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第82章―1 鷹狩りと鷹司信尚

 新章の始まりで、エピローグを兼ねます。

 さて、少し横道の話をする。

(この世界の現在では)鷹狩りが、上流階級、具体的には王族や貴族階級、又、富裕層にしてみれば、世界的に人気のある趣味になっていた。

 日本では、今上(後水尾天皇)陛下や皇后陛下、五摂家の成人した当主等々、交際上の必要もあって、鷹狩りを上流階級の成人男女ならば、それなりの心得があるのが当然とされる程だった。


 ちなみに(この世界の)日本では「皇軍来訪」直後、鷹狩りが趣味としては衰亡しかけたが、それを一変させたのが、近衛前久だった。

(史実同様に)近衛前久は鷹狩りを趣味として楽しみ、更に周囲の人も楽しむようになったのだ。

 その中には、政界引退後の織田信長も含まれる程で、日本全国でブームとなったといえる程だった。


 そして、日系諸国等でも、日本の影響から趣味として鷹狩りは広まるようになり、それこそハヤブサ等を輸入までして、鷹狩りを楽しむようになった。

 例えば、徳川家康は大統領在任中から、折を見ては鷹狩りを楽しむようになり、リョコウバトを始めとする動物保護を北米共和国が積極的に行うようになった一因が、このままリョコウバトが減っていき、絶滅してしまっては、リョコウバトを獲物とする鷹狩りができなくなる、と家康が心配したためだ、という噂が流布する程だった。


 更に日本や日系諸国の間で、鷹狩りの人気を高めたのが、近衛前久が自らの長寿の秘訣の一つとして、鷹狩りを挙げたことだった。

(実際、近衛前久は満76歳の長寿を保った)

 こうしたことから、富裕な中高年層の健康法としても、鷹狩りは人気を呼ぶことになったのだ。


 さて、鷹司(上里)美子だが、本来からすれば、鷹狩りとは縁の無い身といっても過言では無かった。

 何しろ、世間からは、美子が産まれる頃には、上里家は公家の一員とみられがちだったが、本来は平民階級と言えたし、美子の祖父の上里松一は鷹狩りを趣味としなかったからだ。

 だが、美子の父の上里清が、オスマン帝国へ赴任し、そこで様々な贈り物等を受け取った中に、鷹狩り用のハヤブサがいて、それをきっかけに清が鷹狩りを趣味としたことが、上里家の家族が鷹狩りに親しむきっかけとなった。


 そして、上里家は、清からすれば母方祖父になる張敬修から、呂宋焼の大きな会社(尚、上里家は大株主として配当を受け取るだけといって良く、会社経営等はしていない)を遺産分けの中で受け取っていて、それなり以上に富裕でもあったのだ。

(だから、清の後継者になれば富裕になれるとして大騒動が起き、結果的に美子の次男の松一が、清の養子になって上里家の跡を継ぐことになったのだ)

 だから、日本に帰国後も、清は鷹狩りを趣味として楽しみ続け、美子も鷹狩りに親しんだのだ。


 更に清が鷹狩りにのめり込むことが起きたのが、対女真戦争後のことだった。

 清は材満洲軍司令官となり、満洲に赴任することになった。

 そこで、ヌルハチと親交を結ぶことになり、その縁を介して貴重な雌の海東青、シロハヤブサを入手することができたことで、清は益々鷹狩りに親しむことになった。

(ちなみに海東青は同重量の砂金と同じ価値があるとされる程だった)


 そして、美子が鷹司信尚と結婚し、更に尚侍に任官したことから、清は営門大将として、陸軍を退役したのだが。

 却って鷹狩りを楽しめる自由な時間が増えたと清はいって、時としてヌルハチに招かれて、満洲の大地で共に鷹狩りを楽しむ程だったのだ。


 こうしたことから、結果的に、美子も鷹狩りに更に親しむことになった。

 そして、鷹司家も上流階級の嗜みとして鷹匠を雇って、自家で鷹狩り用のハヤブサを飼っている。

 そうしたことから、信尚と美子は共に鷹狩りを楽しんでいたのだ。

 この世界での海東青ですが、満洲産のシロハヤブサを指す、ということでお願いします。

 更に言えば、富裕層が鷹狩りに使う鷹としては、最高級とされており、話の中で描かれているように、同じ重さの砂金並みの値段がするものです。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  鷹狩りを復古させた近衛前久さん、史実では「武家の向こうを張る為にはいささかの荒事でも公家の青侍と舐められるワケには行かぬ」との雰囲気から手を染めてハマった感じだけど( ̄∀ ̄)皇軍世界…
[良い点] なんとかかんとか言いながら、上里松一さんは庶民出身で、最後まで一般人の感覚が抜けず。 清さんの世代で、漸く上流階級へ。思えば、永く続くお話です。著者様に感謝。
[良い点] 鷹狩りがブーム。 [一言] 海東青、此れまた満州人とは関わりが深いですね〜。 かつて遼王朝時代の女真族は、貢納に海東青を献上するように定められたので、沿海州まで遠出して捕獲しなければなら…
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