侍までが京の街中を走るとなると、警護の者ナシで走る訳には行かない。

 美子としては、磐子を当てにしたいところだったが、さしもの磐子にしても通いの身であり、流石に早朝に共に走るのには難色を示した。

 そんなことから、初日は流石に無かったが、翌日以降は皇宮警察からその為の要員を、毎朝、発出してもらう事態となった。


 そうなると、美子の悪い癖が出た。

 人まで出して貰う以上、早朝ジョギングを止めるに止められなくなったのだ。

 そんなことから、4回目の妊娠ということもあったが、それなりどころではなく美子のお腹が目立つまで、家族5人での早朝ジョギングが続き、更に美子が4人目の子を産んで、ある程度、回復したら、又、家族5人での早朝ジョギングが行われる事態となった。


(更に余談をすれば、美子が出産前後に走るのを休んでいる間は、信尚が音頭を取って、子どもと4人で早朝ジョギングが続けられることになった)


 そして、教平と松一の方が、先に音を上げる事態となった。

 自分達から走る、と言い出した以上、更に母の美子の性格も相まって、止めたいと言えなかったのだ。

 尚、信尚は美子に味方して、健康の為にも家族で頑張って走ろう、と言う有様である。

 又、智子は冷たいまなざしを、兄弟に向けてくる。

 早朝ジョギングが、こんなにつらいとは、(内心で)泣きながら兄弟は走る羽目になった。


 そんなこんながあって、家族での早朝ジョギングを始めて1年程が経った頃。

「それでは、もう1周、夫婦で走ってくるから」

「父上、母上、頑張って」

 美子が言い、智子は両親をそう言って見送った。

 尚、教平と松一は、20分程のジョギングでくたびれ果て、ほぼ声が出ない有様である。


「本当に母は運動が苦手だったのかな」

「母の同級生だった完子小母さん以下、母を知る人は皆、そう言うけどな」

 兄弟は愚痴り合った。


「本当に情けない。1キロ7分で、3キロ走るだけで息を切らして」

 智子は兄弟を睨みながら言った。

 尚、智子も息を切らしてはいるが、それこそ兄の教平よりも元気な有様だ。

 兄弟は、運動に関しては、智子が美子の血を最も濃く引いていると想わざるを得なかった。


 一方、信尚と美子だが。


「子どもがいなくなったから、速度を上げて、4キロ走るか」

「良いですね。私が先導しましょうか」

「いや、妻に先導されては、流石に恥だから、何時ものように私が先導する」

「はい、はい」

 そんな感じで、信尚と美子は更に4キロを20分程で走り切ってから、帰宅した。


「本当にフルマラソンを4時間以下で走れそうだな。一度、大会で挑戦したいものだ」

「それには、偽名を使う必要がありそうですね。流石に摂家の面々が、大会に参加するのは、色々と問題を引き起こすでしょう」

「そう言われればそうか」

 何時ものように、信尚と美子は夫婦で走り終えた後で、そんな会話を交わした。


 美子は改めて考えた。

 本当に夫は薨去するのだろうか。

 ここまで健康そのもの、としか言えないのに。

 美子には謎だった。

 ほぼ毎日、3キロを20分程で走った後、更に4キロを20分程で走る等、市民ランナーとしては遅すぎ、フルマラソン完走も難しい、と叩かれましたが。

 小説ということで、緩く見て下さい。


 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  やりだしたら止まらない美子さんの性格が良く出てる今回のエピソード、幼いとは言え少しとぼけた雰囲気の教平くんと松一くん兄弟とちょっと負けず嫌いな智子お姉ちゃん( ̄∀ ̄)三人三様ちょっとずつ…
[良い点] 継続は力!  ライバルは自分! 頑張ろう! [気になる点] 運命を努力と献身で変える事が出来るか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ